第九章4 『学園攻防戦④』
鈴音は大きくあくびをした。
「はふぅ。話し合いなんて必要ないと思うのは私だけ?」
その一言を言うと、彼女はまたあくびをした。
「そうだ。とっても大事なこと忘れてた」
鈴音は口を開く。
「あなたの名前は?私は清浦鈴音だよ」
ジョーカーは、コホンとひとつ咳をすると、マントを翻して口にする。
「我が名はジョーカー。私は……悪魔だ」
「嘘。信じないよ」
「君といい、神山瞬と言い、どうしてこう事実を認めようとしないかね」
その言葉を聞いて今度は慧が反応した。
「神山瞬?どうしてあいつのことを知っているの?まさか……」
「そうだよ。神山瞬に直接手を下したのは、この私だ」
鈴音は一瞬大きく目を見開いて、声色を変えていった。
「そう。気が変わったわ。悪魔というのは信じましょう。話し合いに応じてもいいでしょう」
「感謝する。なら質問その一。きみは研究所のことをどこまで知っている?」
「知らない。私には知る必要がないもの」
「話し合いは終わり。戦いましょうか」
鈴音は片足を上げて、床を踏みつけた。
途端に、鋭い氷柱が次々と床から生えて、道を塞ぎながら二人の元に迫ってくる。
ジョーカーはまだ凍っていない廊下の壁を蹴って、鈴音の元へと詰め寄った。
すれ違いざまに、鈴音の襟元を掴み、力任せに持ち上げて地面にたたき伏せる。
「ぐっ」
「終わりだ」
ジョーカーはそのまま鈴音の頭に一撃を加えると、鈴音の意識は暗い底へと落ちていった。
◇◇◇
荘真の服が赤く染まる。
「ぎゃははは」
何度も何度も荘真は殴り続けた。
「やめろよ」
しばらく様子を見ていたが、乱は荘真の腕を掴んで制止させる。
葵はすでに頭から血を流して気を失っていた。
「何だ?怒っちゃった?」
「逆だ。感謝している。小言を言う女が消えたからな」
乱は不気味に微笑んでいた。
「ははは」
「なにがおかしい」
「彼女は俺の抑止力だった。二度とこんなことをするなって誓わされたんだけど、本人が見てないからさ、しちゃってもいいよね。……後悔させてやるよ」
「ぐふっ」
荘真は吹き飛ばされる。
「い、一体、何をしたっ!」
荘真が乱の方を見ると、そこには彼の姿がなかった。
「は?」
その時にはすでに乱は荘真の横に。しかも、荘真がいる空中に。
「ぐへっ」
再び謎の力で地面で吹き飛ばされる。
「しまった!この地面の下には……」
地面に掘り返した跡があった。そこはずっと荘真が立つのを避けていた場所だった。
爆発音。
荘真はそのまま逃げると、携帯電話を取り出した。
「ゆるさねえ。おい、飛鳥!この学校ごと、地面に沈めろ!お前の力ならできるだろ!」
携帯電話で荘真はそう指示する。しかし、飛鳥は断った。
『ごめんね、荘真。私も捕まっちゃった。てへ』
「なぜだ!お前はいったい誰に負けたんだ!」
『俺だよ。近衛荘真』
電話口に刻が出てそう言った。
「火渡……刻!裏切りやがったなあああ!」
荘真は壊れたように叫んだ。
「くくく……はあああっ」
嵐が来たような風が吹き荒れる。
「何しやがる、てめえ」
近くにいた乱は吹き飛ばされないように近くの木につかまった。
誰も近づけない強風の中、次第に風が弱まっていく。
見ると、力尽きた荘真が、眠るように横たわっていた。




