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3.教会での一幕

「じゃあ入るか。」


そう言って、教会へ足を踏み入れた4人。


「こんにちは。おや、初めて見る顔ですね。この国にお住まいの方ですか?」


「いや、違うぞ。」


「そうですか。教会へは…何をお求めで?」


「ちょっと知りたいことがあってな。」


「そうですか。では何か質問があったら聞いてください。」


そう、細めで優男そうな神官姿の男が言う。


「じゃあ、あなたの名前。」


「私の名前ですか?私の名前はヴァルド・ゼファ。神官をこの教会でやらせていただいております。」


「ヴァルドさんか。よろしく。」


「ええ。よろしくお願いします。」


ヴァルドが微笑む。


「ちなみになんだが、ゼファっていうと、ガレンの関係者か何かか?」


「おや?兄をご存知で…って、知ってて当然ですか。」

「そうです、ガレン・ゼファは私の兄です。」


ヴァルドが答える。


「それで、他には?」


「この国では何を信じているんだ?」


「……この国は、風を深く信仰し、聖霊を神としています。」

ヴァルドは、祭壇の方へ視線を向けたまま語る。

「風は導きです。

 時に人を救い、時に試す。

 そして――選びます。」


「選ぶ、か?」


ラティエルが問い返す。


「ええ。風が強く吹く者。

 風に愛される者。

 それは、この国に必要とされるべき存在だという証です」


ミストは、無意識に拳を握った。

「……じゃあ、風に愛されない人は、どうなるんすか?」


ヴァルドは少しだけ考え、穏やかに答える。


「耐えるのですよ。

 それもまた、信仰ですから」

にっこりと微笑むヴァルド。ミストにはそれが恐ろしく感じた。


その言葉に、教会の空気がわずかに重くなる。

「風が止まっているのも、かい?」


今度はライムが尋ねた。


「はい」

即答だった。


「我々は信じています。

 これは罰ではなく、沈黙なのだと。試練でもあるのだと。」

「沈黙?」


「ええ。

 神が言葉を失うほど、人が風を求めすぎた結果です。神はお怒りになった。その結果、沈黙し、我々に試練を与えた。」


ラティエルは、何も言わなかった。


ただ、空気に手を伸ばす。

——風は、確かに、そこに在る。

だが、

祈られてはいない。動いてもいなかった。


「聖霊の中でも、風の聖霊リゲル様を特に信仰しています。伝承に残る愛くるしいお姿。あの方はもっと崇められるべきです。

 しかし、いつになっても我々の前に姿を表したりはしません。ああ。私はこんなにも祈っているのに。」


『アタシはこんなの望んでねえ。イカロスの風が吹いていない国になるなんて。』


リゲルが呟いた。


教会には静寂のみがあった。

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