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第三章3 『元素融合体』

世間に発表された元素融合体、別名エレメントハイブリッドの詳細は以下の通りだった。火、風、氷、雷、木、土、水、鋼、光、闇の十種類があること。その力の所有者は自分の持っている元素の生成及び操作ができること。利用目的は時空の歪みによって生じるこの世のものではない存在の殲滅。そして一番重要なのがこの力が政府公認の力であること。つまり世間的には元素融合体が正義で光流や和音の力が悪なのだ。しかし光流も和音も目的を同じとするところ。そう簡単に力を手放すわけにもいかない。力を手放すわけにはいかない理由は他にもある。まず、本当に現在の科学の力で開発可能な力なのかということ、そしてタイミングが良すぎること。純は何か裏があるのではないかと思わずにはいられなかった。実際、詳しく調べようにもニュースで流れた情報以外は全くわからなかった。


この力は世間の関心、取り分け若者の関心を集めた。ネットでも様々な憶測がなされ、時空の歪みという単語から一年前のチェーンメールとの関連に気づくものもいた。他にも純の立場から言えば、浅海葵の存在、藤宮大吾の復活、さらに八人の悪魔の登場がさらに頭を悩ませる。そして事態は更なる展開を迎える。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ーーー神箜第二学園生徒会室、放課後


そこには真島純、天野光流、そして灯月和音が集まっていた。もちろん元素融合体の出現を受けての集合である。数人の関係のないものも部屋の中にはいるが隠す意味はもはや無い。ただこの事を一番知りたかったであろうほのか本人はなぜかいなかった。


「ねえ、どうするの?私たちやっぱり手を引いた方がいいんじゃないかな。私たちも攻撃の対象になっちゃうよ。」


和音が心配そうな顔で尋ねる。だが、純はそんなことは考えていなかった。


「時空の歪みの詳細がわからない以上、ちからが一つに片寄るのは良くないと思う。おそらく元素融合体も新しい力だ。扱いきれずに暴走するかもしれない。そのための抑止力として俺たちの力は必要になると思う。むしろ逆に力の拡充を図るべきだとおれは思う。」


「何を言っている。もし力の拡充を図って、藤宮大吾みたいなやつの手に渡った場合もっと大変なことになるんだぞ。」


光流は言い返す。


「わかってる。だからまずは確実に信頼できる人物に協力を仰ぐ。少しでも信用のできない人物に協力を求める場合は、すぐに力の解除ができるような状態にしておく。」


「それは…そうだけど。」


光流は口をつむぐ。信頼できる人間なんていないと言いたかったのかもしれない。ただ、その時ちょうど生徒会室の扉が開き、皆の視点はそちらに向かうことになった。


「信頼できる人間なら、ここにいる。」


扉の向こうには、連城ほのかが立っていた。ただそこにいるのは彼女一人だけではなかった。その横には純の見知らぬ男が一人確認できる。彼は部屋の中を確認すると、急に笑顔になって、飛び込んできた。


「久しぶり、光流!そして、わんこ!元気だったか?」

「ちょ、孝樹か?どうしてここに?」


孝樹と呼ばれたその男は、純には脇目も振らずに光流、和音のもとに駆け寄る。二人も驚いたような、嬉しいような表情になる。


「俺だけじゃないぞ、ほら。」


二人は指の指された方を見る。そこには、恥ずかしそう柱の陰に隠れる女の子がもう一人、ほのかに催促されて姿を現した。


「こ、こんにちは。」

「詩ちゃんだー!」


今度は和音がその少女にとびつく。詩と呼ばれた女の子はびっくりした顔になる。どうやら、四人は顔見知りらしい。再会して嬉しさを噛み締めているようだった。


「今日はどうしたのさ?」

「私が頼んで集まってもらったの。話したいことがあって。」


扉の外にいるほのかはそう答えると、ゆっくりと生徒会室の中に入ってくる。彼女は純の前に立った。そして再び口を開く。


「純、聞いてくれる?今から話す十年前の私たちの話を…。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「十年前、この町には守護神と呼ばれる子供たちがいた。それが私たち。活動目的はなにかを守ること。メンバーは全員で八人。ここにいるみんなと、今は居場所がわからない二人、そしていなくなったリーダー。十年前のあの日、みんなから『クロ』と呼ばれて頼られていたリーダーは突然私たちを残していなくなった。原因はよくわからない。最後の目撃者は残りの七人のメンバーだったんだけど、本当に私たちでもうまく説明できないの。彼はいつも楽しいことを考える子供だった。その彼がいなくなって、活気を失った守護神は解散、メンバーはバラバラの道を進むことになった。…それから十年。私たちは再び顔を合わせるの。」


ほのかが回りを見回す。そこには彼女を囲む優しい表情があった。ほのかの話が終わると、突然孝樹が純のもとにやってくる。


「で、お前が噂の生徒会長さんか?俺、浦川孝樹うらかわこうきって言うんだ。ほのかから話は聞いてるぞ。確かに良い男だ。ほのかが嬉しそうに話すわけだ、痛っ!」

「余計なことは言わんでよろしい。」


横からほのかの鉄拳をくらい、くらくらとその場を離れていく孝樹。ほのかは顔を赤らめているように見えた。


「ひえー。ほのかは昔からこんな感じだったよな。久しぶりに会ったんだし、もっと優しくしてくれても良いと思うんだけどな、なあ、わんこ?」

「わんこって言うな!」


今度はもろに顔面パンチだった。この孝樹という男はメンバーから嫌われているのだろうか。床に崩れている彼の様子を見て、詩は思わず大丈夫?と声をかけていた。孝樹は右手で親指をたてる。その様子を見て安心したような顔をした詩は今度は純に顔を向けると丁寧に挨拶してきた。


