終焉の始まり
2話連続投稿です(^^)
短め
金と銀の糸を織り交ぜた美しいマントを肩から斜めに掛け、白い軍服を着こなした若き皇帝は、城の若い女達をうっとりとさせる微笑みを浮かべルディースル国を訪れた。
頭上には平和と調和の象徴とされるアダルの若葉で造られた王冠をのせている。
民から税を奪い逆らう者は首を跳ねる暴君には到底見えない。
いや、その姿は他国には巧妙に隠されて明らかにされていない。
ギルヘルムとてその事実を知れたのも自国の優れた密偵がいたためである。
アルメデスが10の時に父である前皇帝と兄である第一皇殿下は表向きでは流行り病で亡くなっている。
同時に多くの重鎮や貴族も同じ病で亡くなったとされている。
「良く来てくれた、アルメデスよ。」
「お久しぶりで御座います、ギルヘルム陛下。此度の訪問、早びかせて申し訳ありません。」
「そう畏まるで無い。話に興を添えたい所だが長旅であったろう、今日は休め。」
「はい、ありがとうございますギルヘルム殿。」
優雅な礼をした皇帝は傍らに跪く従者と謁見の間を去っていった。
「アレン。」
「は。」
ギルヘルムが隣に立つ男に言う。
「目を離すな。」
「勿論です。」
「密偵は?」
「牢に。」
「…後はどう出るか、だな。」
どのように出たとしてもこの国の民を傷つける訳にはいかない。
亡き王妃を想い、ギルヘルムは一国の王たる者として、アルメデスの後ろ姿を見送った。
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「サン、見てみよ。」
アルメデスは付き歩いていた従者に己の手にある花束を見せた。
「それは?」
「隣国の王が来ると聞いて、この国の小さき民が手づから摘んできてここへ持ってきてらしい。先程渡された。」
ピンクの小さな花
それを穏やかに見詰める。
「平和よの。国は栄え、民は笑い、希望と温もりに溢れておる。」
アルメデスは思う。
黒の森を挟んだだけでこうも異なる我が国を。
作物が育てにくい土壌
流れ込む冷気
少ない水脈
「サン、」
手に持つ花束を見詰める。
アルメデスの手の内にあるその花は、黒い炎と共に焼き尽くされた。
「全てを、消せ。」
「御心のままに。」
穏やかな顔のまま、アルメデスは手からこぼれる灰を見詰めた。
その目だけが隠せもしない混沌の闇を写しているのを見たのは、誰も居ない。
「終焉の、始まりだ。」