2.無知
3エピソード目です。人と会う回です。
よし、これで光が見えてきた。『空気』が有用性の高いスキルということはもうわかったから、あとは『空気』の使い方をしっかりと理解するだけだ。ちょうどいいところにゴブリンがいる。『空気』の練習相手になってもらうぜ!でもなんか強そうなゴブリンだなあ。
「『空気』」
その瞬間、俺の周りが綺麗な色になった。なんというか、透明な、綺麗な色だ。透明でいてはっきりと見える。
「すげえ。」
『グワー!』
「やべっ、ゴブリンに気付かれた。試すか!『エア』!剣となれ!」
俺のイメージする剣は!
ラティエルは、本物の剣を見たことがなかった。剣は、物語で読むような剣しか知らないのだ。そう。魔を滅するような剣や、呪われた剣や、神に使わされた剣とか。
そこにあった剣は、神々しくて、いかにも強そうな剣だった。
魔力がごっそり持って行かれて、少し怠い。
『ギャ、ギャオ?』
ゴブリンも狼狽えているようだ。俺もわからない。剣を空気で作ったらこんなかっこいい剣ができたんだから。
「まあいいや、喰らえ!」
ザンッ!
ゴブリンが斬られ、溶けた。
「えっ?切れ味が良すぎるんじゃないか?」
ゴブリンがバターを切るぐらい簡単に切れたんだが…。
魔力がごっそりと持ってかれた。でもこれ、なんかみたことがある気がするんだけどなあ。
「な、な、な、そこのアンタ、何を持ってるんすかーーー⁉︎」
「え、人間?」
「はい、人間っす。」
「なんでこんなところにいるんだ?」
「それはこっちのセリフっすよ。ていうかアンタ、それもしかしなくてもエクスカリバーだったりしないっすよね?」
「いやいや、そんなわけないじゃん。」
「そうっすよねえ。」
(ガチなんなんすか、この人⁉︎なんかエクスカリバーに似てるもん持ってるし、変な人っすねえ。)
なんだコイツ…。
「ちょっ、アンタ!なんだコイツみたいな顔でウチを見ないでくださいっす!」
「いや、そんな顔してないけど。」
「誤魔化しは効かねえんすよ!ウチはれっきとした人間、一般人っす!」
だいたい一般人って言ってるこういう怪しい身なりのやつは不審者なんだ。
「『鑑定』」
名前 ラティエル
種族 人間
属性適正 風
魔術適正 空気(YM)
性 男
Lv 5
HP25
STR D
VIT D
AGI C
INT A
DEX B
MND C
LUK D
「えっ、アンタもしかして、ユニークマジック使いっすか⁉︎」
「え、そうだけど。」
「あ、でも弱そうな名前っすねえ。『空気』って!」
コイツ、人が気にしていることを…。
「でもこの剣、そのお前の弱そうな魔術っていたやつで作ったんだぞ?」
「そんなんどうせ、見た目だけでしょ、ただの剣っすよ〜。」
「ぐぬぬ」
「ていうか、アンタ、レベル低いっすねえ」
「はあ?今だってゴブリン倒したし!」
「え、待ってっす。アンタ、そのゴブリンって宝石つけてませんでした?」
「え、付けてたけど。」
(待ってっす。この人まさか、Lv5で、ハイゴブリンを倒したっすか?いや、そんなわけないっす。ていうかこの剣も見てみないとっすね。)
「『鑑定』」
空剣エクスカリバー(仮)
従来の聖剣のような悪を滅する力は持っていないが、その切れ味は、聖剣をも上回る。
「は?」
「うん、どした?」
「ちょっと待ってくださいっす!アンタ絶対おかしいっすよ!」
「え?確かに『空気』は強いけど、俺は弱いもんなあ。この剣もお前が言うには普通の剣だし。」
「いや、違うっす!強すぎるって意味で言ってるんすよおおおお!」
「え?どこが?」
「いや、だって、Lv5でハイゴブリン倒すなんておかしいじゃないっすか!」
「いや、あのゴブリンを倒した時はLv2だったぞ?」
「はああああ?おかしいっす!アンタ絶対感覚めっちゃズレてますよ!いや、Lv2でハイゴブリン倒すって、どんだけ規格外なんっすか!アンタ分かってます?ハイゴブリンって、討伐難易度Bっすよ?アンタみたいなLv5の人間が倒せる強さじゃないんすよおおおおおお!」
「お前は倒せないのか?」
「そりゃウチはちゃんと強いから倒せますよ?ウチはLv結構高いんすよ?こう見えてS級冒険者なんっすから。正直ハイゴブリンってB級冒険者とかC級冒険者パーティぐらいで倒せるっす。でもアンタ、冒険者でもないっすよね?」
「うん。」
「じゃあおかしいっす。」
「え?俺のどこがおかしいの?弱いってこと?」
「強すぎるって言ってるんすよ!アンタ耳大丈夫っすか?」
「うん!」
「そんな満面の笑みで言われても困るっす!もういいっす、アンタには常識を教え込むっす!」
ラティエルは真面目に見えて結構なアホです。
「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。