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18.昨年の風霊祭

「まず。」

ライムは静かに切り出した。


「この国に来てからのことを、話してくれるかい?」

「ああ。」

ゴルは短く頷く。


「俺は、知っての通り炎属性だ。」

「この国に来たのは……お前に叩きのめされてから、十年後だ。」


「それで?」


「ここは、治安がいい国だと聞いていた。」

「……だが、俺を待っていたのは――差別だった。」


重く落ちたその言葉に、部屋の空気が静まり返る。

「俺は、この国で信用を集めた。」

「多くの人間を助けた。」

「だが、返ってきたのは裏切りだった。」


ゴルは、拳を握る。

「助けた人間でさえ、俺を“無階級者”と蔑んだ。」

「どれだけ救っても、返ってくるのは罵倒だけだ。」

「……俺は嘆いた。」

「そして、諦めた。」


一拍。

「――その結果が、今の俺だ。」


語り終えたゴルの顔には、怒りよりも疲労が残っていた。


「風霊祭というのは。」

ライムが話題を変える。

「どういう祭りなんだいー?」


「風霊祭は、その名の通りだ。」

「風の精霊に祈りを捧げる祭りだな。」

「祭りから一年、平和に暮らせるように……それを願う。」


「去年の風霊祭について、何か知っていることは?」


「あ?」

ゴルが眉を上げる。

「……お前も、嗅ぎ回ってんのか?」


「“僕も”、ということは。」

ライムの目が細くなる。

「他にも?」


「ああ。」

「名前は知らねぇが、階級は高そうだったな。」

「やたらと、行方不明になった人間がスラムにいないか聞いてきやがった。」


「それで?」

「そいつが来たのは、風霊祭の二ヶ月後くらいだ。」

「一ヶ月前までは見かけたって答えて、追い返した。」


「その人物は、その後どうした?」


「性別、属性、行き先……一通り聞いてきたな。」

「ちなみに、そのスラムにいたという人物は?」


「ヒュートって名前だ。」

「依頼で向かった先で見つけた。」

「森に倒れてたから、体調が回復するまで、ここに置いてやった。」


「……そうか。」

ライムは、わずかに視線を落とす。

「では。」

「フレミアという人物を、知らないかい?」


「あぁん?」

ゴルが怪訝そうに顔を上げる。

「……なんで、オメェがあいつの名前を知ってる?」


「知っている、ということだね。」


「……ああ。」

「知ってるぜ。」

「一年前の事件で、行方不明になった。」

「捜索は……されなかったみたいだがな。」


「それは知っている。」

ライムは淡々と続ける。

「どういう経緯で知り合ったのか、聞かせてもらおう。」


「あいつは、A級冒険者だった。」

「同じ炎魔術師でな。交流はあった。」

「この国に来て、知り合ったのは……二年前くらいだ。」

「一年の付き合いだったが、楽しかった。」

「周りを楽しませる才能がある奴だったよ。」


ゴルは、ふっと息を吐く。

「……話が逸れたな。」

「依頼先で、一緒になったのが始まりだ。」


「なるほど。」

ライムは一つ頷き、次の質問へ進む。

「じゃあ、次だ。」

「この国そのものについて。」

「聞かせてもらおうか。」

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