5.VSボス(無自覚)ラティエル視点に戻ります。
ラティエル戦闘回です。
スタンピードに挑むギルドメンバー。その中でも、特に活躍しているのは、我らが主人公ラティエルだ。
空気を操り、相手を圧死させる。それがラティエルの殲滅式戦闘だ。話は1ヶ月前に遡る。
「なあ、ミスト。」
「ん?なんっすか?」
「俺、スタンピードに向いてると思うか?」
「まあ正直に言うと向いてないっすね。」
「だよな。殲滅ができないんだよ、この魔術。」
「なんか、御伽噺に出てきそうな兵器とか無理なんすか?」
「兵器はないだろ。」
「確かに。珍しくラティエルさんが常識的っす。」
「おい、失礼だろ。」
「まあ、アドバイスするってなると、相手の周りの空気を固めて圧死させればいいんすよ。空気をイメージ通りに操れるんすよね?」
「ああ。」
「ならできるっす。頑張ってくださいっすよ!」
「ありがとう!」
嬉しそうな表情でラティエルが言う。
「ま、いつでも言うといいっすよ。」
「ああ、また聞くよ。」
そして今になる。
「おい、ラティエル。お前これすげえな!どうやってやってんだ?」
ぜノムが不思議そうな表情でそう言う。
「これは空気を固めて圧死させてるんだ。」
「へえ!お前のスキル強えな!よし、このまま安定させようぜ!」
「そういえばゼノムは何が得意なんだ?」
「ん?俺か?これさ。『永遠の魔法』」
そう言った瞬間、周りを囲んでいたモンスターたちが一斉に止まる。否、停まる。
「俺の魔法は停滞を与える。相手に永遠を彷徨わせる対人戦特化の魔法さ。」
「すげえ。でもそんな乱用しても魔力は欠乏しないのか?」
「確かに魔力は減るけど、この魔法、多数に使うと燃費がいいんだ。多数に使う時は拘束用だな。」
「なるほどな。じゃあ、この間に数を減らすか。」
「おう。」
そう言って、またラティエルが圧死させる作業に回る。
「それじゃあ、俺はあっちに行くよ。」
「わかった。頼んだぜ!」
そういいラティエルはゼノムと反対方向に走っていく。
その先にいたのは、ミノタウロス。と思いきや肌の色が赤黒い。これはこの世界では変異種という。通常の種よりも、強靭で、凶悪性を持ち、人間を襲いやすい。
ラティエルはそれに気付かず、
「おっ、なんか強そうな魔物だな!よし、倒すぞ!」
と、能天気に言う。
通常ミノタウロスの変異種は上位種とも呼ばれ、ものによっては危険度は自然災害級にも及ぶ。今ラティエルと対峙しているミノタウロスは、巨大かつ、眼の色が赤い。このレベルだと、極災害級ぐらいになる。つまり、自然災害級と災害級の間である。ちなみに撃退適正は、A級冒険者以上。討伐適正は、特A級冒険者以上になる。
つまり、この魔物を倒すには、ゼノム以上の強さが必要となる。
「さあ、倒すぞ。『空気』」
そう言い作り出すのは、かつて戦場を駆け巡った龍殺しの英雄の愛用していた竜をも滅ぼす剣。その名も、『龍滅剣ドラグレイ』。
「こいよ。」
ブモオオオオオ!
その挑発を感じ取ったのか、ミノタウロスの変異種が雄叫びを上げる。
「荒ぶれ!ドラグレイ!」
ラティエルがそう言葉を放った瞬間、ドラグレイが、分裂しミノタウロスへと矛先を向ける。
『龍滅剣ドラグレイ』。それは、かつて神話の時代に、数多の龍を滅ぼした竜殺しの英雄が愛用していた剣である。その能力は魔物に対しての火力倍増と、分裂などの変型。分裂し、敵を殲滅する事もあれば、逆に大きくなり、相手を一刀両断にしたりと、その使い方は様々だ。
そして、分裂したドラグレイがミノタウロスを襲う。
そして、直撃した瞬間、爆音が鳴り響く。