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No.2

「あの、アレクセイさん。こういうのは商業ギルドの領分だと思いますよ」


 冒険者登録が終わった直後だ。やっと独り立ちの準備が整った。これから僕は冒険者としてこの王都ルクセンで一人で生きて行く、のだが。ただ冒険者として依頼を受けるだけでは面白くないので、逆依頼? として鍵屋として掲示板に広告を貼ってもらえるようお願いしている。


 "鍵でお困りですか? お任せ下さい"という内容の簡単な張り紙だ。ギルドに斡旋料を支払う形で契約済みだが、正直冒険者に必要あるのかはまだ不透明。だからギルドでは一般王都民向けの依頼に分類されている。


「でも僕はまだ商業ギルドに行けないので、繋ぎと思ってください。開業前にちゃんとあっちに登録しますから。今は鍵開けできますよっていう周知活動ですよ」


「アレクセイさんはまだおこ……お若いのにしっかりしていますね。そんな難しい言葉をどこで覚えたんです? いえ、詮索ではなく、興味があるだけです、ほんとですよ?」


 このっ、今"おこさま"言いかけたやろ! この見てくれじゃ仕方ないけど。僕は受付のお姉さんを下から睨みつける。威力は皆無だ。ため息を吐いてから冒険者の方の仕事について話を聞くために気持ちを切り替えた。


 空気の変化を察したお姉さんは真面目な顔を一応真摯に向けてくれる。この辺りは流石プロだ。数多くの冒険者達と相対している経験値が凄まじい。子供の少しの変化も見逃さないとは恐れ入る。


「今日はもうお仕事残っていませんか?」


「ありますよ。常時依頼というのがいつも期限なしで受けられます。薬草採取やゴブリン退治、スライムの核集めなどは依頼をわざわざ受けなくても現物を持ってきていただければ……あっちにいるお姉さんのところで報酬を貰えます」


 お姉さんの差し出した手の方向を見ると、こちらの様子を見ていた別の受付嬢が満面の笑みで手を振ってきた。サッと目を逸らす。顔の温度が上昇したのがわかったが無視だ。お姉さん達はアイコンタクトをしてクスクス笑った。いつか見返してやる! 決意を新たに掲示板の方へと足を運んだ。


 掲示板を眺めていると、一風変わった依頼書が目についた。


 "ポーター募集"

 鞄貸与。

 年齢制限無し。

 男女問わず。

 報酬:銀貨2枚。

 条件:体力ある方。

 人数:5人まで。

 詳細は受付で


 駆け出しには破格の依頼だ。依頼書は3枚ほどピンで重ねて止めてある。既に二人はこの依頼を受けたという事だろうか? 僕も少し興味が湧いた。聞くだけ聞いてみよう。依頼書に手を伸ばす。


 届かなかった。身長が足りなかったのだ。ガックリと肩を落とす。


 しかし、救世主は直ぐに現れた。先程手を振ってきた受付嬢だ。ニコリと微笑んでからそっと依頼書を手渡して、何事もなかったかのように仕事に戻って行った。


 女神か!?


 恥ずかしさから立ち直るために、少し時間を置いてから僕はもう一度受付へ。


「あ、この依頼お受けになりますか?」


 何故かワクワクした様子の受付嬢に首を傾げながら、詳細を尋ねる。


 ダンジョンへ行っている探索チームの荷物持ちが必要なんだとか。下層で発見された宝を運ぶのに手が足りないらしい。他の探索チームに取られないのか? という疑問は受付嬢が答えてくれた。


「彼らが見つけたのはダンジョンの特殊部屋の宝なんですよ。登録され、部屋から認証された彼らと同時に入るしか、宝を持ち出す事は出来ません。不思議でしょう? ダンジョンが生きていると言われている所以ですね」


 初めて知った。何そのセキュリティ!? オラワクワクすっぞ? 一気に興味が湧いた。鍵屋の僕にも破れないセキュリティだろうか。


「あ、興味出てきました? アレクセイさんでも受けられますよ」


 大丈夫です、と力強く頷いた受付のお姉さんはさらに声を落として説明をしてくれた。実はこの依頼、ギルドも噛んでいるのだ。魔道具のリュックを貸し出すことで、一部の素材や珍しいアイテムを優先的に買い取る契約がなされているのだとか。


 魔道具のリュックにはその容量以上のものが収納できて、重さも軽減されるため背負った人の負担にならないのだとか。しかし、この魔道具、おいそれと買えるような金額のものではない。


 貸してもらえるのは、信頼と実績のある冒険者ランク上位の者に限られる。人格や実力も見られ、審査も厳しいようだ。ポーターにはそんなに詳しく話さないらしいのだが、何故僕に話した!?


「お受けになります?……ではこちらが依頼主の探索チーム、冒険者パーティー【鷹の爪】の正式依頼書です。サインお願いしますね」


「と、唐辛子!? アハハ」


 突然笑いだした僕をお姉さんは怪訝な表情で見下ろす。居住まいを正して恭しく受け取り、サインを書いた。不意に後ろから誰かが僕の肩に手を置いて言った。


「おし、合格。明日早朝西門集合な!」


 は? こいつどうやって僕の背後に来た? 全然気づかなかった。振り返って思わず眼を解錠(アンロック)


 戦慄。


 ドレクスラー・バイン(22歳)

 冒険者

 パーティー:【鷹の爪】リーダー

 職業:【剣士】

 スキル:【剣術・上】

 ランク:B


 驚き、目を開いていると受付嬢が僕の上方に目を向けて言う。


「ドレクスラーさん、ダメですよ。受付中に割り込んで声をかけるなんて。はしたないです」


「うぐっ、すまない」


 どうやらこの人も受付嬢には適わないようだ。少し緊張が解ける。僕は人差し指を上に向けてお姉さんに話しかけた。


「この人が依頼主?」


「そうなんです。冒険者パーティー【鷹の爪】のリーダー、ドレクスラーさんですよ。ドレクスラーさん、一応部屋空いてますが、使います?」


 どうやら説明のための部屋を確保しているようだ。だが、ドレクスラーは首を横に振る。


「大体の説明は今さっきミランダちゃんがしてくれただろ。あれで十分だよ。明朝早く西門集合。これで全てだ。説明終わり。あと二人は決まらなかったら監視員をそのままポーター要員って事で手を打っておいたからな」


 受付嬢の名前はミランダと言うらしい。知ってた。こっそり解錠()たから。


 上を向くとなかなかのドヤ顔をかましていらっしゃった。見なかったことにしよう。魔道具を貸し出す事で監視員も付くらしい。厳重なものだ。それだけ高価な物なんだろう。面白い依頼に出くわした。


 と思っていたのは最初だけだった。


 まさかこの冒険があんな凄惨な事態に陥るなんて思ってもみなかったから。


評価やブクマよろしくお願いします。

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