10.岡山で各地の郷土料理を楽しもう!
このエッセイで以前「蕎麦が食べたい!」と私は主張しました。
その後、東京へ帰省した際、無事に念願の蕎麦屋に行ったのです。
私の蕎麦への執念を知っている夫は、快く同行してくれました。
「ああ、この濃い味の蕎麦つゆ! こういう天ぷら蕎麦が食べたかった!」
夫と仲良く冷酒を飲みながら、笑顔で懐かしい味の蕎麦を食べます。
西日本の方々には濃すぎる味かもしれないのですが、私にとっては生まれ故郷の味。きっと何年経っても東日本の蕎麦が大好きに違いありません。
蕎麦を食べ終わると、店員さんが蕎麦湯を運んできてくれました。蕎麦湯を飲むのも久しぶりですね。
「え、これはなに?」
「蕎麦湯だけど……知らないの?」
なんと夫は蕎麦湯を知りませんでした。もともと蕎麦屋が少ない地方に住んでいると考えれば、馴染みがないのも当たり前なのかもしれません。
「お蕎麦を茹でた汁は栄養があるから、こうやって濃い蕎麦つゆで割って飲むと美味しいよ」
「へえ、そうなんだ。これって全部飲んだ方がいい?」
「全部飲んだら塩分が多すぎるかも。自分の飲める範囲で大丈夫だよ」
夫は初めて飲む蕎麦湯の作法がわからない様子。蕎麦湯の正しい作法があるのかわかりませんが、私は個人的に蕎麦湯で蕎麦つゆを割ったものを最後に飲むと、身体が温まって充足感が得られます。
私が岡山で知らないことがいっぱいあるように、夫は東京で知らないことがいっぱい。
一回、飛行機で岡山から東京の羽田空港へ行きました。空港近くのホテルを予約していたので、外に出てホテルまでの道を歩いていたとき。
「潮風を感じる!」
と夫が言い出しました。
「羽田空港は東京湾が近いからね。……ああ、そうか」
岡山でも海が近いところを夫とよく通りますが、瀬戸内海沿いなので、波も風も穏やかなのです。東京湾は太平洋の一部ですから、段違いに潮風や磯の香りを感じます。
「同じ海に近いところでも、瀬戸内海と太平洋だとずいぶん感じ方が違うんだね。私も改めて知ったよ」
同じ日本でも、離れていれば料理も言葉も、潮風まで違いますね。夫は生粋の岡山県民なので、あまり他の地方のことを知りません。
岡山へ帰ったら、夫が食べたことのない各地の郷土料理を作って、いろんな土地に思いを馳せようと話しました。
こうして我が家では岡山の料理に加えて、東京の深川飯や石川県の治部煮、北海道の芋もちなど、いろんな郷土料理を作って夫婦で味わっています。
みなさんの住んでいる地方では、どんな郷土料理が有名ですか?
美味しい料理をご存じでしたら、ぜひ教えてくださいね!
【おわり】