8限
お宝が眠るドヌマン公爵領の地下室。
そこには王国設立にまつわるとある装飾品が収められている。
王国の9つの至宝-キングブレスレット-。
各公爵と国王のみ着用を許される魔道具だ。状態異常耐性を備えるそのブレスレットは王と8大公爵家の絆、そして古の盟約を表しているという。
子供たちのおとぎ話にも、建国神話にも出てくる有名な腕輪なんだけど、実在するとはね。
この腕輪があれば、毒殺は確実に防ぐことができる。
至極の一品、基、至極の九品だ。
各公爵家はこのブレスレットを死守しているし、厳重に保管されている。また4年に一度行われる貴族総集会において先頭に立つ公爵8人がそのレプリカをつけて参加する。王も必ず装着するのだが、こちらはいつも本物だ。
ドヌマン公爵家に呼ばれたのは他でもない、厳重に保管されたそのブレスレットを錆びついた金庫から取り出してほしいという内容のものだったんだ。
なんでも、着用すべきレプリカが劣化してきているため、もう一度、職人に作らせるのに、本物がどうしても必要なのだとか。
しかし、いざ取り出そうとしてみたものの、金庫や鍵が錆びて開けれなくなっているんだって。地下に保管しているために、厳重であるものの、こういった弊害もあるということみたいだ。
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アーノルドが帰った後、【虹色の翅】で作戦会議だ。
「ドヌマンには結局行くことになるんだな?」
若干苦笑い気味のゲルトレイルだけれど、致し方ない。
「まさか手紙を出したその直後で捕まるなんて思わなかったよ」
差出人が赤髪だったのになんでこっちの動きがわかったんだろう。なんてこったが似合いそうな肩のすぼめ方を披露しつつも、僕はいたって真面目な顔に切り替える。
「でもまぁ、マグニアス伯爵領へは問題なく引っ越せそうで安心したよ。ゲルトの荷物もとりあえず預かっといていい?」
「頼むな」
【門】の転移から全員の荷物を妖精の秘境へと送る。憂いのない状態でドヌマンへ向かえるのは吉だね。マグニアス伯爵への連絡はシーダーに任せよう。いざとなれば転移で【怠惰の蛇】のアジトへ飛べばいい。
「でもどうして公爵様ではなくて、ご令嬢からの依頼なのかな?」
「さぁ、そこは深入りしないでおこう」
そうだね。という結論に全員がすんなり頷き合う。
どんな理由だろうが関係ない。そこに開かないものがあるのなら、開けるしかないよね?
久しぶりの本業といこう。
【虹色の翅】のみんながドヌマン公爵領へと向かうことになったんだ。みんな僕の護衛という扱いでね。お貴族様のところへ行くにあたり、一人という事はまずない。危険があることももちろんだけど、訪問客が一人で来ることはタブーとされている。商人も必ず従者や護衛、従業員を連れて行くのが慣例だ。体裁を気にする貴族のあり方に辟易するところだけれど、仕方のないことなのかもしれない。フラクシス公爵家が僕の一人訪問を許してくれたのは夜の遅い時間だったからだったんだねぇ。若気の至りということかな。
「でもアレク、よくあんな条件引き出せたね~」
「それほど今回の仕事が重要なんだろうね」
公爵令嬢ともなればある程度の権威をお持ちだろうということで、僕は城塞地下への入場を条件に突きつけたんだ。魔物の調査だと言えば、アーノルドは眉をひそめつつも、しっかりと頷いてくれた。
【八卦神門】の開放のためのいいチャンスが到来した。逃す手はない。
こうして何日かかけて、僕たちはドヌマン公爵領へと急いだ。
魔物たちの侵攻は息を潜めつつも、王都へどんどんと進んでいく。




