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はい、マイマスター  作者: Archangel
メイド購入旅行1~メイドを買いましょう~
4/22

旅程打合せ

「ロズエリアの首都ローザにスサリという女商人がいます。そちらから私の後継者となる奴隷を買っていただく予定です」


 奴隷を扱う商会自体はアヴァロニアにもなくはないが、基本的にそれらはロズエリアの商会の代理として扱っているに過ぎない。そのため本当に良い商品、つまり良い奴隷を買うならロズエリアを直接訪ねるのが最も確実だとエミリアは説明する。ちなみにエミリアやエイダをバモスに売ったのがそのスサリだそうだ。


 今回使うルートは往復それぞれ違うルートを取る。直近の町タルムから先ずは西へ向かいアヴァロニア国境沿いにある街道を利用するのが安全なのだが往路での経費と時間を節約するため直接アヴァロニアとロズエリアの北側の関所があるアロッサまで向かう。そこから大陸南部を横切る南方横断道をさらに西に向かいウライザから南に下り目的のローザに到着。ここに2~3週間ほど滞在して奴隷を買う。

 このウライザとローザを結ぶ街道には古くから盗賊が出没することでも有名だ。また南方横断道はウライザでローザ経由にて運ばれたロズエリア南方沖の千星諸島からの交易品を調達しながらアヴァロニアやクリティアへ向かうキャラバンが多く、また山脈沿いで隠れやすい森などが多い。そのためそれらキャラバンを襲う盗賊が多いこともあり、恐らく旅に不馴れな者を連れて歩くことになる復路ではこちらを使わないことになった。ローザの東のリーズとオイライとを繋ぐイーサル街道経由で南側の関所のあるロヴェリアを抜け大陸周遊道を使いタータンまで抜ける。次に往路では使わなかった国境沿いの街道を北上しアルヴエルを経てタルムまで戻って来る。

 大陸周遊道やイーサル街道も盗賊がいないわけではないのだが比較的開けてることもありもし自衛の手段を持たないものを守りながらでもやり過ごしやすい。


挿絵(By みてみん)


 順調にいけば二ヶ月もあれば帰ってこれるとのエミリアの計算に少し速すぎるのではと疑問に思い尋ねる。


「たしかに歩きであればとても二ヶ月で行ってこれるものではありません。ですから地下に停めてあるバモス様が使っていた大型の六輪ヴィークルを使おうと思います」

「そういや使わないのに整備は欠かしてなかったな。とはいえ動いても私は運転できないんだけど」

「それなら心配ありません。マリィはバモス様とあれで旅をしてたので今回も同行の予定です」

「そうなの?」

「問題ないにゃ!」


 その問いの答えは執務用の椅子に座ってクルクル回っていたマリィから返ってくる。


 新しいメイドを用意することを決めてそのまま旅の計画を立てていた。同じ執務室に据えてある簡単な応接セットにエミリアと対面で座って話し合い、エイダは「あとはエミリアに任せる」とだけ言って普段の持ち場に戻り、マリィはなぜか人の執務机で遊んでいた。


「ハンターやってたジイサンならともかく、アレは簡単とはいえ住居スペースや倉庫もある大型のヴィークルだろ?」

「だぁかぁらっ! 問題ないのにゃ! ちゃんとライセンスも取得済みにゃ!」


 そう言って小さな金属製のカードを突きだしながら執務机の上に勢いよく仁王立ちになる。どこか誇らしげだ。

 しかし「机から降りなさい」とエミリアから静かに叱られいそいそと降りてカイルの傍までわざわざ来て同じように再びそのカードをぐいぐいと半ば押し付けるように見せつけてくる。

 そのままでは確認できないので受け取り、改めて見直してみるとハンターライセンスと呼ばれるカード型の魔導器であった。


「こんなもん持ってたのか………しかもクラスCって。これで十分食ってけるじゃねぇか」

「ご主人が望めば竜狩りもやってみせるにゃ」

「いらんいらん。あんなもん面倒なだけで関わらんのが一番だ」


 ハンターはライセンスによりA~Eの5つのクラスに分けられている。

 クラスEは簡単な講習と効果測定さえクリアすれば取得できるが、やれることは単独ではなにもなくクラスD以上の補佐程度。クラスDは学科と技能試験をクリアすれば取得可能でハンターを生業にするなら必須である。技能試験も難しいものではなく最低限の体力があれば殆んど問題ないとされる。受けられる依頼もクラスEでは制限されている賞金をかけられた犯罪者などの征伐なども可能になる。クラスCはクラスDで実績を積んで地方ギルドから中央ギルドへの推薦と中央ギルドからの認可によって取得できる。国レベルの依頼も受けることが可能でギルドが扱う依頼は軒並み受注可能になる。

