表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

佐藤覇天威は今日もハイスクールライフを楽しむ

作者: 朝月夜

 初めましての方は初めまして。朝月夜あさづくよではなく、朝月夜あさつきよると申します。


 初めて短編小説を執筆してみました。拙い点もあるかと思いますが、よかったら読んでみてください。

 僕の名前は佐藤さとう覇天威はあまい

 こう高等学校の二年生だ。

 本日も楽しい高校生活ハイスクールライフを送るべく、登校中。


 うん、今日もいい天気だ。たとえ急に雨が降っても、折りたたみ傘を持っているから安心だね。登校から下校まで、嫌な気分にならずに過ごせそうだ。

 校門に差しかかったところで、クラスメイトの高峰たかみねさんと手野てのくんの姿が目に入った。


「ねぇ……たまたまラバーバンドのコンサートチケットが余ったんだけどさ……よかったら一緒に行ってやってもいいよ? どうせ暇でしょ?」

「えっ? いや、いいよ。僕と行ってもつまらないと思うし……高峰さん、友達と行きなよ」

「い、いや、でも手野アンタ……ラバーバンドの曲、良かったって前に言っていたでしょ? せっかくだから誘ってやったの! ありがたく感謝しなさい!!」

「ああ……そうだね。せっかく誘ってくれたし、行くよ。ありがとう、高峰さん。僕のために誘ってくれて」

「は、はぁっ!? 違うから! 別にアンタのために誘ってないからね!? たまたまチケットが余って、アンタが興味ありそうだったからってだけ! 勘違いしないでよね!」

「え? うん……そうだよね。僕のためじゃないよね。変な言い方してごめん」

「いや……チガクハナイケド……でもこれで……デートは誘えた」

「うん? 何か言った?」

 ――どうやら今日も、高峰たかみね美花みかさんは地味な男の子である手野ての渡独とどくくんにアタックしているらしい。

 でも手野くんは彼女の気持ちにまったく気づいておらず、相変わらず高峰さんは振り回されているようだ。

 好きなら、さっさと告白しちゃえばいいのに……なんて思いながらも、僕は二人の恋に特別興味があるわけじゃない。

 それでも、結ばれるなら、それに越したことはない。

「(二人が結ばれますように)」


 そう思いながら、校舎の中へと足を進める。


「うおおおおお!! 今日も素振り1000回いくぞ!! 毎日の積み重ねが、目標実現への近道だぁ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」

「目指せ、甲子園優勝!!!」

 校庭で、厚井あついかんくんの声が響く。

 彼は三か月前に転校してきたばかりの生徒で、情熱の塊のような人間だ。

 かつて弱小と呼ばれていた野球部は、彼の加入をきっかけに急成長。部員がたった七人しかいなかった頃から、今や甲子園出場候補にまで名を連ねるようになったという。あらためて説明すると凄いな。

 甲子園に行けるなら、ぜひ行ってほしい。陰ながら、僕も応援している。

「(経威光高校の野球部が甲子園に行って優勝しますように)」


 そして、僕のクラスであるA組の教室前まで来た。

 ふと、教室に入る前に、隣のB組を見る。

 しかし、それにしても、隣のB組は本当に静かになったなぁ……

 以前は、笑い声や怒鳴り声がA組まで響くほど騒がしかったB組。特に阿久井あくい亜留あるくんがいた頃は、まさに〝魔境〟と呼ぶにふさわしいクラスだった。

 授業妨害、教師への反抗、いじめ、騒音……そんなB組も、新任教師の佐衣子さいこはす先生が来てから、変わった。

 阿久井くんは突然不登校になり、他の不良たちもみるみる静かになっていった。

 ……噂では、佐衣子先生は快楽殺人者にして、暗殺術を身に着けた元殺し屋ではないかと言われているが、真偽は不明だ。

 いずれにせよ――世の中、悪いことはしない方が無難だな、と思った。


 朝のホームルームが始まる。

 先生が出席確認を取り始めた。

佐藤さとう覇天威はあまいさん」

「はい!!」

 いつも通り、元気よく返事をする。

社陸しゃりくさんは今日もお休みですね。……次、鈴木すずき一郎いちろうさん」

「はい」

「次~~~」

 こうして僕の一日は始まる。いつも通りの、学校生活の始まりだ。


 …… …… ……

 …… ……

 ……


 キーンコーンカーンコーン――

 放課後のチャイムが校舎に響き渡る。

 もう今日の授業も終わりか。……いや、楽しい時間はあっという間だ。

 僕のハイスクールライフには、特別なイベントなんてない。

 いつもの授業、いつもの休み時間、そして、にぎやかで騒がしい友人たち。

 でも、それでいい。

 平穏で、穏やかで、楽しい毎日。それが、僕にとって一番の〝青春〟なのかもしれない。

 帰りの電車の中、僕は本の続きを読む。

 ちょっと前までは、スマホをいじっていたけれど、最近は読書にハマっている。

 家では集中できない読書も、電車の中なら不思議とできる。できることが限られているからこそ、逆に集中できるんだと思う。

 そのおかげで、積んでいた本がどんどん解消されていく。


 …… …… ……

 …… ……

 ……


 家に帰って、夕ご飯を食べた。風呂にも入ったし、歯磨きも済ませた。

 うん。今夜はもう、寝よう。

 明日は、どんなハイスクールライフを送れるのだろう?

 僕は、ちょっとだけワクワクしている。

 毎日同じように見えるけれど、同じ一日なんて、一度だってないだろう。

 高峰さんと手野くんの関係が、もしかしたら明日、少し進展しているかもしれない。

 厚井くんがいれば、経威光高校の野球部が本当に甲子園に行けるかもしれない。

 行方不明の阿久井くんだって、明日には見つかるかもしれない。

 明日の授業では、何を学べるだろう?

 読んでいる本もそろそろ終わりそうだから、次に読む本を考えるのも楽しみだ。

 変化はいつも、静かに、でも確かにやってくる。

 だから僕は、明日も楽しいハイスクールライフを送るために、今夜は眠る。

 おやすみなさい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
毎日同じように見えるけれど、同じ一日なんて、一度だってない。本当にその通りですね。何気ない日常がいかに大切なものなのか、教えてくれる作品だと思います!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