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彼女と彼

短いです



「グゥ~ウゥエェ~ンすわぁ~あんッ!!!」



澄み渡った青空の下響き渡った己の名に国家騎士団隊長であるグエンダル・ハズウェルはその眉間に皺を寄せた。



女性では考えられない、スカートを持ち上げながら全速力で走ってくる少女。




「…キーナ。また転ぶ「ぎゃぁああ!」…んだな。」




「グエンさんおはようございます大好きっ!」




華麗な顔面スライディングからガバッとグエンダルの足元より起き上がった少女は、その大きな黒目を細め、満面の笑みを向けた。




「鼻の頭が剥けているぞ間抜け面め。」


そんな彼女を冷たく見下ろす翡翠の瞳



「え、乙女の告白をスルーですか!?」


「乙女はスカートを持ち上げない。鼻の頭に擦り傷なども作らん。」


「グエンさんを想う気持ちを抑えられなくて、つい。愛の大きさですよね!」


「愛の大きさと宣うなら今度からは身体中傷だらけの瀕死状態で来るんだな。」


「い、痛い!愛が痛いよ、グエンさん!」


「愛が無いからな。」


「一刀両断!!!」




ふと気付くと周りの護衛兵や侍女がクスクス笑っている。


グエンダルは眼光を一割増しに冷たくし常人ならば震え上がるであろう低い声を少女、キーナに向けた。



「で、何の用だ。」


「今度の休みには城下に一緒に行ってくれるって言ったじゃないですか。アレンさんから今日はグエンさんは休みと聞いたのです!」





グエンダルの地を這う声など効果は見当たらず。


どや顔でグエンダルを見やる。





チッ。

グエンダルは、ここには居ない戦友に舌打ちをした。

ついこの間、自分の後ろを着いてくる少女が鬱陶しくつい約束をしてしまったのだ。




本当ならばこんな約束どうだっていい。



どうだっていい。…はずだが




キラキラ


「……。」


キラキラキラ


「………。」


キラキラキラキラ


「…………。」




「…人混みは避けろ。」


「っ!はいッ!!」




尻尾があれば千切れんばかりに振っているであろう少女の約束を無下にするのは後味が悪すぎる。




どうせ他の騎士団の隊員の稽古を見るくらいの休日だ。

ならば1日位は城下に行ってもいいだろう。



「その間抜け顔で俺の半径5リード(5M)に近寄るんじゃないぞ。」






+++++


「はぁ~あ。無自覚っつーのは面倒くせぇなぁ、ったく。」


「彼女の休日をグエンダル様に合わせてよかったですわ。」



本来ならば鬱陶しければ完璧に無視または排除、その前に女の言葉になど耳を傾けることすらしない筈の戦友が



嫌々ながらも最後まで少女に付き合う姿を想像し



溜め息を付きつつ、国家騎士団副隊長のアレン・スウォードは侍女長と二人の後ろ姿を見守るのであった。




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