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追う彼、逃げる彼女

手の甲が、左の心臓の辺りが締め付けるように熱くなる。描かれた模様から感じ取れる存在がこの数ヶ月何度目蓋の裏に浮かんだろうか。


紀衣菜の魔力を体に受けた際に左の手の甲から左半身まで刻まれた彼女と同じ模様。それは妙実に紀衣菜の存在を訴え続ける。


つくづく自分は矛盾しているだろう。

受け入れる事は無いと決めていたはずが、紀衣菜が離れればその姿を探し、逃げるのならば腕を掴んだ。

紀衣菜が魔物だと気付いたのは随分前だ。

余りにも不自然すぎる魔力の無さ、魔力が高い自分だからこそ感づいたキーリと紀衣菜の力の行き来。

昔の仲間ですら必要があれば刃を向けたはずが、危険因子である紀衣菜には剣の柄を握る事すら出来なかった。



理由などとうに理解している。ただ恐ろしかったのだ、認める事が。


自分が歩んで来た生き方の本当の目的を、あの小さな取るに足らない娘に「自分」が囚われているなど。


だが、もう認めよう。


この蔦模様が自分と紀衣菜を縛り付けるというならそれを利用する。

切れる事の無い自分と紀衣菜だけの繋がりなのだ。


生きているのか、死んでいるのか、奪っているのか、奪われているのか。そんな常に細い糸にぶら下がるかのように生きてきた自分の渇きを満たした女。


執着を抱き、そんな事出来ないのに何処にも行かない様閉じこめ、あの小さくちっぽけな存在に縋り付きたくなってしまう恐ろしい女。


今まで逃げた分、認めてしまえば手を伸ばさずにはいられない。


その華奢な体と壊れかけた心を俺に。

俺は枯れかけた大樹の根元に凭れる娘に手を伸ばした。


なぁ、逃がしはしない。

「紀衣菜」




十十十十十十十十十十


誰かが呼んでいる気がする。


周りはもう闇しか無い。


私はただこの身が、心が朽ちるのを待つだけ。


あの男が死んでもまだやり残したことがある。彼の危険因子を消さなければ。


そう、私自身を。


多くの者の命を奪った化け物は、闘いが終わった事でようやく解放の時を迎える。


契約者という名の呪いは契約している魔物が死ねば消える。


彼も自由になるのだ。



あぁ、あぁ、それなのに。


何処まで自分は浅ましく醜いのだ。


名を、私の名を呼ぶ彼の声が聞こえるなんて。そんな事はある筈無いのに。


…けれど、愛しい人が呼ぶ幻を最後に死ねるのならばなんて幸せなんだ。


好きでした、愛していました、想っていました、恋うていました、欲していました


グエンさん

グエンさん

「グ、エ…ン、ダル…」「なんだ。」



・・・・・・・・・・。


「え。」


「ようやく狭間から出てきたか、面倒な奴め。しかもこんな森の奥に逃げ込むはお前は小汚いはと言うよりどれほど飲み食いしていない、鶏の骨の方がまだ色気があるぞ。このカピカピはあの時の血か?何で傷が膿んでいるお前の力なら治癒出来ている筈だろう。酷すぎるぞ。」


ちょ、え、何早口過ぎて分からないけど目の前にいるのはグエンさん?てか鶏の骨の方が色気あるとか…


「ひ…ど…」


「酷いのはその老婆の様なお前の声だ。」

確かに。

唾液すら出ず、喉が張り付いて酷く痛い。


グエンさん(幻…じゃないよね)は荷物を漁ると水筒を出す。そしてそれを自ら扇ぎ……


「!!?」


「…ん、ゆっくり飲め。」


柔らかい感触と口の中にある生温かい水に驚きゴクリと飲んでしまう。


「え、あ、…っん!…っごく。はぁっ、あの、ちょ…んんっ!ごくん、グエンさ…んん〜っ!!ゴキュッゴクン、もういいですから!!!」

何度も親鳥よろしく、口移しで水を飲ませ更に続けようとしていたグエンさんに思わず叫ぶ。


「い、一体どうして…げほ、ここに。というよりどうしちゃったんですか!?」

水分を取らな過ぎてまだ喉が痛いが水筒をおいて居ないグエンさんを見て我慢する。


「場所はこの蔦模様から感じ取った。どうやら“契約者”には相手の位置が朧げに把握できるらしい。」


「わ、忘れてた!…いや、だからと言って何で探しに…ぁ、」

もしかして危険因子を自ら消しに?


