第四章3 『黄泉世界サイド①』
「はい、みなさん。注目ー!」
光流が二次元世界の力を手に入れた人を集めた少しあと、今度は和音たちが黄泉世界の力を手に入れた人たちに召集をかけた。ここはその集合場所に指定された場所、廃工場だった。集まったのは全員で四十人ほどで和音が思っていたより意外に多かった。その中には和音よりも年上に見える男性や、まだ小さい女の子などいろいろと混じっている。もちろん浦川孝樹もこの中にいるはずだが、ぱっとみるだけではどこにいるのか和音にはわからなかった。和音はみんなより一段高い場所に立って呼び掛ける。
「皆さん骸骨は持ってますか?まあ、持ってますよね。」
そこにはボーンの姿がちらほらと見える。和音のボーンがあっちの世界から呼び寄せたものだった。
「皆さんはこれを使って、変身できます。そして戦えます。以上です。詳しいことはメンドくさいから自分のボーンに聞いてね。ちなみに自慢じゃないけど私のレベルは3でこの中で一番高いと思います。」
和音が自分のボーンを振りながら、大雑把に説明する。和音の性格を考えれば、妥当な説明だったのだろう。和音の説明が終わってから和音は入り口の方から何かカラカラという音がしているのに気づく。不思議に思ってそちらを見るとそこに現れた人物を確認できた。浦川孝樹だった。孝樹はカートに山ほどのお菓子やジュースを入れてこちらに向かってくる。
「やあやあ、皆の衆。今日は忙しいのに集まってもらってごめんな。せっかく集まったんだし、ただの話し合いだけじゃつまらんだろう?いっぱい持ってきたから、こんな場所だけど、楽しくやろうぜ。」
「グッジョブ、孝樹!」
和音は先程いた場所から飛び降りると、一番に駆け出した。それを合図として今まで静かだった工場内も、一気に賑やかになる。和音は一人で両手一杯に抱え込み、孝樹はカートの中のお菓子をそこらじゅうに投げて配った。もちろんその輪には入らずに一人で端に座っている人もちらほらいたが、これでみんなの距離が一気に近づいたことに変わりはなかった。
「パーティーパーティー!」
「おい、酒はねえのか?」
「酒はねえよ。」
「お前、俺の盗ったろ!返せ!」
しばらくは何の集まりかを忘れるほど盛り上がり、その中心としては和音よりもむしろ孝樹が目立っていた。しかし、孝樹は本来の目的を忘れているわけではなかった。お菓子を配りながら一人一人の顔をしっかりと覚えていったし、あんまり仲が良さそうではない人を仲介して間を繋いだりした。そして孝樹は工場の隅にうずくまっている女の子を見つける。
「そんな所でどうした?食わないのか?」
孝樹はその女の子にお菓子を手渡す。
「お兄ちゃん…」
その女の子は呟いた。
「私のお兄ちゃんはどこ?返して。」
孝樹は何のことかわからなかった。それでも彼女は涙目で訴えてくる。孝樹もなにかおかしいという感じがした。孝樹も真面目な表情になる。
「俺には心当たりがないんだけど、よかったら詳しく話してくれないかな。」
「…お兄ちゃん少し前に急にいなくなったんです。待ってたんだけど帰ってこなくて。これはお兄ちゃんの携帯電話。一週間くらい前にメールがあったから、見てみたの。」
恐らくそのメールはあのチェーンメールのことだろうと孝樹は察した。
「それで何か関係があるかと思ってここに来ました。関係…ないんですか?」
孝樹は少し困った顔をする。
「まあ、関係はあるかもしれないけど、関係ないかもしれない…でも心配すんな絶対に見つかるから!それまで俺が協力してやる!」
心配かけないように孝樹ははっきりと言い切った。彼女も緊張した表情から少し緩む。
「名前は?」
「神山菜種」
「俺は浦川孝樹。よろしく。」
こうして二人は仲良くなった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「皆さんもご存じの通り、今世間では元素融合体という存在が私たちを狙ってます。世間的には私たちは悪となっていますが、彼らも私たちも目的は同じです。それは時空の歪みによる被害を最小限にすること。だからみんなで協力して乗りきろう!」
和音の説明が再び始まった。今回は前回のように重い空気ではなかった。
「そうだそうだ!」
「元素融合体がなんだ!」
それぞれが思い思いの叫び声をあげる。和音も嬉しそうにそれに乗っかる。そこはすでにひとつの集団として十分にまとまっていた。孝樹も嬉しそうな顔をする。
「ところで、リーダーは誰にする?」
誰かがそう言った。そこから少しずつ雰囲気が変わっていく。
「やっぱ、強いやつがリーダーじゃね?」
「じゃあ、レベル3のあの子?」
「でも、レベルが高くても強いってわけじゃなくね?」
「ここで戦って決めればよくね?」
「そうだな!」
和音もそんな空気を感じとる。大吾の時の思い出がよみがえる。しかし、そんな和音の気も知らず、一人、また一人と自分のボーンを取り出した。そして迷うことなく変身した。まだみんな、ボーンを手にして日が浅いのだ。初めてだった人もいるかもしれない。
「やめてよ!」
和音が不安になってそう呼び掛けても、やめるものはいない。
「しょうがないなもう!」
仕方なく和音もボーンを取りだし、変身する。ここにいる人は、多くがレベル0か1。近距離攻撃しか行えない。そう考えた和音は第三の技、砲撃を装着し、天井へと発射する。和音には威嚇のつもりだったが、それが不味かった。一気にみんなの注目を浴びた和音が、攻撃対象に変わるのにそう時間はかからなかった。
「「斬撃!!!」」
「え、え、ちょっと!」
至るところで声が聞こえる。急な出来事に和音はあせった。和音はみんなの中心にいたため、攻撃は全方位からやって来る。飛行能力もない和音にとって逃げ道はなかった。
「きゃあ!?」
…急に壁が破壊される音がした。和音の体が宙に浮く。一番驚いたのは和音だった。誰かが和音をお姫様だっこして空を飛んでいた。砂煙でしばらくその姿を確認できなかったが、心当たりは一人しかいない。
「ヒーローは遅れて登場ってね。助けに来たよ、お姫様。」
「大吾くん?どうして?」
そこに姿を現したのは藤宮大吾だった。




