4.風を信じますか
「あぁ、そうだ、聞くのを忘れていました。」
一拍置いてヴァルドが問う。
「あなたは、風を信じますか?」
「ああ。でも、この国が信じる風と、俺が信じる風は違う。この国の風はただ在るだけだ。
俺が信じる風は、流れる風だ。この国の風は風とは言えない。」
「へぇ。ーーそれはこの国への宣戦布告ということでしょうか?」
「いや。戦いたいわけじゃない。俺が信じる風とこの国の風は違うって伝えただけだ。俺は質問に答えたつもりだったが。」
「まぁ、この件は上層部に伝えないであげましょう。あなたたちは兄の友人なのでしょう?見逃してあげます。
あと、ひとついいことを教えてあげましょう。この国ではそれ以上は異端に扱われます。兄がそこまで気にいる人は珍しいですからね。」
そう語ったヴァルドは、ミストへと視線を向ける。
「それで、あなたは?」
「うちも、ただ在る風は信じないっす。うちの信じる風は流れる風っす。」
「まあ、あなたたちは階級者の資格を持っている。あなたも見逃しましょうか。
そこの2人は、風が感じませんね。光、でしょうか。」
「ええ。そうですが何か。」
「扱える力は強いですが、風がないのなら、まあよくて3級といったところでしょうか。」
「随分と失礼だね。」
「風を持たぬ者を丁重に扱う必要があるのですか?」
その言葉の直後。教会の空気が冷える。
「ここの空気、変だな。」
ぼそっとラティエルが呟く。
「俺の名前はラティエル。覚えといてくれ。じゃあな。」
そういってラティエルたちは教会を出る。
「はぁ。なぜ兄さんはあのような異端に『友の証』を?理解ができません。」
ヴァルドは首を傾げながら兄に文句を言っていた。
「あの気さくそうなガレンさんの弟があれって…
いっちゃあれっすけどちょっと驚いたっす。」
「僕も否定はしない。けど、あれは、ヴァルド殿の人格というより、
この国の仕組みに大きく影響されているように見えた。」
「ガレンも言ってたが、この国は風が止まっている。
多分、ここは風で縛るが故に、風が止まっているんじゃないか?」
「私も、そう思います。この国は聖霊を敬う。精霊の力の一端を知る私からすると、
ここの流れは不安定です。秩序を保っているように見えるけど、そうではない。そう感じました。」
4人で話し合う。
「まぁ、いったん、今日泊まる宿を探そうか。」
「そうっすね〜。」
4人は再び歩き出した。
「え、ここも空いてないのか?」
「悪いね。風魔術師でも今日は無理さね。そろそろ『風霊祭』の季節だからね。宿は多分どこも埋まってるよ。」
「そうか。無理を言って悪いな。」
「いいんだよ、泊めてあげられなくて悪いね。」
「どこも『風霊祭』っていうののせいで空いてないっすね。流石に野宿はきついっすよね。」
「どうしようか。」




