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彼女と戦友

カルト国皇帝の来日が早まったと言う伝令は城中を駆け抜け、城の皆を準備で慌ただしくさせた。



そして明日、彼らがこの国にやって来る。


「キーナに失敗させられちゃ堪らないからね。貴女は城内じゃなくて侍女棟の掃除担当よ。」



昨晩、殆どの侍女が城内で仕事を割り当てられる中、キーナを遠ざけるかのようにシェリーに言い渡された。


キーナは拗ねてみせたが内心は苦笑を隠せなかった。


自分の身を案じてくれたのか、ただの監視の為か、それは分からない。


あの国に捕らわれていた時は恐ろしくて仕方がなかったが、不思議と今は穏やかな気分だ。




キーナはゆっくりと城内を歩いていた。


こうしてこの場所をゆっくり歩けるのは今日で最後だろうから。


磨きあげられ白く輝く壁や高い天井には繊細で複雑な模様が彫られている。


大きな窓は目一杯太陽の光を受け止め、開いた窓からは柔らかな風が時折重厚なカーテンを揺らす。


まるでテレビに出るヨーロッパかどこかの古い城のようだ。


キーナは白い壁に反射した太陽の光に目を細めた。



「キーナちゃん。」


声に振り向くと、その甘いマスクに複雑な感情を浮かべたアレンが居た。


ヘラヘラしている様でポーカーフェイスなアレンには珍しい。


「こんにちは、アレンさん。グエンさんは一緒じゃないんですか?」


ニコニコしながらいつもの様に返す。



「アイツは…忙しいみたいで。明日の事で、色々とね。」


「そうなんですか、来日が早まったの急でしたもんね。私なんかシェリーさんに当日は侍女棟の掃除してなさい。って言われちゃいました!」


邪魔者扱いです~


そう言って笑うキーナを見て一瞬アレンが苦しそうな顔をした。



「キーナちゃん…。」


「はい?」


「………。いや。……あのさ、あの…。俺はグエンが好きなんだ。」


「え。えぇええッ!!!」


ま、まさかのカミングアウト!?生BL!?意外すぎる伏兵!!



「た、確かにグエンさんの魅力は老若男女を惑わしちゃいますけど!で、でも…ごめんなさいっ譲るなんて出来ませんっ!」


一気に言い切るとアレンから憂いが取れ急に焦ったような顔になる。


「ちょ、違うから!俺はシェリー一筋だし!そう言うんじゃなくて!」


「え、て言うか、えぇ!アレンさんとシェリーさんって…。」


「うん、彼女とは大分長いよ。…まぁ、恋の話しは後で女性同士してくれよ。


それで、俺が言いたかったのは……………グエンは、俺の憧れだったって事なんだ。」


「“だった”?」


「いや、今でもそうだけど。でもそれだけじゃない。俺はアイツに幸せになってほしいんだ。


昔からアイツは人間味って言うものが無かった。綺麗な人形みたいな感じで、感情があんのかよ。って思ってたんだ。


俺はね、キーナちゃん。グエンが恐いんだよ。


人形みたいなアイツが、剣を振るうアイツが、“化け物”と呼ばれてるアイツが恐いんだ。」


キーナはただ静かな目でアレンを見、話を聞いている。

アレンは1つ深い呼吸をするとまた話を続けた。



「戦友にはなれたって、親友にはなれない。俺じゃアイツを人間にしてやれない。…それでも、幸せになってもらいたい。」


勝手だな。そう、切なそうに笑う。



「けどずっと、一番近くでアイツの戦友やってきたんだ。だから氷みてぇに冷たいアイツの目が、いつも殺気放つ背中が変わったのはすぐに分かった。

アイツの周り、雰囲気が暖かくなってきてる。何でか分かるか?キーナちゃん、君が、アイツを変えたんだよ。

キーナちゃんが暖かさを運んで来るんだ。それがアイツの氷を溶かし始めてる。


アイツ、最近分かりやすくて面白いよ。」


アレンは窓に近づき外にある鍛練所を見つめて剣を振るうグエンダルを思い出した。



「キーナちゃんがアイツを人間にしてくれた。…孤高の王と呼ばれるアイツを、さ。


知ってたんだ。


死神とか銀王とか言われてるけどアイツはただの男なんだ。って。

周りを無いように振る舞うけど、いつだって良く周りを見てた。調子の悪い奴とか、悩んでそうな奴とかさりげなく俺に言って来るんだよ。アイツは自分を化け物として扱ってるけど、全然、違うんだ。

まぁ、偉そうな事言うけど俺が恐れているのに変わりはないが。」


白い頬にこびりついた血を拭いもせず、淡々と静かに、だが着実に敵を消して行く彼はとても美しく、そして震える程恐ろしかった。

自分は彼の隣には立てない。

別に神聖視している訳ではないが、自分では彼には届かないと思っている。


けれど。


「やっとアイツに出てきた感情を消したくないんだ。」



彼を人間にしてくれた少女。

自分の様に羨望も畏怖もなくただ純粋に彼を慕う少女。



彼等の幸せを願えまいと言えようか。



「キーナちゃん、君は…。」


そこでアレンは言葉を切り躊躇うようにキーナを振り返った。


「…アレンさん。」


キーナの艶やかな黒髪が揺れ、光の輪が歪む。


「アレンさんは、ちゃんとグエンさんの隣に居るよ。」



ハッ、とアレンが息を飲み気だるげな瞳を見開く。



「見てて分かるんです。グエンさん、アレンさんの隣に居るとリラックスしているなって。アレンさんを信頼しているから、自分が気付いた隊員さん達の様子をさりげなくアレンさんに言うんですよ。」


淡く微笑む少女は、いや、女性は目を奪われるほど美しかった。



「私ならそんな風に頼って貰えない。嫉妬しちゃうくらい、アレンさんと一緒にいるグエンさんはどこまでもグエンダル・ハズウェルですよ。」


聞いてアレンは微笑んだ。

それは泣き笑いのような、実に幼い笑顔だった。


「…ありがとう。」


この笑顔を忘れないようにしよう、とキーナは思う。



「私も、ありがとうございます。」



本当に言いたい事を飲み込んでくれてありがとう。


兄のような人。

ねぇ、アレンさん。




「で!シェリーさんとはどこで知り合ったんですか?どれくらい続いてるんですか?告白はどっちからですか!?」


「おい、勘弁してよ!」


「だってアレンさんにシェリーさんが靡くと思わない…。」


「コラ!いや、確かに大変だったけどな!」




ぎゃぁぎゃぁ騒ぎ、じゃれ合いながら歩く。


二人が居なくなった窓辺ではカーテンが柔らかく靡いていた。



ねぇ、アレンさん。


未来に私が彼と隣に居ることはないけれど、私も幸せを願ってるよ。




最終が近いです(^^)


今回はワンクッション的な。



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