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彼と黒の彼女達

―魔物―




魔術を使う者達が異なる次元、解明されていない時空から呼び出した異形の化け物。



強大な力を持つその化け物に生け贄を捧げ契約を結び、人間同士の争いにその力を使役した。


殺し殺され。


醜い負の感情を糧とした魔物はもはや契約者では力を抑えられず、邪悪な力は空を割り、大地を血に染め、数多の契約者と国を消した。




世界は恐怖と闇。




そんな闇の時代の、魔物以上の魔力を持つ一人の男。


黄金の髪と蜂蜜色の瞳をしたその男はまさに太陽の如き光で闇を切り裂いた。



男は常人離れした魔力を持つ人間を集め、蔓延る化け物を殲滅した。


そして魔物の召喚を禁忌とし封印をした男は自らが集めた、常人離れした魔力を持つ人間達の王となり国を創った。



ルディースル国第一皇帝陛下


レイブン・ディルグ・ロウ・ルディースルがその男である。





+++++++++++++

+++++++++++++




ルディースル国の始まりについて記された歴史書を脇に抱えつつ、グエンダルはカルト国の思惑について考えていた。


自然と歩くはやさは速まり、眉間に皺が寄る。



魔物


奴らは其を探していると言った。


身を偽り国の上層部まで入り込む事は出来たが、得られた情報は多くはなかった。


むしろ知らない者の方が多いという状況。



つまりは国の一握りの人間だけが携わっていると言うことだ。


疑いはある。

証拠がない。




自分らしくない。とグエンダルは思った。



周りがどうなろうとも、誰を犠牲にしようとも気にも止めなかったはずだ。


自分はあの時のまま。

余計な感情は剣を鈍らせるだけである。



考えるな。





にゃぁ…



考える事を放棄しようとしたグエンダルの耳に届いた鳴き声。


にー…

にゃぁ─



外通路の脇に生え並ぶ生垣から聞こえる。



「…。」


声の方へ歩く。



背の低い木の、葉が重なった奥。


日差しが遮られ薄暗い空洞の中、黒毛の猫がいた。



ピクリと耳を震わせたが逃げることはせずジッとその黒い双方でグエンダルを見つめる。




足を怪我しているのか。

猫の後ろ足にこびりついた血が見える。



「何処から入り込んだ。」


この城は猫であってさえも、そう易々と入れる場所では無い。


魔力の気配は無いから、密偵と言うわけでもなさそうだが…。


すると猫は怪我をした足を引き摺りながらしゃがむグエンダルの足に頭をすり付けて来た。



「ふみゅぅ、にゃぁー。」

ぐりぐりぐり



「……………。」


何だ。

凄い近親感がある。



元々は動物などは寄って来ない体質の筈だ。


動物は本能的にグエンダルの中にある魔力を察知し近づかないのだ。




その筈が。



ぐりぐりすりすり



「…毛が付く。止めろ。」


そう言って手で頭を押すと次は嬉々としてその手を舐めてくる。


「ふみゅふみゅ、んなー。」



少し警戒心を持った自分が馬鹿だった。


舐められた手でふわふわした黒い毛を梳く。


汚れてはいるが手触りは良い。


まるで


脳裏に浮かんだ人物を、グエンダルは振り払う事は出来なかった。



「お前はそうやって私に寄るのだな。」


「にゃぁん。」


猫の顎を擽ってやると、いつか。手で頬を包んだ時の彼女の様にその大きく黒い目を細める。


グエンダルは気づかない。

自分の目も細まっている事に。


カルト国の密偵は既にこの城にも居る。


勿論それに陛下は気づいている。


黒の森からルディースル国の城下町、そして城。と少しずつ近付いて来る奴等。


他の国に居た密偵もこの国に集まりつつある。



つまり。



奴等の探し物はこの国にある可能性が大きい。


魔力が溢れているルディースル国は知能の高い魔物にとって良件な隠れ蓑だろう。


自身の魔力が隠れるのだがら。



カルト国の若き皇帝。


民から多額の税を没収し、逆らう者は死刑とする暴君。


いつか世界を手に入れようと虎視眈々と狙っている男。



あの薄暗い目をした人間に渡してはならない。


泳がせてから魔物共々この手で消してやろう。



「ふみゃぁ!!」



かぷ


グエンダルの意識が自分から逸れた事への反発か。


指を噛みついてきた。



「………やはり黒は馬鹿だったか。」



ガッ!


「みゃ!?」


首の皮を乱雑に持ち、ズカズカ歩く。



「貴様のその足に私自ら消毒液を塗ってやろう。」


悲鳴を上げる程に沁みる、な。



「ひにゃぁあああ!!!」


その日、哀れな獣の悲鳴が医務室から聞こえたと言う。





後に

医務室にその猫が住み着き、キーリと呼ばれ隊員の癒しとなった事をキーナは知らない。


名付け親が実はあの人だと言うことも。



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