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第八章1 『雷炎の襲来①』

《ボーン》

それはしゃべる頭蓋骨。それは人間に不思議な力を与える黄泉世界からの使者。

契約を結べるのは一人一体。しかし、能力を発揮できるかどうかは、本人の死の依存度による。善人の手に渡れば、心強く、悪人の手に渡れば、厄介。そんな代物。

そんなボーンの所有者で現在頂点に君臨するのは、藤宮大吾、中学二年生。レベルは六。先の騒動でも、撃破数は四と大活躍した。しかし、彼は残念ながら、味方ではない。彼にとっては時空の歪み、及び、それに関連して発生する事象は、全てゲームだった。ゲームとは主人公視点で常に進むもの。だから、大吾にとって彼自身が主人公で他はサブキャラクターだった。


次点で浦川孝樹が続く。孝樹は和音と二人三脚で多数のボーンの所有者をまとめている。彼は一度大吾にボロ負けした過去があるが、その際の勇姿や本人の気遣いの良さから、自然と周りに慕われていた。その結果、一人で集団をまとめていた光流とは対照的に、協調性を重視した集団づくりになっていた。


そして、その他の人はボーンの所有者ではあるが、ほとんどがその能力を使ったのは皆無。幸か不幸か、先の騒動での戦闘の結果、全体的にレベルアップが行われ、孝樹も和音もレベル五になっていた。そんな話が判明したのが、つい、さっきのこと……。


「いぇ~い!今日は私の奢りだよ!とか言ってみる~。わん!」


このメンバーではいつものお菓子パーティーだった。和音を含め、みんなは円形に座っている。あぐらをかいた孝樹の足の上には小さな女の子、神山菜種がいた。彼女は兄の行方がわからず、その手がかりを求めてここに来ていた。戦ったことはなくレベルはゼロ

孝樹の隣には石河奏楽。堅実な性格で、好青年な彼は、誰とも対立することもなかった。そのせいか、雑用をこなすような役回りを演じるようになっていた。レベルは三。

そしてもちろん、それぞれの手に、ボーンを抱えている。


「君は良いムードメーカーだね」

奏楽はにっこりと笑って言った。

「うん!元気がいいね、ってよく言われるよ。えへへ」


和音はピースをつくって、奏楽に見せつけた。


「元気というか、能天気だね、お姉さん」

「はあ?ちょっと!」


少し離れた場所にいた大吾。そんな和音に向かって辛辣な言葉を放った。


「もお~。大吾くんもそんなとこにいないで、こっちにおいでよ」

「いいんだよ、わんこ。放っておけ。中坊っていうのは他人と馴れ合うのを嫌う、そういう年頃なんだよ。なあ?」

「はあ?お兄さん、僕に無様に負けた手前、あんまり強がったこと言わない方がいいと思うけどな。レベルがひとつしか違わないけど、調子に乗らない方がいいよ。もう一度ボコるよ」

「へいへい」


和音は円状に並んだ一人一人の顔をもう一度見て、元気よく言った。

「と、いうことで!今日は労をねぎらうっていう意味で、乾杯!」


和音の声が部屋のなかに響く。

そこにいるのはただの友達同士のようで、実はボーンという奇妙な繋がりを持った『戦うこと』、そういう権利を持った集団。それは正しいようで、どこか間違っている。

だからもちろん、それに反抗する集団もいるわけで。


そんな和音たちを、冷めた目で、その瞳の奥に、憎しみのような感情を抱えた一人の男が眺めていた。


◇◇◇


「ところで、皆さん。元素融合体について知っている人はいませんか?」


和音がゴミの後片付けをしながら、その場にいるみんなに聞いて回った。ここからがある意味の本題。和音たちがいる場所は人が多く通るような場所ではない。ボーンを持った彼らは騒動にならないように、集まる場所はいつも町外れ。それは仕方がないこと。


時空の歪みで起きる変化は、誰かを悪役にして誰かをヒーローにするものではない。


ボーンだって和音や孝樹のように使うタイプと、大吾のように使うタイプがいる。女神の力だって、その限りではない。それは元素融合体も同じこと。彼らは慧の父親を誘拐した。その事実だけで、十分に不信感を募らせる。いくら正義をうたっていようと、水沢慧という女の子にとっては敵なのだ。


「慧ちゃんのお父さん見つけてあげたいもんね。そしてどこにいるかわからないけど、菜種ちゃんのお兄さんも。ねぇ、ボーン。何か手掛かりはないのかな?」


ボーンはわからない、というような返答をした。

彼女たちだけではない。光流も然り、詩も然り、『力』を持つものたちの次のターゲットは、元素融合体だった。結局のところ、それは慧のためでもある。真島純、もといジョーカーただ一人を除いて。それは彼女が幼馴染みだったから。彼女が困っていたから。

