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ヲタクなんてそんなもんだ  作者: PON
序章
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子供


子供の頃というのは無邪気なもので、善悪に対する認識の薄さゆえに残酷なことを平気で行い、冷酷な言葉を投げかける。

投げかけられた側が鈍感であったり、あるいはその意味を理解していなければさしたる問題でもなかったのだろうが、えてしてそういう人間ばかりではない。

他人の顔色をうかがう故に過敏になる。

少なくとも自分はそういう子供だった。


今日もつつがなく授業の時間を終える。

すぐ家に帰って、さっさと宿題を済ませてしまえば、あとは自由な時間だ。

なにをやってようがとりあえずは文句は言われない。

「タク、お前どうする」

「うーん、帰る前にやってくか!」

ランドセルではなく、グローブとプラスチックのバットを片手に部屋を出ていくクラスメイト。

別段珍しい光景ではない。

今はどこの公園に行っても、何をしていても全く見も知りもしないおじいさんに怒られる。

だったら普段授業でも使っている学校のグラウンドで遊ぶほうがいい。

そういう発想で授業後から最終下校の時間まで遊び倒してから帰る。

彼らはそういう面子だった。

では、自分はどうか。

「…」

誰に言うのでもなくさっさと席を立ち、ランドセルを背負い必要な荷物を持って教室を出る。

「あいつ、何してるんだろうね」

「わかんないけど何考えてるかわかんないし、近寄らないほうがいいよ」

居なくなれば何を言ってもいいと思ってるんだろうか。

それとも聞えよがしなのかはわからないが、そんな会話が後ろから聞こえてくる。

自分の話だろうな、とは思うがいちいち確認するのも馬鹿らしい。

靴に履き替えて下駄箱を出れば、グラウンドで遊ぶ同級生や下級生の姿がわんさかと見える。

「…」

自分もそこに入りたいとは思わないし、感慨もない。

だから何の気なしにグラウンドを見て、なんの感想もなく通り過ぎる。

校門までの道中アタマにボールが当たってゲラゲラとした笑い声が聞こえてくるがなんのその。

さっさと校門を出る。

車に轢かれて怪我をした生徒の話もあるので、確認だけは怠らず足早で。

さようなら、と声をかけてくる見回りの先生に最低限の挨拶だけ返してさっさと家路を急ぐ。

走るでもないが、誰かを追うでもないまますたすたと歩くこと20分ほど。

「…」

小さな家の門をあけて家のカギを取り出し、滑り込むように入る。

自分の部屋にランドセルを放り出し、リビングでお菓子を少しだけ食べて。

妹の分だけ残すようにと言われているのでそれだけ選り分けて、後は棚に戻す。

「…」

自室に戻って宿題をできる限り素早く終わらせたら、あとは授業の内容を五分だけ見返して勉強はおしまい。

棚から、無造作に「じゆうちょう12」と書かれたノートを取り出す。

部屋においてあるテレビの静止画…アニメのワンシーンをひたすらトレースする。

自分のやりたいことというか、趣味の一環として絵を描くことがひとつ。

尊敬しているとある人物いわく「描きたい構図に出会った時に自分の描きたいようにできないのが一番悔しいから、気になったものや気に入ったものを片っ端から模写している」という事らしいので、自分も始めて見た。

主にアニメやゲームの一部を切り取った静止画であったが、好きなシーンだけを切り取っているとはいえかれこれ3年くらい毎日続けている。おかげでそれなりに思ったように描けるようになった。

親も「夢中になれることは良い事だ」とオモチャよりえんぴつとまっさらなじゆうちょうをねだる自分にとやかくは言わない。

最初こそ宿題をほっぽり出してまでやっていたが、やることやってれば文句はないと言い切る両親のスタンスのおかげでこと自室でのこの時間について誰かに咎められることはなかった。

夕飯に呼ばれるまでそんな時間を続けて、全員食卓に着いて夕飯を食べたら風呂に入る。

次に歯を磨く、そしたら眠くなるまでじゆうちょうをスケッチブックにする。

ぼく…つまり小学六年生の『嘉瀬宗司』という子供のだいたいのルーチンはそんなもんだった。

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