35.VS風王刃の使い手
「来い、平民。この私自ら本物の“強さ“を教えてやろう。」
模擬戦場に移動したラティエルとゲイル。
「改めて名乗りをあげよう。我が名はゲイル・パトリア。神聖クラウゼル皇国の風王騎士団団長にして、風王刃流第13代目免許皆伝。貴様も名乗りを挙げよ。」
「俺の名前はラティエル。エスフォート王国王都ギルド所属、A級冒険者『万喚』のラティエルだ!」
2人が名乗りを挙げ、戦闘体制に移行する。
「ジーク。開始の合図をしろ。」
「仕方ないですね。それでは、始め!」
ゲイルがラティエルに肉薄する。
「壱の風。『風王閃』!」
「速いっ。『空気』『壁となれ』。」
剣に風を纏わせながら近づくゲイルから、後退しながら空気の壁を立てるラティエル。
「ふむ、存外に良い判断。ただの平民というわけではないようだな。ギアを上げるぞ?
ーー参の風。『風王斬』!」
翠色の斬撃が走った。
「『空気顕現』。『武装召喚』。『空武装』!」
ラティエルの新技。『空武装』。それは、その名の通り、空気の武装を生み出すもの。空武装を身に纏うことにより、詠唱なしに、空気を操ることができる。
「何もないところから、武装を?召喚士か。」
(召喚士相手の定石。それは、詰めるっ!)
ゲイルは超接近戦を狙う。
「いいのか?
ーーそこは俺の間合いだ。」
ゾクッ!
ゲイルの体を悪寒が…、久しく味わっていない恐怖が巡る。
「『空断』。」
それは、防御不可にして、不可視の斬撃。空気を最大限まで固め、薄い空気の層を作り、空を断つ。
「なぁっ!肆の剣『風王縮』!」
本来、敵との距離を詰める技を、ゲイルは後退のために使用した。
(こいつはっ、今まで私が相手してきた弱者とは“何か“が違う!)
(うん、新技の練習。いい感じだな。結構使える。)
「長期戦は危険だ。早急に仕留めるっ。伍の剣『風王断』ッ!」
ゲイルの持つ剣を緑色の光が覆う。
「鋭い一撃だな。」
ラティエルが空武装で生み出した盾に意識を集中させる。
「っ!」
剣を構えながらゲイルは思考する。
(空気が変わったっ。ーーまるで目の前に“巨大な盾“があるかのように。)
ゲイルが剣を振り下ろした。
ーーだが、何もなく見えるところで、剣が止まる。
ギンッ!
(硬いっ!断ち切れ…ない!)
光が霧散する。
「貴様は危険だ。ここで仕留めるっ!漆の剣。風王刃流奥義!『風神」
ゲイルが力を溜め、剣を持ち上げた。
ーーだが。
「団長。そこまでですよ。模擬戦場で奥義を使用するつもりですか?」
「ゲイル、そこまでにしとけ。それ以上は、“模擬戦“じゃ済まなくなるぜ。」
ジークとガレンがラティエルとゲイルの間に入った。
「ーーくっ、認めざるをえん。私は休憩させてもらうぞっ!」
剣を腰に仕舞い、扉を荒々しく開け、ゲイルは逃げるように去っていった。
「ラティエル、お疲れさん。」
「ああ、それにしても…。」
「どうかしたのか?」
「ーーあの人強くなかったか?」
ラティエルが意外そうな表情で呟いた。
「正直、あそこまでとは思わなかった。剣技も洗練されていたし、奥義があるんだったら、ちょっと危なかったかもな。」
「まあ、あれでもこの国屈指の実力者だからな。」
「でも、新技の感触も上々。どんどん使えそうだ。」




