1.いざ、神聖クラウゼル皇国へ。
5章開始。
……静かだ。
精霊界特有のざわめきも、
エルフの森にあるはずの湿った空気もない。
代わりにあるのは、澄みきった風と、
どこか張り詰めた気配だった。
精霊界を出た一行は、風を感じていた。
ーー見上げると、剣の紋章が刻まれた、そびえ立つ巨大な城壁があった。
「……ここ、違うっす。」
ミストが足元の地面に視線を落とす。
「精霊界の門って、エルフの国にあったはずっすよね」
ミストが問う。
『そりゃそうだ。お前ェらは世界に触れた。』
ルクスが一拍置く。
『ーー精霊界から戻ったんじゃねぇ。世界に選ばれたんだァ。』
ルクスの発言の直後、静かな風がラティエル達を撫でる。
ーーこの風に自分は呼ばれた。ミストはそう感じた。
『ここは神聖クラウゼル皇国。剣バカこと、『風の原初』イカロス・クラウゼルが作った国だァ。』
『ってことで、俺とリゲルは、戦いの時以外は隠れておく。』
「なんでだ?」
『この国は聖霊を神格化している。まぁ、見りゃわかる。ここは風が選んだ国だ。お前ェらにとっては居心地がいいだろうよ。特にリゲル。お前は絶対見つかるな。』
『わーってるよ。』
『聞きたいことがありゃ聞け。わかる範囲は答えてやるよォ。』
そう言ってライムの元にルクスは引っ込んだ。
『そんじゃあ、アタシも。』
そう言ってライムの懐に引っ込むリゲル。
「チッ!ずるいっすねぇ!」
怒るミスト。
「それじゃあ、進もうか。」
「はーい。」
城壁の真ん中にある巨大な門の前に来た一行。
「入国者か。この国にきたことはあるか?」
門の警備をする兵士が聞く。
「初めまして。この国にはきたことはないな。」
「後ろの奴らもか?」
「うん、ないよ。」
「ないっすね。」
「ないですね。」
「だ、そうだ。」
「ふむ。新入国者か。階級は、、、おっと、知らないんだったな。すまない。属性と職業を。」
「俺とこのミストは風。後ろの、ギル、、おっと、ライムとリヴィウスは光だ。」
「ほう。いい属性を持っているな。職業は?」
メモを取りながら兵士が言う。
「俺とミストとライムは冒険者。リヴィウスはそのギルドの受付嬢だ。」
「階級は?」
「俺はA級。ミストとライムはS級だ。」
「おいおい。とんだ大物だな。ライムっていうと、あの『神剣』か?」
「知っているのか?」
「ああ。もちろん。大物だぜ?前のエスフォートの大戦の英雄と言ったら、『神剣』だ。」
「へー。やっぱギル、、ライムってすごいんだな。」
「うっし、書き取り完了だ。不審なものは持ってなさそうだし、ギルドカードを一応見せてくれ。」
「ああ。」
ギルドカードを見せる面々。
「うおっ、ほんとにSじゃねえか。」
面食らう兵士。
「悪ぃな、疑ってたわけじゃないんだ、ビビっただけだ。ようこそクラウゼル皇国へ。ここは風の国。風魔術師は優遇されるぜぇ?」
「それにしても、相当な悪人ヅラだな。」
「あぁ?まぁ、よく言われる。これもバイトだしな。これでも一応S級冒険者だ。これ、許可証。」
そう言いながら許可証を渡してくる兵士。
「名前は?」
「ん?俺の?」
ラティエルが頷く。
「俺は、ガルド・ゼファ。風魔術師だ。
堅苦しいのは嫌いだ。気楽に行こうぜ。よろしくな〜。」




