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コミュ×アバ×オフ

今回長いよ^^


「コミュニティーサイトだ……」


 それでサイト上で同年代の友達を探して、しかも画像とかもあるから毎日見れる。それに会話だってサイトやメールを使えば簡単にできる! それで、そこそこ仲良くなったところで、オフ会というサイト上で知り合った人たちが現実に会う行いをすれば、完璧! 

これは現代社会があたえた奇跡の恥ずかしがり屋さんでも友達を作る方法だ。


「咲さんちょっとこっちきてください!」


「えっ? ちょっ、ちょっとなによ!」


 浮かれる僕に少し戸惑いながら、咲はパソコンのある部屋までやってくると、僕に促されるようにデスクの前に座った。

 パソコンは昨晩僕が使ったので綺麗にされている。最初にこのパソコンを見た時、なんだこれ? といった印象をもったが右隅に書かれたPCという文字で、笹木さんが言っていたパソコンのことを思い出し、それからいろいろいじくってコミュニティーサイトのことを知って

 これは天の思しめとしか言いようがないな。

 不思議そうに座っている咲さんを後ろ目に、馴れた手つきでパソコンの電源を入れてしばし待つこと画面が光、紫色のアサガオ画像が浮かんだ。


「……なにこれ?」


「え? ああ、昨日暇だったのでデスクトップをアサガオにしておいたんですよ」


 これを見ればなんだか心が癒されるからね。

 咲さんはカチカチと突然マウスを持つと、バックの絵柄を初期状態に戻し、真っ青なブルーにした。


「な、なにしてるんですか!」


「なにしてるんですかじゃないわよ! 朝顔こそ人のパソコンに何やっているのよ!」


「うぐっ……」


 それを言われたら仕方がない。でも、咲さんは意外にパソコンが使えたのでさくさく進むかもしれないな。


「それで、パソコンで一体なにするの?」


 咲さんが怪しげな顔で僕に訊いてくる。

そういえば、まだ咲さんには言ってなかったな。


「それがですね、コミュニティーサイトってのを使ってですね……」


 それから、さっき僕が思い浮かんだ名案を咲さんに話すと「たしかに、顔見ながらだけど、直接じゃないから私も話せて、仲良くなったところでオフ会……よくやったわ、朝顔!」と自信に溢れた表情で頷いた、そして今はコミュニティーサイトに入るために必要なプロフィール登録場所で手が止まっている。


「ねえ、朝顔。名前なにがいいかなー?」


 そんな声が奥の部屋から、リビングにいる僕の耳元まで届く。


「テキトーでいいんじゃないですかねー、求、友達とかで」


「イヤよ、もっと真面目に考えて」


「うーん、それじゃあ1、普通に咲ちゃんでいいんじゃないですか?」


「うーん、まぁ、やっぱそうなるー?」


「妥当だと思いますよー?」


 それから咲さんがマイプロフィールを書くこと数分、書き終わったかな? と思ったころに僕はリビングからパソコン部屋へと戻り、後ろから咲さんのプロフィール画面を覗いた。


「どう? けっこう頑張っちゃったんだけど」


 咲さんは椅子にすわったまま胸を張って言う。

 内容は意外にも普通すぎて興味が沸かないぐらいだった。だが、


「この普段の生活ってところに『朝顔いじめ』はよくないと思います」


 周りの人が見たら、ただの変人としか思えないだろう。この時点で友達はできない。

 咲さんは「え~」と言ったものの、バックスペースでそれを消すと『朝顔と一緒にいること』と書き直した。きっと深い意味はない。きっと僕がそばにいたからだ。


「完成したし、それじゃあコミュの検索をしようか」


「は、はい」


 咲はそう言うとコミュニティー検索欄と書いてあるところをクリックして手際よく入力欄を埋めていった。まず、歳といったところに『十代』参加募集というところに『千葉県』、重要キーワードというところに『女』『友達作り』と打って検索ボタンを押す。

