青い花はこの世に存在しない?
神山まやみか誓います!
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「おはよー」
突然の声で目が覚めた。いや、実はもっと前から起きていたのかもしれない。ただ意識がなかっただけ? まぁ、今はそんなことどうでもいい。
僕は重たい瞼をゆっくりともちあげて、誰が僕を起こしたのか確認をする。
僕の目の前には今朝の少女が何食わぬ顔で立っていた。
少女の服装は今朝と違ってパジャマから私服へと変わっている。
少女は僕の目の前からスタスタと離れて行き、キッチンに着くと冷蔵庫と呼ばれる冷凍室から牛乳を取り出しコップに牛乳を注いだ。
「やっぱり牛乳より白い物はないわね」
(あれ? そういえばここどこ?)
ここで疑問が浮かびあがった。
僕はたしか今朝外にいてなんだか急に眠くなり――そうか、昨日この子に連れ去られたんだ。
見知らぬ場所。見知らぬ物。知らない匂い。そして、冷蔵庫に食器棚、テレビ、テーブル、電子レンジ、掛け時計。時計は十時半を示している。
彼女は白く薄いコップをキッチンの流しに置くと、奥の部屋へと行く。
(あ、ちょっと待って……)
僕は彼女について行こうと体を動かしたが、視界はまったく変わらず動かなかった。
(うん?)
僕は反射的に自分の体を確認しようとする。が、足どころか首すらも動かすことがでなかった。なにがどうなっているのかわからない。
ここで一旦整理しよう。
まず、僕の目線。僕は彼女に見降ろされていた。ということは僕は彼女より背が低いというわけ。次に、僕は何故か体が動かない。特に痛いところもないので負傷して動けないってわけではなさそうだ。
(……わからん……)
そんなことを考えているうちに彼女の姿はすでに見えなくなっている。
僕はなんとかこの現状を確認しようと、ちょうど目の前に置いてあったテレビの反射を利用して自分の姿を確認することにした。
今日は晴れだけどカーテンが閉まっていたので自分の姿を確認するにはもってこいの反射条件。
僕は恐る恐るテレビに映る自分の姿を確認した。
(…………っ)
自分の姿を見て絶望する。
肩は無かった。でもきっと肩があったら肩から崩れていることだろう。
だけど僕は一瞬こそ落胆、絶望したが次の瞬間意外にもすぐに受け止めることができた。
僕は僕の姿を見て思いだしたからだ。そういえば僕はこんなんだった。
気がつくと、目の前には口の周りを白くした少女が戻ってきていた。
「それにしても久しぶりね。どれくらいぶりかしら?」
少女は僕の前に来るや、嬉しそうにテーブルに頬杖をついて僕の顔を指で弾いた。
僕の視界が大きく揺れる。
そして僕は彼女の問いに答えようとした、が僕は口がないから答えられなかった。
僕はきっともうすぐ寝てしまうだろう。僕の意思などまったく関係なく。
「あれ?」
少女は不思議そうに首を傾げて僕のことを見つめた。
僕は見つめられたまま視界が狭まっていく。だんだん意識も薄れ呼吸の仕方も変わっていく。
そして僕は眠ってしまった。