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彼女と彼の日常3

「夜、露に濡れる、絹糸を、し、し?魚…?」


鍛えられた足の間に座り


「白魚」


「白魚のような、手で梳けば、それはまるで、海に、にー。」


その黒髪を撫で


「海が、だよ。」


「海が、太陽の光を、うつし輝くかのように、……。」


頭のてっぺんにキスを落として


「キラキラと。」


「うぅ、難しいです~!」


「頑張って、キーナ。」


耳に唇を付けて囁く。


「………何をしておられるのですか、殿下。」



中庭にある大樹に寄りかかり、黒髪の少女を膝の間に置いているのはルディースル国第一王子、ミュシュライであった。


なんと言うか…何処からどう見てもバカップルのイチャこきにしか見えない。


「やぁグエンダル。見て分からないかい?キーナに文字を教えているんだよ。」


ね?とキーナの下腹の前で指を組む。


国の文字の認知度はほぼ100%だが、記憶が無いキーナは1から勉強しているらしい。



「何故それを貴方が…。」


自分の所には…。


「殿下!グエンさんには言わない約束って言ったじゃないですか!」


それまで突然現れたグエンダルに見惚れていたキーナがハッ、と意識を戻し言う。


言えばすぐに、周りの気温が下がる。


「お前が文字を読めようが読めまいが私は毛頭興味ない。だが、一介の侍女如きが殿下の手を煩わせるとは。」


「…っ、それは…。」


「陛下だけではなく殿下まで。どう取り入ったか聞いてみた…。」


そこで言葉を切り、グエンダルは体を右に捻る。


次の瞬間、グエンダルが居た場所をキーナが先程読んでいた分厚い本がもの凄い早さで通過した。



「私のキーナを虐めないでくれないかな。好きで教えているんだ。良いだろう。」


振り投げた姿のまま言うのはミュシュライ。



「…そうですか。ならば私には関係ありません。失礼します。」


そう言ってグエンダルはその場を後にしてしまった。



「あ~嫌だ嫌だ。男の嫉妬は可愛くないね。」


「え?」


「何でもないよ。ほら、キーナ。そんな悲しそうな顔しないで今は勉強しよう?」


キーナは私にとって妹の様だと何度言えば解るのだろうかね。いや、理性は理解しているはずだが。


ニコリと笑い、再び頭を撫でバカップル(偽)に戻る二人。


ボソッと呟いた言葉はグエンダルの後ろ姿を見つめていたキーナには聞こえなかった。




++++


「いやぁ…今日のグエンは一段と鬼だったな。」


「本当ッスよ~!副隊長が止めてくれなきゃ俺失神してました!」


「俺は失神しました…。」


「アレン副隊長~、何とかして下さいよ。」


「それは無理だ。」


午後の稽古、何があったかいつもより不機嫌なグエンダルによって扱かれた隊員。


「多分キーナちゃん絡みな気がするんだけどな…。当人で何とかしてほしいもんだ。」


その当人であるグエンダルは隊員を扱きに扱いた後、執務室で報告書をまとめていた。


『グエンさんには言わないで』

その言葉を思い出すだけで苛々する。


いつもは追い払ったって纏わり付いてくる癖に。否、殿下にあのような事をさせるなんて。


第一、殿下も殿下である。

将来一国を背負う者が身元も解らぬ侍女と馴れ合うなど。キーナも満更でもなさそうだ。


苛々を仕事へぶつける。


数枚の封書を確認すると一枚見慣れない書がある事に気付いた。


それを手に取り中を見る。


それは。


フッ。

読み進めていたグエンダルの口からは溜め息とも取れる空気が漏れる。


本当に、馬鹿だ。



後日、キーナの元にグエンダルへ送った筈のラブレターが送り返されて来た。


文法の間違いと字の汚さを赤インクで直された文。


ただ最後には


――直接言え阿呆――


の一文が添えられ、それを見たキーナが近付くな令が出るまで纏わり付いたのは言わずもがなである。



(貴方にラブレターを書きたいから文字を、なんて言えないでしょう)



殿下は26歳


幼い頃亡くなった妹(姫様)とキーナを重ねてます


という設定




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