 クラスB以上は中央ギルドからの委任となり直に各国から強制的に依頼をされ呼び出されたり、クラスAにもなると依頼の遂行中に限られるとはいえ軍の指揮官クラスの権限を与えられることもある。


 ちなみに各国で多少異なるが軍や聖騎士団のような機関を退役する際には有事の備えとして実績によりクラスBやクラスCのライセンスを簡単な試験で取得させる制度があるため、カイルも強制的な呼び出しのないクラスCのライセンスを取得している。


「だけどこれはハンターライセンスであってヴィークルの運転許可証じゃないだろう」

「ライセンスデータも見るにゃ」

「いいのか?」

「当然にゃ」


 先に述べたようにこのハンターライセンスはカード型の魔導器である。隅にある魔石に魔力を注ぐことでそのライセンスのデータを見ることができる。そしてマリィのライセンスデータを開いたところいくつもの追加資格が表示される。その中にマリィが言うように街道でのヴィークルの運転許可がしっかり並んでいた。


「おお、マリィって思ってた以上に優秀なんだな。正直見直したぞ」

「ふっふっふっ、当然にゃ。ご主人はマリィをもっと褒めるがいいにゃ。寧ろご主人はこれからマリィのことを崇めれぶぁっ――!」

「調子に乗らないように」


 ふんぞり返るようにしていたマリィの後ろにいつの間にか立っていたエミリアの拳骨がマリィを襲う。見た目ではそれほどでもなかったのだがどうやら舌を噛んだらしくしゃがみこんで唸っている。

 取り敢えず、マリィの同伴はこれで確定となる。


 エイダはエーテルの泉の管理があるとして、エミリアはどうするのか聞いたところ案内も兼ねて着いてくるとのことだったので旅のメンバーはカイル、エミリア、マリィの3人に決定した。


 続いて装備についてどうするかという話になる。


 マリィの物は本人によるとバモスの死ぬ1週間前まで出ていた旅でも使っていた物で手入れもきちんとしているそうなので問題なかった。エミリアはそもそもバモスがエーテルの泉を見付けてからは旅に出ていないので一応仕舞ってはあるがさすがに新調が必要らしい。カイルの物も自前の剣と籠手以外の制式の武具は規則で退団の際に返却しているので翌日タルムまで新調しに行くことにしたところ、マリィが自分の物も新調しろとごね出した。


「あなたの装備はまだ充分使えると言ったばかりでしょう?充分蓄えがあるとはいえ少しは節約も必要です」

「嫌っ! マリィも新しいの欲しいっ! ご主人とエミリアばっかズルいっ!」

「もおう子供ではないのだから聞き分けなさい」


 エイダと違いエミリアにマリィが突っ掛かるのは珍しいので少し微笑ましいとか思ってたもいたのだが、段々とマリィの目に涙が滲み出すのを見てさすがに可哀想になってきて提案してみる。


「こういうのはどうかな? これからマリィは一式を装備してきて、傷んでそうなのをいくつか新調するくらいならそれほどかからないと思うんだけど」


 それを聞いてマリィの表情が一気に明るいものになる。

 眉間に皺を寄せてマリィを責めていたエミリアの視線がそのままカイルに向く。少し怖い。


「カイル様?」

「ほら、ご主人は良いって言ってるにゃ」


エミリアが抗議をしようとしたがその間もなくマリィは部屋の扉を開けたまま飛び出して行ってしまった。


「エイダではありませんが、カイル様はマリィに少々甘過ぎませんか?」


 エミリアがため息をひとつついてマリィの出ていった扉からこちらに向き直るが、カイルは肩を竦めて乾いた笑いを漏らすだけだった。



 挿し絵に使っている地図の別サイト(pixiv)のページです。


http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51370230


※みてみんさん不調の際はこちらで確認下さい。


2016年08月05日 誤字修正

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