1:依頼が来た。
叶えたい 《願い》 は……。
ふわふわと浮いた仄かに発光する球体――魂は、手より空へと帰っていった。
「どうか、安らかにお眠り下さい……」
見送る死神の少女は、両手を組んで冥福を祈る。誰も彼女の姿を見ることはない――背後では、厳かに告別式が行われていた。
私、西井愛は、死神のバイトをしています。
「んっとお……。次は……。うわ~っ!人相わる~!」
天使より渡されたメモ書きリスト、いかにも犯罪者風の男に思わず悪態をついた。一体何をやらかして死んじゃうんだか……。
配給された大鎌に腰かけ、魔法使いのホウキみたいに飛行しながら、目的地は次の仕事場へ。
高校一年生。中肉中背、彼氏なし。顔は普通だと自分では思う。頑固なクセっ毛がキライだけど、肩で遊ぶ髪をいじるのは好きだった。
銀製の懐中時計のネックレスが胸元で揺れる。黒いハイネック、ノースリーブのワンピース。死神中は人には見えず、のんびり飛行もできて乙な仕事です。
いたって普通の女子高生の私が、なぜ死神のバイトなどしてるかと言えば、
――きっかけは天使の夢。
《あなた、アルバイトしませんか?もちろん報酬はあります》
キラキラと満面の笑みを浮かべ、緑髪の美形天使は私を誘った。
《あなたの願いを叶えましょう♪》
《やる気のある人待ってます。OKでしたら時計を首にかけて、
「どんどん集める使者の魂。死神バイト!」と叫んで変身して下さいね》
最初だけ叫んで変身したけど、後に口上は不要だと別の天使に教えられた。………美形訂正クソ天使。
願い事は人それぞれ。大きさもみんな違うよね。
願いにはレベルがあり、応じたレベル分の働き、その質量だけの魂を天使に届けると報酬として《願い》が叶う。
仕事は天使からのメモが届く。
《現在レベル2までポイントが貯まっています。次はこの方をお願いしますね》
「来世ではまっとうに生きてね!」
犯罪者の魂を胸より回収し、見送った私は仕事を終えて家路についた。
**
本当に何気ない朝だった。
朝、机の上で懐中時計が「ぴかぴか」と点灯している。目をこすってベットから起き上がり、時計の下に挟み込まれた天使のメモ書きに目を通した。メモはいつも、知らぬ間に出現している。
「仕事かな?……うん……。三日後ね」
メモには対象の顔写真、住所、年齢、氏名。死亡推定日時、死因が簡単に綴られている。
「な、る、せ……」
『成瀬 進――!!』
背景にベタフラが奔り、メモは手から滑り落ちた。
陽気にピースサインをこちらに向ける、――成瀬 進。開いた口が塞がらず、遅れて体が小刻みに震えている事に気がついた。
知り合いが来たことは一度もなかったのに。しかも、まさか、よりに寄って。
成瀬は近所に住む幼なじみ。一つ年上の高校二年生。
なんで成瀬なの――――!?
未完成だった少女漫画を小説化です。
死神ネタはいいですよね♪
作者オバチャンなので感性が古いと思いますが、現役り○ん読者ゆえに少女漫画で頑張りますv