そんなことをみんなに話しているときだった。


バチッ


外で何か音がした。何かが焦げるような臭いが鼻につく。和音は首をかしげて、何だろうという表情をしたあと、その音のした方へ足を向けた。次の瞬間……


バチッ、バチッ、バチッ、バチッ


聞こえてきた大きな音にビックリして、思わず耳を塞ぐ。

『異常事態』

そんな四文字が脳裏をよぎった。

破壊されたのは壁だった。大きく開いた穴をくぐって一人の男が姿を見せた。壁を壊してきた目の前の男が普通の人間のはずがない。彼が右手に持っていた鉄パイプを投げ捨てる。カランカランと音が響いた。


「はじめまして。この世界の秩序を乱す輩に、それ相応の罰を……」


男は辺りを見渡していた。人数を確認しているようだった。目の前の状況は一対多。けれども、動じないのは自分の力に自信を持っているから。彼の名前は雷の力を持ったマテリアル、神山瞬だった。


「こちらとしても無用な戦闘は避けたい。降伏する人がいるなら、今ここで申し出ろ」


神山瞬は、両の手を開くと、バチバチバチッ、とその間に電流を発生させた。脅しにも見える。そこから発生する光は瞬の顔を、不気味に照らしていた。

和音たちは息を飲んだ。一歩後ずさる。しかし、降伏はするつもりは最初からなかった。孝樹は大吾に視線を送る。大吾は、本当に良いんだな?というような表情をしながらも、戦いたそうにうずうずしていた。孝樹は頷く。


「変身」


大吾は自分のボーンを取り出してそう呟くと、いつもの衣装を身に纏った。首を左右にコキッコキッとまわして、準備を整える。その間に、それに気づいた瞬も、不機嫌そうな顔をした。そして……


砲撃ゼブル!」


緑の閃光。着弾点は若干斜め下。ギャンッ、という音と共に破壊されたのは、瞬の足下の地面だった。すぐに舞い上がった破片と土煙が瞬にぶつかる。

その間に、孝樹は菜種だけを安全を確保するため、遠くに逃がした。

その他の人は迅速に変身を行う。


「行くよ!」


それが掛け声だった。

大吾は『飛行グロリア』で、瞬の真上に飛んだあと、一直線に下降。そのまま瞬を狙い打つ。しかし、銃口を真っ直ぐ下ろしたその先に、見えたのは両手を高く掲げた瞬だった。土煙が晴れ、上の方から少しずつ彼の姿が見えてくる。


「どの方向から攻めてこようと関係はない!話し合いは決裂した!後悔するのは君達の方だ!」


バチバチバチッ、と手のひらに電気を溜める瞬。次の瞬間、彼の手を中心として、全方位に放電が行われた。直撃した壁が黒く焼け焦げて、少し煙が立ち上る。遠くにいた和音たちのところにも届いたその電撃は、辺りのものを容赦なく破壊する。その真上にいた大吾も例外ではない。


「うわっ、あぶねっ!」


大吾は急遽、方向転換をした。しかし、逃げられるはずもなく……


「ぐっ……ああっ!」


ボーンの衣装で保護された体であっても、そのしびれは十分に体に響く。一瞬、痙攣を起こした大吾の体は、すぐに回復はするが、飛行の羽根は消えたため、仕方なく着地する体制になった。ざっと地面に着地した大吾のその目は、恨めしそうに瞬を見据えていた。


「丈夫だねぇ、君たち。ますます嫌いになりそうだ」

「随分と、余裕な表情を見せてくれるじゃないか?ムカつくんだよ、そういうの」

「余裕?そうだね。実際問題、それくらいの戦力差はあるもの。わからないのなら、すぐにわからせてあげるよ!」


バチッ、と再び音がした。それは瞬の足元から。

電気の反発。それを利用した移動方法だった。どんどん加速して、あっという間に大吾と距離を詰める。気を引き締めて、斬撃ゾニアと叫んで召喚された、大吾の大剣とぶつかるのは、電気を纏った瞬の右腕。だが、電気の反発で接触はしていない。


それだけではない。さらに、刀身を伝ったその電気の衝撃で、大吾の手から剣が弾かれた。


「クソ!この野郎ーッ!」


自棄になった大吾は、右足で瞬の側頭部を狙う。しかし、軸足となった左足、それを軽くあしらわれて、思いっきり回転しながら転倒した。受け身が上手にとれなかったのか痛そうに表情を歪める。間髪をいれず、瞬の右手が大吾を狙った。大吾も負けじと、寝た状態のまま両足で瞬の胴体を挟んで横に押し倒す。

