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第二章2 『始まりの事件②』

 真島純は家へと向かっている途中に和音に会った。今回は今までとは違い、私服ではなく制服だったため、いつもとは違う少し落ち着いた雰囲気を醸し出している。あともう一つ違うところと言えば、手に頭蓋骨を持っていることだろう。

 

「オオー、真島くん。」

 

 ドクロをもって笑顔で手を振ってくる彼女は純から見ればちょっとしたホラーだった。

 

「どうした?人殺しでもしたのか。」

「ああ、これね。さっき拾ったの。すごいんだよ、このガイコツさん歩くんだよ。」

 

 そういえば一年くらい前に歩くドクロが話題になってた気もするな、と純は記憶を探った。純はドラゴンや悪魔などすでに現実的ではないものを見ている。今さらドクロが歩いたところであまり驚きはしなかった。

 

「ほら、歩け。ほら、ほら。」

 

 和音はドクロを地面におき、頭をバシバシ叩く。いくら死んでるとはいえ、そんなに叩いてやるなよ、と純が思っていた時、さらに不思議なことが起こった。

 

『叩くなー!』

 

 ガイコツからそんな声が聞こえた。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「ほえ?しゃべった!」

 

 これはさすがに純でも驚きを隠せなかった。歩くドクロは実はしゃべるドクロでもあったのだ。そのガイコツはカタカタと音をならしながら続けて言った。

 

『あれ?どうした?しゃべるのってそんなに珍しいか?別に俺は怪しいやつじゃない。俺の名前はボーン、黄泉世界からやって来た。』

 

 黄泉世界と聞いて、純の体が反射的に反応する。二次元世界、魔界と続いて第三の世界、黄泉世界の住人までがとうとう姿を現してしまった。良く言えば大きな騒ぎが起きる前に見つけられてラッキーとも言えるが、実際はただの丸腰の一般人である純と和音にとって戦闘力のわからない敵に出会ったことは不運と言わざるを得ない。

 

「言ってることが良くわからない。できれば詳しく説明してくれないか。」

 

 純はまず下手に出て相手の様子を探ってみた。相手の情報を知らないまま下手な行動をとることは不味いと判断したからだ。

 

『そんなに警戒することはないさ。おれ自身には危害を加える力はない。ただ人間に特別な力を与えるだけさ。百聞は一見にしかずとも言うし、まずは一回見せてあげよう。そこの嬢ちゃん、おれを手に持ってくれ。』

 

 謎のドクロ・ボーンに言われるまま、和音はその頭蓋骨を持った。

 

『お、嬢ちゃん。若いのに苦労してるな。』

 

 ボーンが意味深なことをボソッと呟く。純はそれが気になり、その真意をボーンに問おうとした。しかし一言目が発せられようとするかしないかの瞬間に、どこからともなく吹いた強い風が和音を包み込んだ。

 

 思わず目をつむった純が、しばらくしてそっと目を開けると、そこにいたのは制服姿の和音ではなく、不思議な衣装を身に纏った和音だった。

 

「うわあ、なにこれ?」

 

 和音が驚いた様子で声をあげた。同じく純も驚いた表情をする。ボーンは和音の手から消えており、彼女の首に首飾りとして装着されていた。

 

『ほら、言った通りだ。お嬢ちゃんは初めてなのにもうレベル2だ。』

 

 ボーンの話に興味を持った純がさらに追及すると、ボーンは詳しく話しはじめた。

 

『さっき言った通り俺たちの力は人間に特別な能力を与える力だ。普通はレベル0の能力、身体強化から始まる人間が多い。最高はレベル10でレベルが上がるごとに使えるアイテムが一つずつ増えていく。そこはみんな平等だ。でも、成長スピードはその人間がどれだけ死を身近に感じているか、言い換えると、何回死に直面したことがあるかによって決まる。』

 

 そこまで聞くと和音の表情が固まり、そしてあからさまに暗くなった。

 

『つまりだな、この嬢ちゃんは若いのに死という現象に出会っている。おそらく、身近にいる誰かが死んだのを見たことがあるんだろう。』

 

 そこまで言うとボーンは和音の変身状態を解き、彼女の手の中に戻った。 和音はしばらく下を向いていたが、よし、というと顔をあげにっこりと笑って言った。

 

「これって何かの巡り合わせなのかな。実はねこの前見ちゃったんだ、マジックショーの帰りに。ほのかちゃんと別れたあと、こっそり真島くんのあとをつけていったら建物の裏ですごいことやってるの。もう一人の男の子って天野光流くんだよね?」

 

 純は特に肯定するでも否定するでもなく、ただ和音の話を聞いていた。

 

「盗み聞きしてたんだけど、光流くんはその時空の歪みのせいでやってくる悪いやつからこの世界を守るためにそいつらををやっつけてるんだよね。私にもこういう力があるんだし光流くんがやってるなら私もやるべきだと思うんだ。真島くんは知らないと思うけど私と光流くんとほのかちゃんは子供の頃『守護神』《ガーディアン》って呼ばれる八人グループのメンバーだったんだよ。私は四番目。そのグループの活動内容は『何かを守ること』だったから、ここらへんの平和を守っていた。まあ、色々あって結局解散したんだけどね。」

 

 最後の語尾を弱くして和音はそこまで一気に話した。そこではっとしたように表情を変えて今度は早口で謝った。

 

「なんかごめんね。急に語っちゃって。とりあえず時空の歪みとかなんだか良くわからないけど、元・守護神の一員として自分にできることをやってこの辺の平和を守ってます。では!」

『お!嬢ちゃん。いい決意だ。お供するぜ!』

 

 最後にビシッと敬礼をしてボーンを手に持ったままUターンして走って帰っていった。

 

「ちょっと待て、まだ聞きたいことがあるんだが!」

 

 純のもとに急に現れて自分勝手に帰っていった和音だったがわかったことが一つあった。光流も和音もほのかも十年前の話になると急に態度を変えて、追及しようとすると逃げるように去っていくということだ。

 

 それが何かは気になったが、純がその十年前の真実を知るのはまだ先になるのだった。

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