17.因縁との遭遇
「テメェがいくら虚勢を張ってもなぁ!」
「真に強え奴には勝てねぇんだよ!」
ヤールが叫んだ、その瞬間。
バンッ!
拠点のドアが、蹴り破られた。
「ボスゥ!」
「よぉ、カヌスぅ。」
強面の髭を蓄えた男が、低い声で言う。
「盗品と……俺の子分を、返してもらおうか。」
「ひっ…。」
「おぉ。」
ライムは、どこか懐かしそうに目を細めた。
「確かに、あの頃の面影があるね。久しぶりだ。」
「あぁ?」
男が眉をひそめる。
「何、馴れ馴れしく声かけてやが――」
そして、ライムの顔を正面から見た瞬間。
「……おい。」
「おいおいおい……まさか……」
男の表情が、みるみる青ざめる。
「……『神剣』か!?」
「なんで……なんで、こんなところにいるんだよ!!」
「久しぶりだね、ゴル。」
「20年ぶりくらいかな。元気にしていたかい?」
「元気なわけねぇだろぉ!!」
ゴルは、ほとんど悲鳴のように叫んだ。
「一週間に一回は、お前の悪夢を見るんだぞ!!」
「何のために、この国に来たと思ってんだぁ!」
「なんで、こんなところに来てまで……お前と……!」
「とりあえず。」
ライムは淡々と言う。
「カヌスには、手を出させない。」
「貴重な情報源だからね。」
「……逃げても無駄、か。」
ゴルは歯を食いしばる。
「……やってやるよぉ!」
「――『鬼剣オーガ』!」
禍々しい気配を放つ剣が、ゴルの手に現れる。
「相変わらず、嫌なオーラだ。」
「僕は、その剣が嫌いだよ。」
「知ったこっちゃねぇんだよ!!」
「死んでもらうぞぉ!」
「――『火焔付与』!!」
オーガに、炎が纏わりつく。
「――『蒼帝剣ラピス』。」
「『水よ、我に祝福を。』」
ライムの体を、水が静かに包む。
「俺もお前の剣は嫌いだぁ!!」
「――『烈鬼焔刃』!!」
ゴルが、目にも留まらぬ速さで肉薄する。
「……少し、速くなったね。」
「炎も、強くなっている。」
ライムは落ち着いたまま、剣を振る。
「――『蒼帝斬』。」
紅と蒼の軌跡が、空間を切り裂いた。
「まぁ。」
「斬るだけだけど。」
次の瞬間、立っていたのは――ライムだけだった。
「……そんな……」
ヤールが呆然と呟く。
「ボスが……!」
「安心して。」
「峰打ちさ。」
「よくも、ボスをぉ!!」
「話、聞いてなかったか。」
ライムがラピスを持ち上げる。
「じゃあ、仕方ない――」
「待て、ヤール。」
倒れたまま、ゴルが言った。
「……俺は、生きてる。」
「おや?」
ライムが少し意外そうに言う。
「意識があるのかい?」
「なんとかな。」
ゴルは息を整えながら続ける。
「ヤール、落ち着け。」
「……ここで暴れたら、死ぬだけだ。」
「ボス……!」
「お願いだからぁぁ!!」
カヌスが悲鳴を上げる。
「俺の拠点で、これ以上暴れないでぇ!!」
拠点は、すでに戦いの余波でボロボロだった。
「おっと、失敬。」
ライムは剣を下ろす。
「さて、ゴル。」
「聞かせてもらおうか。」
「ああ……。」
ゴルは、諦めたように息を吐く。
「……俺も、頭が冷えた。」
「じゃあ。」
「質問には、正直に答えて。」
「危害は加えないよ。」
――こうして、
ライムによる尋問が始まった。