その結果、今度は瞬が下、その間に起き上がった大吾が上になった。


砲撃ゼブル!」

「……雷撃」


近距離でぶつかる二つのエネルギー。一瞬、相殺されて音が消えた、と思ったが、次の瞬間、大吾の銃口が爆発。そのまま大吾は真上に吹き飛ばされた。天井に届くかというような高さだった。ドスン、と地面に叩きつけられた大吾は、そのまま動かなくなった。


そして、瞬はゆっくりと立ち上がる。服をはたく。そして彼は和音たちの方を見て、どうだ、と言いたげな表情を見せた。ボロボロの大吾に対し、彼は無傷だった。


和音は孝樹の顔を見る。孝樹も和音の顔を見て頷いた。そして……


「行くぞ、わんこ!」

「うん、孝樹!」


「「束縛キューズ!!」」


声を揃えた二人の手から、長い鎖が繰り出される。

左右から挟み込むように、綺麗にしなって、瞬のもとへと伸びていく。瞬はそれを見て少しだけ笑った。彼は少しだけ膝を曲げると、バチッという音と共に、垂直に、まっすぐ跳び上がる。対象を失った鎖は、互いに絡まり合うしかなかった。


二人の視線を集める中で、空中に浮かんだままの瞬。しかし、彼は、再びバチッという音を発すると、急に方向転換を行った。そして、着地地点は孝樹の頭の上。


「孝樹!」


和音が叫んだ。人一人が乗った重みで、頭を垂れた孝樹にはよく見えなかったかもしれない。しかし、和音にははっきり見えた。片足を膝の辺りまであげて、まるでサッカーボールを蹴るような体制になっている瞬の姿を。


ガツン、というような鈍い音が響いた。孝樹はそのせいで意識が朦朧になる。


砲撃ゼブル!」


和音は急いで孝樹を助けようと、乱射を行う。しかし、盾のように繰り出される雷撃の雨に塞がれて、届かない。どうしようもない。

一方、続けて孝樹は腹部に膝蹴り、そのうえ腕を捕まれて投げ飛ばされた。壁に叩きつけられる。


「ぐ……はっ……!」


横に置いてあった鉄パイプが崩れ落ちて、孝樹の体は更に痛め付けられる。

瞬は孝樹のもとへとゆっくりと歩み寄る。それを和音はただ見つめているしかなかった。孝樹はまだ意識はあるようだった。首をゆっくりとあげ、瞬に焦点を合わせるように、目をピクピクさせた。体を起き上がらせる気力がないのか、首から下は、手先が少し動くだけである。


「もう……やめてっ!」


和音は再び叫んだ。しかし、瞬の歩みは止まらない。

孝樹の変身は既に解けている。それほどのダメージを受けている証だった。瞬は孝樹の所にたどり着くと今度は彼の懐を探り始めた。そして、取り出したのは携帯電話だった。


「これこれ。君たちだけじゃなく、君たちの仲間にも制裁を加えないといけないんでね。緊急召集をかけさせてもらうよ。まあ、来てくれるかわからないけど。来てくれるよね?仲間がピンチなんだし」


瞬は画面を操作すると、送信ボタンを押す。

その様子を見て、孝樹は瞬に手を伸ばそうとしていた。小さな言葉で何かを呟いている。瞬は不愉快そうな表情をした。次の瞬間、バチッと音がして、孝樹の腕が力無く崩れ落ちる。それ以降、孝樹はピクリとも動かなくなった。瞬は持っていた携帯電話を投げ捨てる。


「さあて、援軍が到着するまでの次の遊び相手は……」


瞬はそう言いながら、和音のもとへと方向を変える。その時だった。ガタッと音がした。メールを送った時間から考えて、援軍が到着するまでにはまだ早い。見渡すと、一人の男が起き上がっていた。


「はあ……はあ……」

「大吾くん……」


和音は驚いた。大吾が手で膝を支え、肩で息をしながら、立ち上がっていた。しかし、和音がそう呟いたことで、別のところでも変化が起こっていた。それは神山瞬。瞬は和音の言葉を聞いてなぜか表情を険しくしていたのだ。


「だい……ご?もしかして、貴様、藤宮大吾か?」

二人は不思議な顔をする。

「そうだけど?だから何?」

大吾は自分から認めた。それを聞くと瞬は人が変わったようにクックックッと笑い始めた。


「そうか。それなら良かった。覚えているか?お前が一ヶ月前に起こした事件が、全ての始まりなんだよ。いわばこれは……復讐だ。このまま浅い傷で帰れると思うなよ」


「へえ、それはご苦労なこった。僕もたったいま『新しい技』覚えたみたいだから、使わせてもらうよ。あんたなら練習台にちょうどいい」


「第七の技、大腕メノス!」





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