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その日の景色


君は笑っていた。透き通る綺麗な声で笑い声をこぼしながら。

俺はその声を聴くのが嬉しかった。

何よりも嬉しい。生きていることすら楽しくなってくる。

君と過ごしたあの日を僕は決して忘れない。君の声も君の香りも君の名前も、僕の知っている事は全て忘れない。


もし、君が死んだとしても。

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



僕は病院のベットに横たわっていた。

「何なんだよ! 何で! 何で僕だけが………」

周りで静かに僕の事を見守っている医師や看護師に当たり散らす。

自分でもこんな事はしたくなかった。

だけど僕は、自分の感情を抑えきらない状態になっていた。


今思えば君との出会いはココからだったのかもしれない。


病院で僕は医師に告げられた。

ある事故に巻き込まれて、その怪我が原因で視力を失った。


ベットで目を開けようとしても辺りが真っ暗なまま。人の顔も、周りの景色も一切わからない。

分かるのは、耳から聴こえる音と。手で触れた時の感触。

嗅覚、聴覚、味覚、感覚は全てわかる。

だけど、視界だけが見えない。辺りが一面真っ黒なだけだ。


「貴方には酷かもしれませんが、これからは1人だけで外に出るのは無理だと思います」

医者の声が聞こえてくる。聞こえてくる方を見ても何も見えない。

俺の頬を水が垂れ落ちる感覚がした。

見えない手で目を擦ると目からは涙が出ていた。


「ははは………なんだよコレ! 何で目が見えないのに涙は出てくるんだよ!」

全ての理不尽さをその場で当たり散らすように叫んだ。

周りを気にせずに叫び散らす。

どうせ、僕は何も見えないのだから。


「では、失礼します」

その声が聞こえた後にガラッと扉が開く音がして、人の足音が鳴り響いていた。

多分、医師にが出て行ったのだろう。


僕は静かに丸くなる。

これは夢では無いかと思ったから。

悪い夢ならいつかは覚める筈だと。

そう考えながら眠りに落ちた。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


鳥の鳴き声が聞こえきた。

どうやら眠りから覚めたようだ。

僕はいつも通りに目を開けようとする。


「あれ? ………何で!? 何で目が覚めても目が開かないんだよ!」

僕は現実を突きつけられる。昨日のアレは夢でも何でも無い現実だったのだと。

幾ら目を開けようとしても視界は真っ黒なまま。何も見えない。

鳥が鳴いている事だけは分かった。


「クソ!」

僕は拳をその場で力強く下に振り下ろす。ベットの上にいるのでベットに当たり反動で腕が弾き返された。


「これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ」

呪文の様に繰り返した。これを現実だと思った瞬間に何かが壊れてしまうと感じたから。

暗闇の中で僕は何も考え無い様に蹲っていた。


その時、トントンと言う音が鳴り。

誰かの靴音が聞こえてきた。


「失礼します」

少し高く。若い女性の声だと分かった。

僕は声の方を向くが何も見えない。

どんな顔か。どんな表情を浮かべいるかも…………わからない。


「どうですか? だいぶ元気になりましたか?」

「元気に見えますか!? 」

僕はイライラが溜まっていて、目の前にいると思う女性にきつく言う。

自分でも何してるんだと思うが、辺りが真っ暗でそんな思考はできなかった。


「す、すいません!」

「それより、楽にしてくれませんか?」

口から自然にその言葉が出ていた。

「えっ?」

「僕を殺してくれませんか?」

遂に僕はその言葉を口にした。

今まで幾度なく頭を過ぎった言葉。

僕は死にたいと思っていた。

今まで見えていた物が急に見えなくなった恐怖。

この身体で生きれるとは思っていなかった恐怖。

何も見えない。自分がどこにいるのかすらわからない。そんな恐怖に僕は押し潰されていた。


もう一度はっきりと言う。

「僕を殺してくれませんか?」

目が見えなくて生きている人には申し訳ないが、僕にそんな勇気は無かった。


「無理です!」

大きく透き通る声が僕の耳に聞こえた。

「お願いです! 僕を、僕を殺してください! もう、何も見えないなんて嫌なんです」

「そんな事、言わないでください!」

少し、強めに女性声が聞こえた。

彼女がどんな表情をしているのか、知りたくてもわからない。


「なら、どうしろと? こんな身体、死んだ方がマシでしょ?」

頭に考えていた事がそのまま口から溢れでる。


「いいえ。生きていれば楽しい事もありますよ?」

「目が見えないのに? 目が見えないのに楽しい人生なんて来るわけないだろ!」

今まで生きてきて、出した事もない大きさで叫んだ。


「あります! なら、私が貴方の人生を楽しくしてあげます!」

「……………本当ですか?」

僕は嘘だと思った。だけど、彼女の声は嘘には聞こえなかった。


「本当です!」

それが聞こえると、僕の手には暖かい感触を感じた。目には見えないけど、彼女が僕の手を握っている事は分かった。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


アレから2年が経った。

僕の視界は未だに真っ黒なままだ。


「貴方! 桜が綺麗よ!」

ほらほらと言って僕の手を引いて来る。足がふらつきながら歩く。


「それより、貴方も随分おとなしくなりましたね〜」

そう言って僕の頭を撫でて来る。

「仕方ないだろ? あの時は本当に絶望してたんだから」

そう言って僕の頭を撫でている手を跳ね除ける。少し、残念そうなため息が聞こえた。


「今は絶望してないんですか?」

「今は君がいる。あの時に人生を楽しくするって言ってたの信じてない無かったけど、本当に嘘じゃないとはね」

「ふふふふ、実はあの時に凄く怖かったんですよ? 貴方の怒鳴り声」

ゆっくりと僕の手に彼女の暖かさを感じる。この時間が今は一番楽しい。


あの約束をした後。彼女は毎日の様に僕の所に来ていた。

最初は僕も拒絶していたのだが、余りの真剣さに僕は心を許してしまった。

彼女は看護師の癖に飽きずに僕の所に来て話をしてくれる。本当に飽きもせずに。

そして僕が退院する時に彼女からプロポーズを受けた。

彼女も僕に惹かれていたらしい。後で彼女に聞いた事だが。

僕はもちろん返事をした。

「こちらこそ、よろしくお願いします」と。

僕もいつの間にか彼女に惹かれていた。話していると楽しく。目が見えなくても幸せだと感じた。


「あの時はごめんね」

「いえ、私こそあの時はごめんなさい」

僕はお辞儀をすると、彼女もお辞儀をして頭がぶつかった。

「「…………………ぷ、はっはは!」」

僕は口から笑い声が出てくる。それと同時に彼女の笑い声も聞こえてきた。

やっぱり、幸せに感じる。


「ほら、桜が凄い綺麗に散ってるよ!」

彼女に頭を動かされた。多分、桜の木が見えているのだろう。桜の木をゆっくりと手を繋ぎながら眺めていると、少し暖かい春風が吹いていた。


僕は事故や怪我をして、夢や希望を捨てる事になっても今は絶対に諦めない。

君が死んだとしても、この気持ちは変わらない。人生は楽しむものだと学んだから。



今日の空は青く晴れている。

初めまして、バナナアザラシです。

短編小説を初めて書きました。作者の腕を上げるための練習です。

ですので、酷い内容。酷い文章だったと思います。


それでも読んでくださりありがとうございます!

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