表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/81

第十二章9 『反逆のジャック⑥』

カグラは、はあはあ、と息を切らしながらゆっくりと辺りを見渡す。彼はまず、純を見て、ライトを見て、そして、シャーリーを見た。一見何でもないような動作だったが、シャーリーを見たときだけ、彼はとても安堵した表情を浮かべた。


「状況は理解しているな?ジャックが俺たちの命を狙っている」

「そうみたいだな」


純は頷いた。

カグラは地面に落ちていたジャックの大剣を拾うと、忌まわしそうにそれを一瞥した後、ジャックのいる方へと投げ返す。大剣は綺麗な放物線を描いてジャックの近くへと落っこちた。それを確認すると、カグラは再び口を開く。


「少々面倒なことになっていてな。このままだと俺達が明日を生きれる保証はないぞ」


カグラは自分の右手を開いたり閉じたりしながら、自分の体の具合を何度も確かめていた。今の彼の体には固有スキルは宿っていない。すなわち、人間の体に戻っているという状況だった。自慢の武術もこうなればどこまで通用するかわからなかった。


「ちょっと、カッコよく登場しておいて、なにその弱気?何とかしなさいよ!」

「ああ、何とかするさ。現にさっき大剣の攻撃を防いだだろ?」


カグラはライトにそう言うと、近付いてくるジャックをその瞳の奥に見据えた。ジャックはカグラの姿を確認すると、にやっと笑う。それが癪に触ったのか、カグラは更に険しい表情になった。ふう、と息を吐くと、ジャックに向かって走っていった。


「往生際の悪いやつだ。大人しく寝ておけば良かったものを」

「貴様にはわかるまい、この気持ち」

「ああ、わからん」


ジャックは大剣をぎゅっと握り、それを降り下ろすと、地面を削った。その際に生じた、いくつもの瓦礫の破片がカグラに襲いかかる。カグラは煩わしそうに両腕で顔を隠すと、その中を突っ切っていく。しかし、次に迫るは、ジャックの大剣だった。


カグラはギリギリのところでそれを見切ると、こんどはジャックの後ろに回り込む。怯むジャックをカグラは背負い投げの要領で、抱え込むと、その首に両腕を巻き付けて、気管を圧迫しながら、地面に思いっきり叩きつけた。

空中をきれいに半回転し、頭から地面に着地したジャックは苦しそうに咳き込み始める。


「ゲホッ、ゲホッ。痛えな、くそ野郎」

「すまないが、貴様にかける情けはもう残してない」


カグラは地面に転がるジャックに向かってそう吐き捨てた。そして、目の前に転がるその頭、側頭部に対し、足を振り上げると、まるでサッカーボールのように蹴りあげたのだった。辺りには鈍い音が響いた。

しかし、様子が何だかおかしいことに気づいた。


「ーー!?」


確かに、ジャックの側頭部にカグラの右足は当たっているのだが、本当にそれだけだった。ジャックには攻撃が効いていなかったのだ。なぜか、その答えは明白だった。カグラは人間で、ジャックは悪魔だったから。

ジャックは彼の右足をガシッと掴みながら、ゆっくりとその体を起こし始める。


「軽いな。攻撃が軽すぎる。人間の体はお前には使いにくかろう、カグラ」

「しまっーー」


次の瞬間には、カグラの体は宙に舞っていた。ジャックはまるでぬいぐるみを振り回すかのようにカグラの体を扱うと、最後に地面に叩きつけた。人間の体のカグラにとってその衝撃はすさまじく、それだけですでに彼の体はボロボロだった。


それでも、カグラは何とかもう一度立ち上がると、ジャックの前に立ち塞がった。


「はあ……はあ……」

「お前の固有スキルはもうもらっている。お前にはこれ以上用はないんだ。命を無駄にするな」


カグラは何も返さなかった。けれども、彼の体は再びジャックのもとへと向かっていた。それをジャックは哀れんだような眼で見つめる。もう一度、カグラは走り始めると、ジャックの体に攻撃を加える。しかし、その一発一発は、ジャックにとっては非常に軽いものだった。


ジャックは剣を降り下ろす。カグラは距離を取るように後ろに下がった。その時だった。ジャックはちょっとした違和感を背中に覚えた。それは本当に些細なものだったので、ジャックは後ろを振り向くことはしなかったが、このときすでに彼の体にはある変化が起こっていた。


一方で、そんなことを知りもしないカグラは、もう一度ジャックのもとへと距離を詰め始める。それはジャックの油断だった。カグラの攻撃を軽く見ていたジャックは、彼の懐への侵入を許してしまう。カグラのパンチが、ジャックの腹部へと放たれた。


ーーめりっ


確かにそう聞こえた。そして、あろうことか、ジャックの体は後方へと派手に吹き飛んだ。その出来事は双方にとって予想外のことだった。驚き立ちすくむカグラのもとに一人の男性側にやって来た。


「ジャックの愚行は儂も許してはおけぬのでな。助太刀させてもらうぞ」


そこにいたのは老齢の男性。八人の悪魔の一人で最年長の悪魔、シルバーだった。彼は手に持った杖で地面を叩いてとんとんと音を出しながら、にっこりと笑った。


「なにをした?」

「私の固有スキルは『不幸の杖』。この杖の先端で突かれた者の戦闘能力を著しく下げて、弱体化させる能力じゃ」


苦しそうに呻くジャックを見ながら、彼はそう告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