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第二章3 『始まりの事件③』

 7月になり神箜第二学園も衣替えをして生徒達は夏服に身を包んでいた。そんな涼しげな服装とは裏腹に冷暖房が装備されていない生徒会室は、小型の扇風機が部屋の中にいる一部の人に清涼感を与えている程度だった。

 

「あー、暑い。これから暑くなってくるって言うのに。もう私死ぬ。死んじゃうよー。会長の権限でクーラーつけてくださいよ。」

 

 汗だくの笹原真美が扇風機の前で一人唸っていた。

 

「あのな、言いたいことは二つ。一つ目は会長権限でそんなことができるなら、とっくにクーラーなんかこの部屋についてる。それにまだそんなに暑くないだろう。この部屋で汗かいてるのはお前だけだ。なんでそんなに汗をかいているのか逆に聞きたい位だ。そして二つ目はこれが一番重要なんだが、お前は気付いてないかもしれないから再度忠告しておく。実はお前は生徒会のメンバーではないんだ。」

 

 パソコンに向かっていた純はくるりと椅子を回転させ注意を促した。生徒会室ではもはや定番となっている真美と純の掛け合いが今日も行われていた。真美はいじわる、とあかんべーをしたあと、お返しとばかりに扇風機の方向を純に向け、強のボタンを押した。その拍子にきれいに片付けられていたプリントが数枚吹き飛ばされた。

 

「せんぱーい。会長がいじめまーす。」

 

 真美はほのかの所に助けを求め場所を移動した。純はいったん扇風機を止めプリントを片付けながら真実を睨み付ける。すると思わず隣にいたほのかと目が合ってしまい、気まずいと思っていたところ、ほのかはにっこりと微笑み返してきたのでもっとばつが悪くなった。

 

 純は和音と会った次の日、ほのかに守護神ガーディアンについて聞いたのだが、ほのかは詳しくは話そうとはせず結局お茶を濁されて終わってしまった。それ以来ほのかと面と向かうと何だか気まずさが先行し、ぎくしゃくしてしまうのだった。

 

 再びパソコンに向かった純は頭の中を再び整理してみた。守護神のメンバーは全員で8人その中で純が知っているのは3人。そしてそのうち天野光流は二次元世界と関係を持ち、灯月和音はこのまえ黄泉世界と関係を持った。残りの連城ほのかは時空の歪みのことさえ知らない一般人である。

 

 そして、もう一つ気になることが魔界から来た悪魔---白鳥海斗のことである。彼が家族の敵である悪魔の仲間だということもあるが、それ以上に、以前一度対戦してからのその後の消息が全くつかめていないため、単純に彼の居場所を純は知りたかったのだ。

 

「なあ、笹原。一つ聞きたいんだが、この町のどこかにいるが、どこにいるかはわからない人を探すとき、お前ならどうする?」

 

 純は視線をパソコンの画面に向けたまま、独り言を呟くように尋ねた。

 

「私ですか?私なら、色々考えるのがめんどくさいから、とりあえず町中をぶらぶらすると思いますよ。それでお腹すいたら近くの店でおいしいものでも食べて、今日も1日頑張ったなって自分を誉めてあげます。」

 

 どちらかと言えばインドア派の純は、しらみつぶしに当たるのは好きではなかったため、その案は以前思い付きはしたものの、すぐに脳内のゴミ箱の中にいれてしまった。

 

「そうだ、会長。おいしいものの話が出たところですし、アイスでもおごってくださいよ。それで今日のことは許してあげます。」

 

「別にお前に許しを乞うようなことはしていない、調子に乗るな。あと、ほのか。今日の俺の仕事は終わったから帰る。あとのことはよろしく。」

 

 純はパソコンをシャットダウンすると、足早に生徒会室をあとにした。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 純は初めて和音と会ったクレープ屋の前を通りすぎた。すると視線の先に知った男が現れた。男は純の姿を見つけるとにっこりと微笑みかけてくる。

 

「また会ったね。ちょっと、そんな怖い顔しないでよ。戦うつもりなんてないんだから。」

 

 白鳥海斗は両手をあげて戦う意思がないことを示す。純は相変わらず、彼を睨み付けたまま今度は動かなかった。

 

「この前はいきなり襲ってきて、今度は全力で無視?ほんと僕って嫌われてるね。」

 

 しばらくの間、沈黙が続く。

 すると予想外のことが起きた。突然、近くで爆発音がし、煙が上がったのだ。誰かの叫び声も聞こえる。思いの外大きな音で純は嫌な予感がした。

 

「残念でした。なんだか普通の事故じゃないみたいだね。最近は物騒だし、心配なら行ってみれば?僕以外の悪魔が悪さをしてるって言う可能性もあるし、もっと別の何かかもしれないし。」

 

 彼は不適に笑う。どうしようかと迷ったが、気になった純は一瞥したあと、白鳥海斗の横を通り抜けその場所へと向かうことにした。

 

 そして、この事件が世間に『時空の歪み』の存在を知らしめる、最初のきっかけになるのだった。

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