表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/81

第八章6 『雷炎の襲来⑥』

瞬に対して名を名乗ったジョーカーだが、瞬の態度が変わることはなかった。


「悪魔……か。ふざけるなっ!そんなファンタジー信じるか!」

「何を言っている?きみはそのファンタジーに現に足を突っ込んでいるではないか。君が今まで相手にしてきたそれがファンタジーではなくて何というのだ?」

「どうやら、その口を塞がないと黙らないらしいな。痛めつけてからたっぷり話を聞いてやるよっ!」


瞬は再び動き出す。

ジョーカーはすれ違いざまに攻撃を入れる、が、感触がない。あるのは、感電した時に感じるあのビリビリとした痺れだけだった。


(まずいな。本当に実体がないのか?)


ジョーカーが瞬の方を振り向くと、瞬は不敵に笑っていた。


「ずいぶんと面白い体をしてるんだね」

「そっちこそ、この攻撃を耐えうるとは。普通の人間ではないことは確からしい」

「だから悪魔だと言っているだろうに」


ジョーカーは焦った。

瞬の攻撃を耐えることはできるが、ダメージは決してゼロではない。このまま持久戦になると、負けることは目に見えている。だから、何かしら手を打たなければならなかった。


ジョーカーは辺りに散らばっていた、瓦礫を盾にしては攻撃をしのぎ、また、蹴りあげては、何かしらのダメージはないかと、瞬との攻防を続けていた。

しかし、それも自由にはできない。

地面には、感電して気絶している、慧や和音たちが横たわっている。攻撃方向を間違えれば、それこそとどめを刺してしまうことになる。それだけは避けたかった。


ここで一つの疑問がジョーカーの頭の中をよぎる。

和音たちはもともとこの場所にいたので、攻撃対象になるのはわからなくもないが、あとからやってきた慧たちを『敵』として判断する材料はどこにあるのか、と。

そこでジョーカーは思い出す。自分たちは、『メール』によってこの場所に導かれたのだと。


疑問を解消すべく、ジョーカーは尋ねた。


「それにしてもわからないな。君が我々を敵と判断する材料はどこにある?通りすがりの一般人ではないことがどうしてわかるのだ?」

「そんなのわかんだろ?犯罪者は、どこまでも追跡する。それだけだ。お前たちは『二週間前の大規模な戦闘』であの場所にいて、かつ、破壊活動が確認された人物、ということでリストアップされているんだよ」


それを聞いて、ジョーカーの頭の中には嫌な予感がよぎった。

二週間前にあの場所にいて、今この場所にいなかった人物がいる。慧が同行を許可しなかったからこの場所にいない人物がいる、と。


(これは、あまり長引かせるわけにはいかないかもな)

ジョーカーは一つの作戦を思いつく。

(少々荒っぽいが、一般人を人質にとるか……)


ジョーカーは、その作戦を実行に移すべく、地面に落ちていた、詩の召喚した拳銃を拾う。

そして、人質を探して、その場所から離れていった。


「おい、待て!どこに行く!」


案の定、瞬は追いかけてくる。

しかも、速い。

あっという間に追いつかれ、電撃を浴びせられる。


(ちょっと、無理があるか……)


ジョーカーは思った。

しかし、偶然にも、工場からそう離れていない、建物の陰に、一人の女の子の姿が見えた。


(なんであんな所に?まあいい。好都合だ)


