表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/81

第八章3 『雷炎の襲来③』

巨大な二つのエネルギーがぶつかり合うその衝撃に、純は慄きながらも、次第に歓喜していった。


(これが……これが、俺の求めていた力、魔界の門を開くに足るエネルギー。まさか他でもない人間界にこんな力が眠っていたとは……)

そして、彼は改めて思った。

(是非とも、敵ではなく、味方として、その力を利用したいものだ)


純にとっては、慧の父親や研究所の方針などどうでもよかった。彼は悪魔である。ただ、魔界の門を開くだけのエネルギー源、そうなるだけの、利用価値があるかどうか、全てはそれだけだった。

だが、慧にとっては、元素融合体エレメントハイブリッドは父親へとつながる重要な手がかりであり、そんな慧は、光流たちにとって、困っている幼馴染であった。


そんな彼女たちは、純の裏の顔も露知らず。


慧は目の前に立ち塞がる一人の男、火渡刻を冷ややかな目で見つめている。

先程の刻が発した炎は、しばらくは彼の右手に宿っていたが、次第に落ち着いて消えていった。


「これは驚いた。元素エレメント持ちがいたとは。しかも、水とは実に相性が悪い」

刻は、慧を見てそう言った。

「そんなこと……言ってる場合じゃない!」

慧は叫ぶ。

「刻。お前は知っているのか?この力の仕組みを」

「知るか、そんなもん!そんな難しいことわかんねえよ!バカにしてんのか!」

「じゃあ、降参して?」

「……」


刻は何も言わなかった。

慧は、チャンスだと思ったのか、ちょっと借りるね、と、純の手から拳銃を奪うと、それをポケットにしまって、刻の方へ向かって歩き出す。

一歩ずつ進むたびに、地面にできた水たまりが、水滴を跳ね上げ、波打っていた。その音が、決断を迫るカウントダウンのようにあたりに響いた。


「……降参はしない!」

「……今一瞬迷ったよね?」


慧は間髪を入れずに返した。


「うるさい!俺を降参させられるほどの強さがあるのなら、力づくで降参させてみろ!果たして、お前にどこまでできるかな?」


刻は、もう一度手を横に振る。慧は刻まであと三メートルほど、というところで、大きな炎に包まれた。しかし、水の元素エレメントを操る慧にとって、それは目くらましにしかならない。あっという間に鎮火される。


もう一度、開けた目の前を確認するも、そこに人影はなかった。

刻の姿が消えた。そして、慧の目の端に映るゆらりと揺れる一つの影。


「そこかっ!」


慧は右側に向かって拳を振り下ろす。

狙い通り、確かに、刻の姿はそこにはあった。


しかし、刻の動体視力は慧のそれをしっかりと捉え、難なくかわす。彼はその隙に慧の懐へと潜る。

「ごめんな……」

そう呟きが聞こえた後、めりっ、と音がして慧の腹部に重いものがめり込んだ。


「ぐっ……あ……」


慧は、地面に跡をつけながら、後退した。苦しそうに呼吸をする。だが、倒れはしなかった。

それに驚いたのは刻の方。腕っぷしには自信があったのか、ひどくあわてた様子だった。


くそっ、っと悪態をつきながら、もう一度慧に向かって拳を振り上げる。

だが、二度目は空を切る。

慧はそれをしっかりとよけたのだ。よけながら左手でその突き出された腕の手首をつかむ。そして、右手は刻の胸ぐらへ。背中を向けてその体を乗せ、そして思いっきり振り落した。

背負い投げだった。


「刻。これは昔キミから教えてもらった」

そう言いながら、腰にしまった拳銃を取り出して突きつける。

「今ここで炎を出すと、暴発しちゃうかもね。だからやめてね」

慧は刻に向かって言った。

慧は落ち着きを取り戻すかのように深く息を吸った。

「要求その一。今すぐ戦闘を中止させること。そして要求その二。研究所の場所を教えること。できなければ、……どうしちゃおうかな?」


慧は拳銃をさらに押し付けて、返事を促す。

しかし、刻の返答は小さな声だった。

「どうして、お前らなんだ……」

「ん?」

慧は聞き返す。

「どうしてお前らなんだって言ってんだよ。俺の強さはこんなもんじゃない!お前らが相手だといつもの調子が出ない!」


そう叫んで、刻は慧の腕を掴み、捻る。その隙をついて、足を使って慧を横に押し倒すと、今度は刻の方が馬乗りになった。


「なぜ、そんなに強さに固執するの?」

立場が逆になりながらも、慧の瞳はしっかりと据わっていた。

刻も面白くないのか、なんだかイライラしているようだった。


「俺が強さに固執するのには理由がある。小さい頃は、俺はお前らみたいに頭の回転が速くなかった。だから、幼き日の俺は己の強さこそが、大人に対抗する唯一の手段だった。それは今でも変わらない。強くあることがおれの存在証明であり、誇りであり、行動原理だ。そんな俺の強さを、研究所は、キョウジュは、認めてくれている。だから俺は……ここにいるんだ」


「だから、何?」

慧は涙を浮かべていた。

「そんなの関係ない。もし、父さんが死んでたら、お前たちのせいだからな。父さんが死んだら、家族を支えるものがなくなっちゃうじゃないか……」

それを聞いて、刻は黙った。

「いいから降参して、ボクたちに協力してくれないか?」

刻は迷っている様子であった。そこに、一人、光流が声をかけた。

「刻。聞こえるか?」

光流は刻に語りかける。


「お前は十年前、子供にしては異常なほどに強かった。そして、その強さを必要としたのが、クロであり、守護神ガーディアンだった。お前はただ、自分の強さを生かせる居場所を探しているに過ぎなかった。誰しもみな、自分が必要とされている場所は居心地が良いものだからな」

「うるさい!」

不安の表れなのか、自然と声が大きくなる。

「もとをたどれば、光流、お前があの日、あんな危ない場所に行こうとしなければ、クロは死なずにすんだんだ!そしてら、俺たちの守護神ガーディアンはあんな形で崩壊はしなかった!お前の自分勝手な行動で、どれほどのものが失われたか……」

光流は黙ったままだった。

「何か言えよ!光流!」


光流が口を開いたのはしばらくした後だった。


「俺は……愚かで、わがままで、無価値だ。同じ過ちを繰り返すし、なんの成果もあげられなかった。その事実を否定もできないし、自分から否定するつもりもない。でも、俺は思った。俺は開き直るしかない。クズはクズなりに、自覚しながら、歩いていくしかないんだ!だって、人間ってそう簡単には変われない!」


光流のその言葉に何を思ったのか、刻は再び火を灯す。


「紅格子、弾けろ炎!」

整然と空中に並んだ多数の火の玉が、光流を襲う。しかし、光流は動じない。

「成長しろ。火渡刻」

光流は携帯電話を取り出す。

「そして、これが成長というものだ」

画面が光り、光流の口が動く。

「詠め。その正義のために、無二の形が必要ならば、名を与えよう。喰らって、邪を打ち滅ぼす力と為せ。現実召喚リアライズ。名は『蒼き焔炎の青龍アークレイトレイン』!」


巨大な青い龍が、空を覆い、その吐息にあたりの炎は青く変わった。


「炎夢」


刻の赤い炎を光流の青い炎が包み込み、刻の視界は青く染まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