料理
後日、左目の状態を見に来た朱羅にリルはディーンに念押しされたことを伝えた。
「と、いうことだそうですよ」
だが、それを聞いた朱羅は当然のように反論した。
「仕方ないだろ。今までの味に慣れていたんだ。しかも、あいつが用意したのは肉中心のインスタント食品だぞ。栄養が偏るし、そればっかりだと体が受けつけなくなる」
確かに育ち盛りの重要な時期には遠慮したいものだ。
「今はどうしているのですか?」
「父が呼んできたコックが作っている。それでも思っているものと味が違うから食材を全て指定したんだが、やはり違うな」
「そのコックは私の料理を食べたことがありませんからね。同じ味は出せないと思いますよ」
「わかっているのだが、毎日食べていると味に飽きるんだ。リルの料理は毎日食べても飽きないのにな」
そう言って不思議そうに朱羅がため息を吐く。
「では、自分で作ってはどうですか?」
「作る?」
朱羅は少し考えてから大きく頷いた。
「作る……そうか。その手があったか」
「頑張って下さい」
にこやかに微笑みながらリルが近くにあった紙とペンで何かを書いていく。
その姿を眺めながら朱羅は話題を変えた。
「左目はどうだ?」
「痛みはなくなりましたけど……」
語尾を小さくするリルに朱羅が黙って先を促す。
「……時々、見えるんです。包帯をしているのに……こう、影のような……」
リルは包帯をしている左目の前に自分の手をかざした。
見えないはずの左目に手の影が映る。その様子に朱羅は頷きながら立ち上がった。
「明日、包帯を取る。二日早いが問題ないようだ」
「はい。あ、ちょっと待って下さい」
リルが紙に走り書きをしたものを渡す。
「なんだ?」
「料理のレシピです。参考にして下さい」
朱羅は軽く視線を落としただけで内容は読まずに、すぐに顔を上げた。
「ハンバーグとカレーの作り方も書いといてくれ」
リクエストされたメニューの内容に思わずリルは薄い蒼の瞳を大きくしたが、すぐに微笑んだ。
「わかりました」
「少し電話をしてくる」
そう言って病室から出ると、朱羅はすぐに携帯を取り出して電話をかけた。数回のコールで相手が出ると、前置きなくストレートに用件を言う。
「明日、リルの包帯を取る」
その内容に前回と同様、怒鳴り声が響いた。
『飛行機のチケット、明後日で取ってるんだよ!こっちの都合も考えろ!!』
「ならチケットを送るが?」
『……いい。こっちでなんとかする!あとで到着時間を教えるから、オレが行くまで包帯取るなよ!!』
一方的に断言して電話がブチッと切れる。
「予想通りの反応だな。それより今日の夕食だ」
朱羅は平然と携帯を納めると、レシピが書かれたメモを受け取るために再び病室に入った。




