28.悲劇
「フレミアァッ!」
ガレンの手はフレミアに届かず、フレミアは吹き飛ばされた。
「ガレン殿。今はその場合じゃない。」
「わかってる。こいつら全員逃さねえ。」
ガレンの表情からは強い怒気が感じられた。
「『風霊の怒り』。」
「一つ、余談だ。デカブツ。俺の家はなあ。風の愛し子って言う家系でよ。文字通り、風に愛され、風を愛す家系なんだ。」
“突然何だ。“
「だからァ、そういう血ってことだよ。」
ガレンが手に、翠の光を浮かべながら激怒する。
「俺はこの血のせいで小さな頃から自由じゃなかった。今、やっと。
ーー自由と幸せが俺の手元にあったんだ。あってくれたんだよ。」
「それをお前は手放させた。
ーー何が言いたいかわかるか?」
“わからんな“
「死んどけってことだよ。」
長き歴史が唸りを上げる。
「我は風を統べる者。
我が歩む道に風は逆らわず、
我が立つ場所に風は集う。」
槍が、翠色に輝く。
「守れなかった誓いがある。
俺はそれでも風を愛そう。」
風が唸りを上げる。
「我は風に選ばれし者。
我は風に抗わぬ者。
我は風を振るう者。」
最後に、低く。
「聖霊リゲル。
俺の名を許せ。」
そして。
「――『星風の断撃』!」
風の聖霊リゲルの力を借りた、原初の一撃。
星をも断つその一撃は、空間そのものを裂くが如く走った。
轟音と共に、翠色の巨人たちは次々と崩れ落ちる。
十体、二十体、三十体――。
暴風が広場を飲み込み、石畳が剥がれ、建物の屋根が吹き飛んだ。
やがて風が止んだ。
そこに立っていたのは、ガレンただ一人だった。
「……ハァ、ハァ……。」
肩で息をするガレン。
だがその目は、まだ殺意を宿していた。
「終わり……じゃねえよな。」
煙の向こう。
瓦礫の中で――
ただ一体。
あの“ひと回り大きい巨人”だけが、立っていた。
その身体には深い裂け目が走っている。
だが、倒れていない。
「……マジかよ。」
「これでも倒れないのか…。」
ジークが息を呑む。
巨人は、ゆっくりと顔を上げた。
そして。
“傷を負った。ここで計画が途切れるわけにはいかん。撤退する。”
翠色の盤が、再び空中に展開される。
「やらせると思ってんのかぁ!」
ガレンが再び全身に魔力を漲らせる。
だが、全身から翠色の光が霧散した。
「なっ。」
「チッ、魔力切れかよ」
「ガレン殿、ここは引くべきだ…!」
「ジーク、ここで逃せばまた起こる!」
「だが、ガレン殿は魔力切れ。私ももう気力がない。」
「そういえば騎士剣技は気力を使うんだったな。」
「あぁ、向こうもおそらく戦うつもりはないだろう。ここは…退くべきだ。」
ジークが下した苦渋の決断。
「なら俺はフレミアを探そう。」
「ああ、私の小隊も同行しよう。」
「助かる。」
風の巨人はいつの間にか消えていた。