「初めまして。江崎詩えさきしいと申します。今日は急に押し掛けてすみません。それで…これはつまらないものですが、良かったらどうぞ。」


詩は最近できたケーキ屋のロゴが入った箱を取り出した。すると突然部屋の中に、ガタッという椅子の音が響き、彼女の手から箱がなくなる。箱が移動した方を見るとそれは生徒会書記の手にあった。田春小鳥たはることり、それが彼女の名だった。美味しいものには目がないことで有名、生徒会室の中にも彼女のためのお菓子がいつも常備されていた。この前の罰ゲームで高いケーキを買うよう純に指定したのも彼女だった。彼女が箱を開けるとにおいにつられるように和音も寄っていく。


「ああ、良いにおい。美味しそう。」

「食べる?」

「うん!」


初対面なはずなのに友達のように仲良くケーキを食べる二人。美味しいものが好きという点で二人は気が合うのかもしれない。


「俺のケーキが…」

「残念でしたね…」


純と詩は二人で苦笑いをするしかなかった。


しばらくすると食事を終えた和音が、部屋のすみに立て掛けてあった笹に目を移す。それは生徒会企画で使っていたもので、用を終えたあとは、無造作に部屋のすみに置かれていた。もちろん、掛けられている願い事はそのままである。


「へえ、色んな願いがあるね。じゃあ私も一つ。ペンある?」


和音はペンを受けとると、短冊に願いを書き出す。その行動はいつのまにか、まわりにも次々と感染し、部屋の中にはペンの音が響いた。


『美味しいものが降ってきますように 和音&タルト』

『ほのかが普通の女の子に戻りますように 孝樹』

『七人でもう一度集まれたらいいなあ 詩』


そこにはそれぞれの個性が表れた願いがあった。みんな自分の短冊をくくりつける。


「ねえ、何でタルトなの?」

「田春小鳥、略してタルト。そっちの方が美味しそうだから。」


小鳥は和音からの質問を、新しいおかしを開けながら答える。


「食べる?」

「うん!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


それから純たちは時空の歪みのこと、二次元世界のこと、黄泉世界のこと、元素融合体のこと、そして悪魔のことについてできるだけ情報を共有しあった。ほのかや孝樹、詩は出来る限りの協力をすると申し出てくれた。


話し合いが終わると、みんなで帰路につく。久しぶりに会ったはずなのにそのブランクを感じさせないほど和音たちはすでに打ち解けていた。校門を出たところで、純はこちらの賑やかさとは対照的に一人で壁に寄りかかる少年を見つける。向こうもこちらに気づいたようで近づいてくる。


「久しぶりだな。」

「…刻?」


光流が不良っぽいその少年の姿を見てそう呟く。少年はポケットからカードのようなものを取り出して自己紹介をする。


「元素融合体計画、火属性のマテリアル。火渡刻ひわたりとき。」


その言葉を聞き、一同の動きは止まった。ただ、ほのかだけが一歩前に出て心配そうな声で答えた。


「刻…連絡がつかないと思ったら、こんなことしてたなんて…」

「ほのかか?それにこのメンバー、守護神の同窓会でもやってたのか?」


刻は冷たく笑う。察するに彼も守護神のメンバーだったのだろう。それが今は元素融合体の関係者となっていた。


「まだあんな遊びをやってるのか。」

「遊びじゃない。」


今度は光流が言い返す。


「僕たちはこの世界を守る使命がある。守護神の名前の通りにな。」

「はは。なにカッコつけちゃってんの?よくわかんない力を手にいれて、ヒーロー気分か?光流、お前は昔からそうだったもんな。知ってるぞ、お前は本当は守護神のリーダーになりたかったってこと。だからクロのことだって…」

「刻!」


そう叫ぶと光流は刻に殴りかかろうとした。しかし突然現れた炎の壁に阻まれる。炎が消えるとそこには手に炎を宿した刻の姿があった。


「ああん?やるのか?勝てるとでも?」

「どうかな?リアライズ!」


眩しい光のなか、現れたのは三頭身のケルベロスだった。そいつは現れるとすぐ前両足をあげ、体で刻を踏み潰そうとする。一方刻は、足に炎を宿し、高くジャンプする。ケルベロスよりも高い位置まで飛び上がった刻は今度は、両手の炎をしたに向かって投げつける。刻の手から離れた炎は鳥の姿へと変わりケルベロスの二つの頭を首から突き破る。苦しそうに呻くケルベロス。一瞬光に包まれたかと思うと、残った一頭の口からは紫色の炎のようなものが出ようとしていた。刻は円形の炎の盾を作る。その時…


「おい、やめろって!」


孝樹が二人を止めに入る。孝樹の姿を確認した二人は彼に害が及ぶ前に力を解除した。


「おい、見ろよ!」


孝樹は詩の方を指差す。二人は彼女の方を見る。そこには怯えた顔の詩がいた。詩だけではない。こんな光景を初めて見る人もいるのだ。そんな人にとってどれ程の衝撃だったかは計り知れない。


「ごめん…」


光流は謝罪の言葉を口にした。ただ、刻は…


「俺は元素融合体だ。俺は正義だ。いつかはお前らと戦うことになると思ってた。悪く思うな。今日はそれだけを言いにきただけだ。次会うときは…敵同士だ。」


そう言い残して去っていった。

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