ジョーカーは方向を変えると、その女の子の元へと急ぐ。

ジョーカーは知らなかった。

彼女の名前は神山菜種。瞬が工場に現れたとき、孝樹が真っ先に逃がした女の子だった。


ジョーカーは逃げようとする菜種を強引につかみ、瞬に見せつけるように拳銃をその子に突き付けた。


それを見た瞬は明らかに動揺していた。

しかし、何かがおかしかった。


「お兄ちゃん……」

その子が泣きそうな顔をしながらつぶやいた。

「菜種、どうしてここに?」

瞬も動きを止めた。


菜種は瞬の妹だった。


「ふははははっ。何だか知らんが、兄弟だったとはな!」

ジョーカーは笑った。


瞬は混乱しているのか、言葉が出なかった。

そして、最初に言葉を発したのは、妹の菜種だった。

「もうやめて。もうやめてよ、お兄ちゃん」

彼女は言った。

「私は心配してたんだよ。私はお兄ちゃんが傍にいてくれるだけで良かったのに」

「ただ……ただ、俺は菜種を守ろうとして……」


その話をジョーカーが遮った。


「すまんな。妹を守りたかったら、おとなしく言うことを聞くんだ。悪いようにはしない。俺を信じろ」

瞬は、それを聞いて叫んだ。

「信じられるか!早く菜種を解放しろ!」

「お兄ちゃん!」


ジョーカーは、そのセリフを待っていた。

「仕方がないな」

ジョーカーは、菜種から手を放す。

菜種は瞬の方に向かって走り出す。


そして、ジョーカーは、菜種の背中に向かって拳銃を向けた。


「やめろおおお!!」


瞬は、妹をかばうようにして、菜種に抱きつき、自らが盾になった。

もちろん、βベータイグニッションを解除しなければ、銃弾は貫通して妹に命中するどころか、自らのまとった電撃で、妹を傷つけてしまう。

だから、瞬はβベータイグニッションを解除した。

だから、瞬の体に銃弾は着弾し、瞬は叫び声を上げながら、地面に倒れた。

最後までその身を案じていた妹は、皮肉にも、兄の体に残った僅かな電撃を浴び、気を失った。


「素晴らしい兄弟愛じゃないか」


その場に立っていたのはジョーカーだけだった。


「悪く思うな。俺は……悪魔だ」


純は仮面を外し、その場を立ち去った。


◇◇◇


静かになった戦場で、ただ時間だけが過ぎていた。

しばらくすると、慧が起き上がる。


「一体どうなったの?」


慧の隣には、純が座っていた。慧は純に尋ねた。


「わからない。俺が目が覚めた時は既にこうなっていた」


純はあの後、瞬と菜種を、この場所まで連れてきて、誰かが起き上がるのを待っていた。


「これから、どうする?」


純は尋ねた。

慧は辺りの惨状を見て、答えた。


「とりあえず……救急車を呼んだほうがいいのかな?まあ、病院の方は、父さんのつてで、昔からよくしてもらっている医者がいるから、何とかなると思うけど」

「そうか。それなら良かった。じゃあ、おれは学校に向かう」


ほのかたちが心配だった。

瞬の話が本当なら、学校にいるほのかや真美も攻撃対象だからだ。


「へえ。もう体の方は大丈夫なの?」

「まあな。俺は丈夫だからな」


そんな会話を交わしながら、慧は、再度辺りを見渡して、首をかしげた。

「それより。刻くんは?居ないけど」

「さあな。いつの間にかいなくなってた」

それは事実である。

いつの間にか刻は姿を消していた。

純がこの場所を離れたときに、いなくなったと考えるしかなかった。



そうこうしているうちに、次々と周りの人の目が覚める。

慧は立ち上がると、みんなに告げた。

「とりあえず、救急車は呼んである。念のために、詩ちゃんとひかるn……くんはここに残っておいて。ボクたち二人は、学校へ向かう」

「お前も来るのか?」

「もう体の自由も効くし、大丈夫だよ」

慧は柔軟体操をして見せた。

「わかった」

「さあ、行こう」

こうして、純と慧は学校へと向かった。


◇◇◇


研究所にて。

火渡刻は、自力で研究所に戻って、キョウジュにありのままのことを話した。

「ご苦労だった。神山はどうした」

「おそらく、敵につかまりました」


刻は、戦闘の最後までは見ていない。しかし、戻ってこない所をみるとそう判断するしかなかった。


「そうか。下がってよいぞ」


キョウジュは言った。

刻は最後に口を開いた。


「進言します。援軍を送るのを考えておられるのならば、やめた方がいいと思います。負けたとはいえ、あいつらはそれほど危険なやつではないと思います。このまま様子見を」

「それは、彼らがお前の幼馴染だから……か?」


キョウジュは言った。


「知っておられたのですか?」

「当然だ」


キョウジュはつづけた。


「それに、そういうことはお前が考えることじゃない。心配するな。もうすでに近衛、清浦、泉の三人が神箜第二学園に向かっている」

「そんな……。今すぐ中止を!どうしてもと言うのならこの俺が!」

「その必要はない」


その時、研究員たちが、不自然に刻の周りを取り囲んだ。

刻は怪しいと思いながらも、何も仕掛けてこないので、どうすることもできなかった。

それと同時に、キョウジュに向かって、ずっと気にかかっていた『あること』を口にした。


「あとひとつ。水沢博士の行方はご存知ですか?この研究所に監禁されているという話が……」

「そうか」


突然、刻の周りの研究員が、拳銃を構え、刻に向けていた。

このとき、刻の疑惑は、確信へと変わった。


この研究所には、秘密がある、と。

そして、慧の言っていたことが正しかったのだと。


「キョウジュ。一体、いつから研究所は武装集団になったんですか?」


「ずっと前からだよ」


キョウジュが合図を送ると、刻を囲んでいた研究員たちの数人は、一斉に刻を拘束し始めた。


「そいつはもう実験サンプルとして役に立たないだろう。処分しておけ」

「くそっ!これだから大人は!やめろ。俺に触るな」


刻はどうすることもできなかった。刻は拘束されその腕に注射器をあてがわれる。


「やめろ。何をする気だ。うわあーっ!」


刻の意識は遠のいた。


◇◇◇


研究所に光のマテリアル、双葉真矢が訪れた。

「本当はお前がいけば良かったものを」

「ごめんなさい、キョウジュ。私はあんまり力を使いたくなかったから」


それを聞いて、キョウジュは不敵に笑う。


「そうか。まあ、今はそういうことにしておこう」


真矢が去った後、キョウジュは不気味な笑いを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