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私の世界は王子で回る  作者: 右手
第1章
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一瞬の初恋

この国の王様、王妃様、王子は皆に愛されている

でも、特に王子が愛されていると思うの


王子が1番愛されている国


そんな国に私レア・ミラーは生まれた


小さな頃から、王子は素晴らしい人だと親に言われ続けてはや18年が過ぎた


だけど、私は皆とは違う


皆は王子のことをとても愛しているようだけど私は正直に言わせて頂くと…王子が苦手だ


本当は嫌いだと言いたいところよ

だけどそれは流石に言えないでしょう?

だから苦手という事にして置くの


昔小さな頃は王子に憧れの念を抱いたり、素敵な人だと思っていた…


そう…王子を自分の目で見るまでは…


私が12歳を迎えたばかりの頃

私は初めて王子を目の前で見たの


その日は王子が月初めに一度の街を散歩する日で王宮の方と一緒にいたことを覚えている


それまで何度か王子が街を散歩する日王子のことを見に行くことは出来たけれど、どうしても勇気が出なくていつも遠くで姿を見たりしていて近くで王子を見ることは1度も無かった


けれど、その日は勇気を出して王子達が通る道で私は王子が来るまで静かに待っていた


皆の歓喜の声が聞こえて王子が近くに来たことに気付いた


緊張して下を向いていた私はゆっくりと顔を上げて王子のことを見た


私と同じくらいの年頃に見えた王子は私より少し身長が高くてとても優しそうな顔をしている人だった


私の周りにいる友達とは雰囲気が全然違っていた


王子はとても綺麗な顔立ちで高貴なオーラを身に纏っていた


モカブラウン色の柔らかそうな髪の毛が風になびいてとても美しく見えた…


かっこいい…幼いながらにして、私は王子に恋をしてしまった


そう、一瞬だけだけど…


じ…っと王子が歩く姿を見ていると王子は此方を見てこう言った


「き、君は何て美しいんだ!!」


確実に私の目を見ながら王子はそう言った


「え、わ、私ですか…?」


「嗚呼…君のことさ!そうだ!美しい君にこれを……受け取ってくれるかい?」


そう言って王子は、道端に咲いてあった小さな白い花を摘んでを私に差し出してきた


「え、あ…はいっ!!」


自分の頰が紅潮するのが分かった


(お、王子から花を貰っちゃった…)


どきどきして、頰が熱くて、目の前にいる王子の目が見れなかった


「王子様ありがとうござ「嗚呼っ!!君は何て美しい人なんだっ!!!」


「へ?」


王子は私がお礼を言い終わる前に、私の奥にいた近所で一番綺麗なお姉さんの元に行ってそう言っていた


「君のような美しい人は初めて見たよ!!少しお待ちいただけますか、美しい人…」


王子は側にあった花屋から、綺麗な赤い薔薇を買って来てお姉さんに渡していた


「受け取って貰えますでしょうか?」


お姉さんは照れたように微笑んで真っ赤な薔薇を受け取っていた


その姿を見て私は、惨めでとても悲しい気持ちになった


目が熱くて胸が痛くて…目の前が真っ暗になったようだった


涙が溢れそうになるのを必死に堪えて私は家まで走った


何故…?何故私に花を渡したの?


何故私には道端の白い花で、お姉さんには綺麗な薔薇なの?


何故私がお礼を言い終わる前に私から目をそらして行ってしまったの?


私はあのときのことは一生忘れないと思うわ


家に着くまで何人もの女性を見た


皆花屋に売っている色とりどりの美しい花を抱えていたことに気付いた


そこで初めて王子は皆に花をプレゼントしていることが分かったの


けれど、私だけだった


道端に咲く小さな花を貰ったのは


私は地味で儚い白い花


皆は美しく凛として咲く綺麗な花


恥ずかしくて、私が王子から貰った花を誰にも見られたくなくて、花を隠すようにして走った


家に着いて、テーブルの上に王子から貰った花を投げるように置いて私は部屋にこもって鍵を掛けた


そしてそのままずっとずっと泣き続けた


涙が枯れてしまうくらい泣いた


泣きながら思い出すのは白い花と王子の顔


私が美しくないから、地味だからあの花を渡したのだろうか


では、何故美しい人だなんて嘘をついたのか


幼い頃の私には考えても考えても分からなかった


そのときは唯泣くことしか出来なかった


今思えば王子の優しさだったのかも知れない


美しくない私にも花を渡すなんて王子はとても優しい人


その優しさで私はずっと傷付いているのだけれど…


傷ついた心は癒されることなく月日が経って、あの日から王子に会いに行くことは無くなり6年が経っていた


私の初恋は直ぐに終わった


そう、本当に一瞬の初恋だった…

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