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100のお題

曇り時々晴れ

作者: 紅瓶

僕の心の中には、どんよりとした暗くて重たい雲が停滞している。

楽しいと思える事が一つもなくなってしまった。夜もなかなか寝付けず、眠れたとしても必ず悪夢を見る。

「鬱ですね」

精神科医にそう告げられた。抗うつ剤やその他のやたら難しい名前の薬を処方され、病院を後にする。

空には僕の心と同じような、曇り空が広がっていた。

心なしか、雑踏を行く人々の顔も、鬱と診断された僕と同じ顔をしているように見える。

スーツ姿の男と肩がぶつかり、舌打ちをもらった。

「ちょっと」

とっさに僕の口から出たのかと思ったが、それは女の人の声だった。

振り返ると、制服姿の女の子が、さっき僕とぶつかったスーツの男に詰め寄っていた。

「ぶつかっといて舌打ちってなんなの?不愉快です。人としてマナーがなってないと思います」

さらに女の子は僕に向かって言う。

「あなたも何か言ったらどうなの。死んだ魚みたいな目をして。不愉快です」

女の子はそれだけ言うと、颯爽と去っていった。

僕はスーツの男としばらく顔を見合わせ、どちらからともなく頭を下げた。

少しだけ、心が軽くなった気がした。

いつの間にか、空を厚く覆っていた雲の切れ間からは、うっすらと太陽の光が差し込んでいた。

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