[ 怜 ]
「先生さようなら」
クラスの皆で最後の挨拶をする。
生徒達は机の中の教科書などをランドセルにしまい順々に教室から出て行った。
「れい、早く帰ろうぜ」
さとしがれいに話しかける。
「うん、ちょっと待って」
れいは促されるままランドセルを背負っった。
学校の外に出ると、秋の肌寒い風がれい達に襲ってきた。
「おー寒いぃ」
情けない声でさとしが声を漏らした。
「もうすぐ冬だな、嫌だな寒いのは」
今日は11月の半ば、れい達が住むところでは歩道が落ち葉に埋め尽くされ、道路脇に並ぶ木々は冬の気配を感じさせていた。
「もうすぐ12月で冬休みだな、毎年思うけど、二学期って早く感じるよな」
さとしが歩きながら言う。
「確かに早く感じるけど、さとしは他に原因があるからだろ?」
「え?どういうこと?」
れいはさとしがなぜ短く感じるのか意見を述べた。
二学期始まりのあの日、なんとさとしはお目当ての田中みひろと席が隣になり毎日楽しそうにしているのである。
さとしに聞くと、別に好きじゃないと答えるのだが、他人から見るとまんざらでもない気がするのは気のせいではないのだろう。
それに引き換え、れいはというと片思いの子を後ろから眺める席になってしまったものだから、若干ひがむのも無理はない。
それに好きな子と隣の、大田幸徳:おおたゆきのり、が仲良く話してるのが気に入らないらしく毎日ストレスを感じていた。
「あーあ、さとしは毎日楽しそうでいいなぁ」
この様な愚痴を言うのは今日だけで何回目だろう。
さとしも毎度の慣れっこでれいを慰める。
「まぁ来学期は隣の席になれるよ」
そんな事を話しながら、さとしの家の前で別れた。
ガラガラ
「ただいま」
れいは玄関で靴を脱ぎ居間に入っていった。
誰もいないのだろう、いつもなら母親がただいまと言う前におかえりと言うのが定番なのだが、家の中は静まり返っている。
お姉ちゃんも帰っていないらしく、家の中はれい一人だった。
ビュー…ガタガタ…
外では風が強くなったのか部屋の窓が軋む音が聞こえる。
れいは自分の部屋に行き雨戸を閉めた。
時計に目をやると16時を回っている。
れいは小腹が空いたので台所へ向かった。
棚から食パンを取り出すと、それをトースターにかけ、居間で待った。
数分後…
チーンという音が聞こえ、れいは台所に向かった。
冷蔵庫からバターを取り出しトーストに塗る。
出来上がったトーストを持って、また自分の部屋に戻った。
れいはテレビをつけ、椅子に座ってパンを食した。
テレビでは昔放送していたドラマの再放送がやっており、れいは夢中になっていた。
ドラマが終わりテレビの時計を観ると17時丁度になったばかりだ。
れいは帰って来ない母と姉の心配をしながら、居間に向かった。
いつもならこの時間には騒がしいはずの家が、今日は風の音とテレビの音しか聞こえない。
居間のソファに横になりながら、れいは目瞑った。
心細さを感じながら、れいは眠りについてしまった。