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プロローグ 初めの魔女
そこは、彼女だけの箱庭でした。
少女は手を差し出す。
見渡す限り真っ白な、無の世界に一人佇みながら、それでも空を恋う。
何度も追慕の腕は空を切り、瞳に映るのは白の虚無だけ。
繰り返し繰り返し、あの青と大気を求め続ける。
少女の場所には、踏みしめる大地が存在しない。故に、上も下も―天となる空間が判別出来なくても、
少女は、呼び続ける。
やがて――少女は歌い始めた。最初こそ囁くような、掠れた声だったが、徐々に大きく、単調な旋律から複雑な旋律に変わっていく。
少女の吐息から大気は動かされ、曲律に乗せた想いは世界を彩る。
世界を、構築していく。少女が元いた世界を真似て、少女に宿る大いなる力を根源に。
それは、世の最大の禁忌。
少女は“解っていて”――笑っていた。
重ねた彼女の罪。
けっこう少女と少年という単語を連発して書きますが、人物がごっちゃにならないように頑張ります。
今回の少女は主人公の子とは違いますよ~。