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第二章5 『始まりの事件⑤』

「お兄さん、それかっこいいね。せめて中ボスくらいの強さはあって欲しいな。じゃないとつまんないし。・・・まあ、中ボスでもつまらないけど。」

 

 藤宮大吾が軽く挑発しながら逃げる。それを天野光流がヒッポグリフに乗って追いかける。そんな状況がさっきから続いていた。大吾の腕にあった剣はすでに消滅しており、余裕を見せているのか、攻撃の意図がうかがえなかった。

 

 追いかけっこをして、とうとう町外れの廃工場のところまで来た二人。そこで大吾は足を止めゆっくり振り返ると、光流を迎え撃つ体制をとった。光流もその意図を感じ取ったのか、携帯電話を取り出すと、女神を呼び出し、ドラゴンを召喚した。ドラゴンはドスンと地面に着地すると大吾に向かって威嚇の声をあげた。

 

 それに続いてヒッポグリフから降りた光流。ヒッポグリフは光流が降りると先ほど負った傷のせいもあってか煙のように消滅した。そして前に一歩踏み出し、光流は言った。

 

「悪いけど、君を野放しにしておくわけにはいかないんだ。どういう力かは知らないけど、君には過ぎた力であることは間違いない。おとなしくその力を手放すか・・・」

 

 ---突然、緑の閃光がドラゴンの体を直撃、大きな爆発音をあげた。ドラゴンは翼を大きく広げ、怒り狂ったように叫び声をあげる。

 

「第三の武器、砲撃ゼブル。---ごめん、話長くて聞いてなかった。面倒だから勝った方が正義っていうことでいいでしょ?」

 

 右手をドラゴンに向け、楽しそうに笑いながら、藤宮大吾はいい放った。

 

「ガキが調子に乗るな!」

 

 目付きが変わった光流が携帯電話をかざすと、ドラゴンは体の向きを変え、遠心力を利用して尻尾による渾身の一撃を大吾に向かって放つ。大吾はそれをいとも簡単にジャンプでかわした。狙いの外れたその攻撃は大きな音をたて、近くにあった廃品の山をなぎ倒していく。

 

 砂煙の舞うなか、藤宮大吾は再び、砲撃ゼブルと叫んで攻撃してくる。先程よりも一回り大きなエネルギー弾が煙の切れ目から飛んできた。ドラゴンは避けることができず、再び砲弾を浴びることになった。

 

 前回の白鳥海斗との戦いでは、連続で攻撃を受け続けた結果、ドラゴンは消滅してしまった。しかし、今回は違う。前回の敗因は光流のイメージ力が弱かったこと。それによりドラゴンの本来の強さを発揮できずに終わってしまったのだ。今日まで密かに練習を続けていた光流にとってそんなへまはしない。それどころか、頭の中のイメージがはっきりしていればいるほど召喚したモンスターは強くなる。彼はもう負けられないのだ。

 

 続いて、ドラゴンは翼を広げて空へと舞い上がる。

 

「へえ、空も飛ぶんだ。」

 

 大吾は空に浮かんだドラゴンを見上げる。空中は障害もなければ、地上の者から見れば攻撃も当てにくくなる。そこからドラゴンは、地上に向かって火を吹いた。大吾のいた地上は一面炎におおわれる。

 

 事前に再び召喚したヒッポグリフで空中に避難していた光流は、地上を見下ろしていった。

 

「これで終わりだといいけど。」

 

 炎の勢いも少しずつ収まり、地上の様子もだんだん見えてくる。その中心には案の定と言うべきか、予想外と言うべきか、無傷の藤宮大吾が立っていた。

 

「---第二の武器、防御アバロン。---そして、続けて第四の武器、飛行グロリア!!」

 

 そのまま一直線にかつ高速でドラゴンのいる空中へと舞い上がる大吾。その目は戦いそのものを楽しんでいるように鋭く光り、彼の不適な笑顔には、光流も一瞬恐怖を覚えた。

 

斬撃ゾニア!」

 

 そのままの勢いで下から上にドラゴンを切りつける。傷を負いつつもドラゴンも負けじと体を捻らせ、左腕を伸ばし大吾に攻撃を加えようとする。ギリギリのところでかわされ、その左腕は空を切った。大吾はドラゴンと少し距離をとったかと思うと、再び攻撃体制にはいる。

 

砲撃ゼブル!」

 

 ドラゴンに向かって放たれたそのエネルギー弾は今度は当たらず、そのまま地上へと流れ、廃工場の屋根に大きな音をたて直撃、ぽっかり穴を開けた。その隙をついたドラゴンは長い尻尾で大吾を攻撃。大吾は、かろうじて防御アバロンで防ぐものの、勢いを止めることはできず、そのまま落下。体制を建て直す頃には、ドラゴンの炎が彼へと迫り、そのまま直撃、彼の体を炎が包んだ。

 

 傷を負ったものの、彼が戦いを続けるのには何の支障にもならなかったらしい。そのまま嬉しそうな顔をしながらドラゴンに突進していく。

 

 遠目で観察していた光流だったが、そこからの戦いは、肉眼では良くわからなかった。ときどき赤い炎や緑の閃光が光り、大きな衝撃音が響き渡っていた。だがそんなやり取りも束の間、急に静かになったかと思うと、決着はすでについていた。

 

 大吾の右手の剣がドラゴンの首へと深々と刺さり、貫通していた。ドラゴンは力なくうなだれるとそのまま落下。地上に到達する前に煙のように消え去った。

 

「そ、そんな・・・。」

 

 光流、二度目の敗北。そんな事実を噛み締める最中、そうもしてられないことが起こった。銃口が、大吾の砲撃ゼブルの銃口が光流の方へと向けられていたのだ。それに気付いた時には光流の目にはすでに緑の光が写っていた。

 

防御アバロン!!!」

 

 大吾の砲撃ゼブルは何者かの介入によって、塞がれた。何事かと、目を開け地上を見下ろした光流の目に写ったのは、二人の人間。

 

 灯月和音と真島純。

 

 彼らの登場によって、事態は大きく変わるのであった。

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