7.戦友同士の激突
「そっか。じゃあ、仕方がないよね。」
アスタルテがそう言って微笑む。その笑顔は無邪気であり、どこか恐怖を感じるものだった。
「っ!」
冷や汗をかくライム。
「『太陽神の加護』」
突如出現した小規模の太陽が、二人を後ろから照らす。
「『真の聖剣アークレイン』解放。」
そうエルレインが言った瞬間、手に持っている剣が光り輝く。
「『蒼帝剣ラピス』」
ライムがシグルドから蒼色の剣に変える。
蒼帝剣ラピスは、高密度の水を操る。剣に高圧水流を纏わせ、敵を断つ。
「あーあ、ラピスかあ。私の太陽じゃ相性が悪いね。」
「なら俺が相手するよ。アスタルテは後ろでサポートをしてくれ。」
「りょーかい!」
「ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
ライムが汗をかきながら質問する。
「ああ、いいよ。」
「君たちはなぜ僕と別れたときと同じ姿のままなんだい?」
「それは答えられない。すまないけど、俺たちの雇用主がいるんだ。そいつには逆らえない。」
「なら、力尽くでも聞き出すまで!『纏え!』」
水流がラピスを纏う。
高いところから水に突っ込むと、体勢によっては体に大きな衝撃が来るのと同様に水は密度によって衝撃を与える。
「『蒼ノ烈斬』」
「『聖剣技 天冥斬』」
高密度の水流斬撃と、聖属性と闇属性の斬撃がぶつかり合う。
ドゴオオオン!
そして、爆音が鳴り響く。
「まあ、そりゃそうだよねえ」
そう言って吹き飛ばされたのはライムだ。
「『闇帝剣アビス』」
黒色を基調とし、闇を操る剣。それがアビスだ。全てを飲み込む深淵の剣。
「『深淵ノ反撃』」
深淵ノ反撃は今まで蓄積したダメージを倍にして返すというもの。ライムの今まで受けてきたダメージは計り知れない。
「タダじゃ終わらせないよ?」
ライムは不敵に笑い、一撃を放つ。
「『天冥斬波』それはこっちのセリフだ。」
「炎もセットだよ。『天照ノ息吹』」
超高温の炎と、闇と光の属性斬撃が、アビスの一撃とぶつかりあう。
「『弾けろ』」
ライムが詠唱した瞬間、闇が弾ける。
パリン!
ガラスが割れるような音がした後、周囲が煙幕に包まれる。
「今日のところはお暇させていただくよ。また戦おう。今の僕じゃ無理だしね。」
「ああ。」
優しそうな笑みを浮かべながらエルレインが答える。
「やっぱり君たちは変わっていないんだね。」
そして、霧が晴れた時には、ライムの姿が消えていた。
「良かったの?エルレイン。」
「何がだい?」
「別に雇い主のこと喋っても良かったんじゃないの?」
「まあね。でも今じゃないよ。ライムならシグルドを復活させれるだろうし。それまで待つよ。」
「そうだね。それじゃあ帰ろっか?」
「いや、ラティエルに会って帰ろう。どうやら戦っているようだしね。」
こうして、スタンピードは思わぬ形で終息を告げた。
そして束の間の平和を手にする。だが、これは序章でしかないのである。