「言っておくが、どうもこの模様は相手の感情をも薄っすらと伝えてくる。だから言うが、お前を消しに来たんじゃない。」


…な、にぃいいぃ⁉かか、感情までなんて知らなかった!あの子は私の負の感情だから分からなかったのか⁉


そしたらグエンさんに私は隠し事なんて出来ないじゃないかぁあ!


「あくまで大まかな事だ。ただ、お前が分かりやすいだけで。だが、薄っすらと言ってもお前が強く感じている事は分かる。…だから迎えに来た。」


いつに無く饒舌ですね、じゃなくて。


「強い感情?」


「寂しい、のだろう。」


「!」


「寂しい、と。本当は1人は嫌だと。だから迎えに来た。」


「そ、んな事は…。」


「俺に嘘は通じない。…諦めて認めるんだな。」


違う、だって、だって、私は!!


「紀衣菜、お前は俺が穢いと感じるか?多くの命を奪った死神を怖いと思うか?…言ってみろ。」


「….グエン、さんは、きたなくなんか無い。」

ずっと綺麗な翡翠のまま。だからこそ眩しくて手を伸ばし縋りたかった。


「お前も、俺にとって同じだ。穢くなんかない。」

その言葉に私はゆるゆると首を横に振る。視界がぼやけてきた。そんな私の両頬をグエンさんが優しく包み、自分に近づける。

彼の綺麗な瞳に、泣きそうな小汚い娘が写っている。


「いいか、よく聞け。お前の魂はどれほど血に塗れてもその輝きを失わない。だからこそ眩しく、手を伸ばし、閉じこめ縋りつきたくなるのだ。逆に、俺に手を伸ばさせて縋りつけたくもなる。」


「グエンさ…っ」

もう、ダメだ。水分なんて無い筈なのに、私は涙を溢れさせた。

ダメなのに、グエンさんの言葉が私のバラバラになった心を包んでいく。


「この契約を後悔しても遅い、お前は俺のものだ。今までのお前が罪だと言うのなら、俺に縛られる事を罰として生きろ。逃げるな、大人しく俺に捕まれ。」


「っエ、さん…っ」


「一度しか言わない……紀衣菜、俺は紀衣菜が欲しい。俺の隣で、ずっと笑っていてくれ。俺に生きる意味を与えてくれ。俺はお前を……。」

言いながらグエンさんはガサガサの私の唇に自分のソレを優しく合わせた。


違うよ、グエンさん。生きる意味を与えてくれたのは今も昔も貴方だよ。


何度も優しく押し付けてくるグエンさんの唇を感じながら、私はもう逃げられないと思った。


追ってきた優しく美しい彼に、私は捕まったのだ。




やっとここまできました(^o^)

あと数話です!


振り切れたグエンさん、甘々です。


以下補足で長くなります↓

以前にグエンダルが闘いの最中にアルメデスにキーナの元契約者(リリーヌ)の拷問を示唆しれた際ブチキレた時があったんですが、グエンダルはキーナが契約者でなく魔物だと気づいていたので


リリーヌがされた拷問でキーナにされた拷問?と言うか躾を想像しキレたのです。


ある感想の返信で「グエンダルはキーナを契約者だと思っていた事になっているので」と書きましたが、実際は後ろに

(事になっているけど実際魔物だと気付いていて黙ってただけだよ!)


がつきます´д` ;


小説ではそこらの機微を出せなかったので補足しておきます。


ややこしくてすみませんm(_ _)m


完結まであと少し!頑張ります!



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