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プロローグ 『一年前の出来事』

 この町にはかつて『守護神』というグループ名で活動をしていた八人の子供がいた。


連城ほのか、天野光流、灯月和音、浦川孝樹、江崎詩、火渡刻、水沢慧。

そして、リーダーの男の子、通称『クロ』。


彼らはお互いを補い合い、八人でいながら、それ以上の力を発揮していた。

しかし、『クロ』の死によりそのグループは解散を余儀なくされ、八人はバラバラの道を進むことになった。


この物語は守護神の副リーダー『連城ほのか』に関するものである。

 

◇◇◇


携帯電話。

近代化が進んだ現代の日本において、携帯電話の普及には目を見張るものがある。

それはもはや、携帯端末と言っても差し支えないほど、多彩な機能を備え、全てを使いこなすのにも、大きな労力を要するようになった。しかし、そんな多機能の中でも、最も頻繁に、そして比較的簡単に使われるものが『メール』である。


一通のメール。

たかがメールと言っても、その影響力は意外に大きい。その影響力の一因となっているのが、話し言葉と違って、しっかりと形に残るその形式と言える。例えば、一通のメールを送ったとき、それが証拠として残って、後々取り返しのつかないことになってしまうこともあれば、逆に、あとからそれを何度も見直して、自分の活力になることもある。


そんな強い力を持つメール。

誰もが送ったことのあるメール。

そして、誰もがもらったことのあるメール。

そんなメールが今日も世界中を飛び交っていた。

 

 


ピロロロロ……ピロロロロ……ピロロロロ……

 突然、携帯電話の着信音が鳴り響く。

 

「ったく、何だよ。マナーモードにしてたはずなのに」

 

 そう文句を言いながら、携帯電話を取り出したのは、信号待ちをしながら友達と立ち話をしていた、学校帰りの高校生だった。

 だが、鳴ったのはその高校生の携帯電話だけではない。取引先へ急ぐサラリーマン風の男性、スーパーの袋を持った買い物帰りの主婦、腕を組んで歩く幸せそうなカップル。至る所から一斉にそして断続的に着信音は鳴り響いていた。


まるで何かの始まりを告げるかのように……。

 

それは一年前の出来事だった。

突然、日本中を不思議なチェーンメールが駆け巡った。発信元不明のメール。そのメールは、怪しげな文面、拡散を促す文末と、いかにも、という感じのものだった。しかし、それが世間の大きな注目を集めた。同時期に大きな事件がなかったからかもしれない。裏で権力者が操作していたのかもしれない。とにかく、その事件はテレビや新聞でも取り上げられるまでの騒ぎとなった。様々な憶測を呼び、模倣犯まで出てくる始末。とりわけ、取り沙汰されたのは、その内容。問題のそのメールにはこう書いてあった。

 

「危険……危険……近イ将来ニ『時空ノ歪ミ』ガ発生スル可能性ガアリマス。近イ将来ニ『時空ノ歪ミ』ガ発生スル可能性ガアリマス。勇気アル者ハ選択セヨ。選択セヨ。

 

……アナタノ大切ナモノヲ守レマスカ?

 

  YES or NO 」

 

時空の歪みとは何か。

Yesを選んだ人とnoを選んだ人の違いは何か。

そして、何よりこのメールは何をさせたいのか。


 考えることは色々あった。しかし、このメールには、この文面以外に特に情報はなかった。

それは結局、ただの遊びだった。誰も被害者ではなく誰も加害者ではない。それに加えて、このメールは、事件性も薄いこともあり、しばらくは面白がっていたメディアも、この事件をだんだん取り上げなくなっていった。それに連動するように、世間の人々の、この出来事に対する熱も急速に冷めていった。


そして、『警告のチェーンメール事件』と名付けられたこの出来事は、一年後には人々の記憶の隅へと既に追いやられていたのであった。

 

◇◇◇


ところが、メディアを騒がせた変わった事件はそれだけではない。 

忘れてはならない重要な事件が、もうひとつあるのだ。

それが『しゃれこうべ事件』


チェーンメール事件とほぼ同時期に、局地的ではあったがもう一つ奇妙な事件が発生していた。少しオカルトチックに聞こえるかもしれない。それは不思議な幽霊の出現だった。

目撃者によると、その幽霊の姿とは骸骨。しかも全身ではなく頭蓋骨だけ。俗に言う『しゃれこうべ』だった。その『しゃれこうべ』が大量発生したのだ。

 目撃証言によるとその頭蓋骨は足もないのにカタカタと音を立てながら、地面を移動していたという。

 

それが不思議な幽霊の話。


 この出来事は一部の週刊誌などに掲載される程度にとどまり、しばらくすると、歩く頭蓋骨の目撃証言も少なくなっていった。警察も動いたが、結局こちらも事件性が薄いということで、それ以上大きくは取り上げられなかった。


幸か不幸か、この出来事は、あまり人に知られることもなく、チェーンメール事件と同様、一年後には人々の記憶の隅に追いやられていた。

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