すると、しばらくしてから検索結果一件と表示された。


「あ、あった!」


「ホントだ。えーと、『木更津っこ@しゅうご~う』?」


 咲さんは引っかかったコミュをクリックした。

 それは木更津の女の子限定らしく、参加人数は六人と木更津と絞っているわりは多いコミュニティーだ。コミュニティーの目的としては、木更津で友達が欲しい人、友達を増やしたい人、とにかく出会いの場になるといいです。と記載されている。主催者も咲さんと同じ十六歳らしく僕達は木更津に住んでいるので、僕達にピッタリのコミュニティーだ。


「うん? どうしたんですか?」


 けれど、咲さんは浮かない表情でそのディスプレイを見つめていた。


「それがね……そこのトピックを見て」


 そう言うと咲さんはカーソルを下に、トピックから『第一回オフ会予定』と書かれたトピックにマウスを持っていって軽快な音を二度鳴らした。

 そこにはもちろんのこと『女の子限定のオフ会を開こう』的なことがずらずらと書かれており、なにも問題があるようなところは見当たらない。


「うん? よかったじゃないですか、オフ会の計画とか進んでいて」


「いや、そこじゃないの、こっちを見て」


「こっち?」


 そう言って咲さんはマウスをさらに動かし『女の子限定』と書いてある文字の上で止まらせた。べつに、これと言って変なことではない。強いて言うなら女の子しか入れないわけだから、別に女の子限定と書く必要はないだろう。でもそれは、主催者側の他者に向ける安心して参加してくださいという心遣いだという風にも、読み取れるし、なら本当におかしなところは無く、そのおかしなところに反応する咲さんがおかしい。


「別におかしなところはありませんけど?」


 僕の隣でちょこんと座っている咲さんに眼を落して話かける。


「そ、そのね、私、一人じゃそのぉ、どんなに慣れても無理……だと思うから朝顔にもついて来て欲しい……の」


 咲は俯き加減でそんなことを言う。

 うーん、そんなことを言われてもなぁ。僕は女の子じゃないし、生憎人間でも怪しいところだぞ?

 念のため、咲さんの手の上からマウスを握り、カーソルを下にもっていく。どうやら、オフ会の詳細はすでに決まっているらしく、今からちょうど一ヶ月後の九十九里浜の海で行うらしい。今のところ参加人数も六人と全員参加だ。


「うーん、それじゃあまず、一ヶ月間余裕がありますから、とにかくこのコミュニティーに参加して自分がある程度周りの人と打ち解けて、仲良くなったところで『恥ずかしがり屋さんなので男性ですけど、同い年の人連れて行っていいですか?』って持ち出してみたらどうですか?」


「……うーん、もし、駄目って言われたらどうするの?」


「そしたら他の場所を探しましょう。まだ、時間はいっぱいあるんですから」


 まだ、なんだかんだで始まったばかりだ。そんな一気に行動する必要はない。まあ、トントントンと問題なく進んでくれればそれが一番望ましいんだけど、そこまではさすがにうまくいかないだろう。

 咲さんはしばらく「う~」と低く唸ったあと、恐る恐るマウスを動かしてコミュニティーに参加というところを押した。女性のアバターなので素直に入ることができる。


「よし、それじゃあまずそこの『挨拶をしよう』ってトピックで挨拶をしてから、しっかりと六人に個人的に挨拶をしていってくださいね」


「わ、わかってるわよ。でも本当に朝顔が来ないんだったら行かないからね!」


「はいはい、口より手を動かす。ちゃんと写真も送ってもらって毎日メールをして、オフ会にも申し込みをする」


「うっ、う~」


 これでやっと一歩前進だ。あとは一ヶ月後までに咲さんがこの他の人に慣れて、僕が一緒について行けるようになるだけだ。


「それって意外に難しくないか?」


「うん? どうしたの、朝顔?」


「いえ、なんでもありません」


 もうそこは運ということに気づく朝顔だった。


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