第四章4 『黄泉世界サイド②』
「一番強いやつがリーダーだったよね?」
大吾が和音を抱えたまま、みんなを見下してそういう。大吾は第四の技、飛行で空を飛んでいるため、誰も近づけない。大吾の眼下で大剣を持った男たちが恨めしそうに眺めている。
「争うのはやめようよ、みんな!」
「でも、先に手を出したのは向こうだよ。」
一触即発の空気に、和音は必死に介入するが、大吾を含め聞く耳を持つものは少なかった。むしろ大吾からは積極的に戦いたい様子を感じ、その口実ができればいつでも良いという感じだった。孝樹に助けを求めようと視線を下に移したが、逆にバランスを崩して落ちそうになる。大吾は腕の力を入れ直し、体制を整え直す。
「あんなに大人数だし、両手塞がってるし、今の状態じゃ戦っても勝てないよ。」
「大丈夫。今の僕はレベル6だよ。負けないよ。」
和音は驚いた。大吾はいつの間にかレベル6まで成長していたのだった。次にレベルが高いのが、おそらく和音のレベル3であるから圧倒的な力の差である。
「ちょっと待ってね。いま一掃するから。レベル6の力を見せてあげる。」
そう言うと大吾は息を深く吸い、目を閉じて唱えた。
「第六の技、爆撃!!!」
地面が揺れたかと思うと、赤い炎が地面から上がる。もちろん大きな爆発音を響かせながら。あまりの衝撃に和音は目をつぶる。しばらくして煙が晴れると、そこにいたほとんどの人は変身が解除され、地面に横たわっていた。
「ちょっと!?やり過ぎ!!」
「大丈夫だよ。超過した分のダメージは全てボーンが引き受けてくれる。この前の僕がそうだったからね。でも確かにちょっとやり過ぎたかな。ここまで大規模にやるはずじゃなかったんだけど…」
ざっと見る限り、防御が使えないレベル1以下は強制解除で脱落したことになる。その数は三十人ほど。その人たちはボーンも破壊されていれば、もう二度とボーンの力は使えない。残念なことに初日にして過半数とはおさらばだった。
大吾は和音を下ろしに地上に降りる。和音は降りて辺りを見回すと、離れた壁の所に孝樹の姿を見た。孝樹は防御を発動させて攻撃を防いでいた。だが何だかいつもと様子が違う。
「おい、どういうつもりだ。」
孝樹が言った。一歩ずつ大吾に近づいてくる。その後ろには座り込んだ幼い少女の姿が見えた。どうやら庇っていたらしかった。
「どういうつもりって、売られた喧嘩を買っただけだけど。」
「俺は喧嘩売ってねえぞ。他にも関係ないやつはたくさんいただろ。」
「そう、ごめんね。巻き込んじゃって。」
いかにも軽い謝罪に孝樹は動きを止める。そこからひしひしと怒りを感じる。しばらく黙っていたが、顔をあげると口を開く。
「強い方が、リーダーだったよな?」
「そうだね。」
大吾の返答を聞くと、孝樹は大きく一歩を踏み出し、斬撃を発動させた。その間は一瞬だった。あまりの速さに大吾も体を後ろにそらせて、ギリギリでしか、かわせなかった。
「…はやいッ」
孝樹はそのまま大剣を下に降り下ろす。地面へとめり込み、砂ぼこりを巻き上げる。大吾は今度も何とか避け、危機を感じたのか、ジャンプして距離をとった。
「こうこなくっちゃ。」
大吾も斬撃を取りだし、孝樹に向かって構える。そして、地面を蹴る。
「ハァーッ!!!」
孝樹に近づいたかと思うと、大吾は急激に速度を落とし、持っていた大剣を半回転させて地面に向かって刺し、そのまま削り取る。そしてそれをそのまま孝樹に向かって振り上げる。
「爆撃!!!」
爆撃の効果も付加されてたため、爆発音とともに、爆風と赤い炎が孝樹を襲う。
「やめろーッ!」
和音が叫ぶ。和音は砲撃を大吾の方に向ける。そのとき大吾は飛行で空中に上がっていた。大吾は和音に気づくと持っていた大剣を一直線に向けて投げてくる。和音はそれに向かって発射したが、わずかに外れてしまう。そのまま大吾の大剣は和音の体をかすり、体の装備を破壊した。一方で和音の放った攻撃は大吾からは大きく外れ、工場の壁を破壊した。
その音を合図にするかのように防御で攻撃を凌いだ孝樹は、再び姿を現す。大きくジャンプして空中の大吾へと距離を縮めた。しかし、大吾は余裕の笑みを見せると、ギリギリまで孝樹を惹き付け、繰り出した砲撃を孝樹の体に密着させる。
「砲撃!!!」
眩しい光が和音の目にうつる。近距離からの砲撃を受け、孝樹の体は回転しながら勢いよく落ちていく。壁に激突すると、孝樹は動かなくなった。
「どうして?どうしてこんなことするの?」
和音はふらふらと立ち上がり、大吾のもとへ近づいていく。その足元には、さっきまで一緒に楽しく騒いでた人が倒れこんでいる。それをよけながら和音は力なく歩く。
「全部きみのせいだよ。お願いだからもう邪魔しないで。」
和音が泣きそうな声でそう言うと、大吾は少しだけ悲しそうな顔をしたが、結局なにも言い返すことなく、その場から立ち去っていった。一人残された和音は膝から崩れ落ちた。
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廃工場を離れた場所から観察する影が二つあった。浅海葵と久慈原乱だった。葵は銃を構え、照準を工場内の窓付近に合わせている。そのようすを乱は物珍しそうに見ている。
「はぁ。いつまでここにいるんだよ。中に入って、暴れてそれで終わりだろ?」
「大事なのはバランスを取ることよ。余計なことはしない。」
先程、工場内で爆発があったあと、しばらく争ったような音が聞こえたが、それ以来静かになっている。
「このまま何もしないで終わりかよ。」
「工場に爆弾を仕掛けておいたんだけど、何かの拍子で爆発したみたい。まあ、結果としてほとんどの人がやられちゃったみたいだから結果オーライかしら。」
争いの音が聞こえなくなって気が済んだのか、葵は道具の片付けを始める。片付けといっても、戦士の力で具現化した道具のデータを消去するだけだったが。しかし、そこでいつもと違う風の動きを二人は感じる。二人はだんだんと強くなる風に視線を凝らして意識を集中させた。するとそこに一人の男が浮かび上がる。風の中から現れた男は言った。
「爆発があったみたいだから来てみたんだけど、こんなとこで何してるのかな?」
葵は表情を崩さない。この状況でこの人物、それに風。その男に心当たりがあった葵は尋ねる。
「あなた、もしかして元素融合体なの?」
「そうだよ。」
三人の間に緊張が走る。乱は携帯電話を構えて戦闘がいつでもできるように構えた。しばらく動きはなかったが、それを破ったのは、元素融合体の男だった。
「やっぱりやめた。僕だってこれで今日四件目なんだよ。いい加減疲れたし、見逃してあげるよ。命拾いしたね。」
男は風を吹かせてまたどこかへ消えた。




