9.紋章の真価
一章最後です。
「さあ、クライマックスだー!」
突如大声を上げ始めたリヴィウス。
「え?実況?」
今この場唯一のツッコミ役であるモブリン。
「さあ、突如繰り広げられた、S級冒険者同士の対決!今状況は拮抗しております!」
「え?ノリノリすぎないか?」
「さあ、まずは振り返っていきましょう!一番最初!ミスト選手がすごい威力の、風魔術を撃ったと思ったら、その瞬間、フローリア選手が高密度の、水魔術を撃った!そして、空中で2人の魔術がぶつかり合い、相殺しました!」
「え?え?ごめん、ついていけない。」
「さあここまでが序盤戦です!ここから、中盤戦の振り返りをしていきます!中盤戦、お互いが、魔術師の切り札である魔法を発動!先にミスト選手が魔法を放ったが、フローリア選手の魔法によって無効化!されたと思いましたが、なんと!ミスト選手の魔法は先手必勝!フローリア選手の魔法を打ち破りました!しかし、さすがはS級冒険者だ!魔法を打ち破られても、持ち前の紋章で、打開していきます!さあ、両者一歩も譲りません!いや、譲れません!さあ、これから終盤戦に突入!勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか⁉︎」
「いや、なんか熱烈すぎないか?」
「うるさいですよ!この戦い見逃せるわけないでしょうが!」
「あ、そういえばこの受付嬢、戦えないのに戦闘マニアだった。」
「さあ、両者が動き始めます!この戦いを静かにみたいので、一度中継を終了します!では!」
「中継?誰に言ってんの?」
そして、勝負は動き出す。
「『天風』の真価を見せてあげるっすよ!『天装』」
その瞬間、ミストの体を金色のオーラが包み込む。
『天装』。それは、天系統の称号を神から下賜された者が使える技のことで、属性によってその特性は違う。『天装』をすると、行動の一つ一つが必殺の魔術となる。
「さあ、仕切り直しっすよ。『吹け』」
天使は、存在そのものが魔術化されているため、言葉の一つ一つが魔術となる。
風が吹き荒れ、フローリアを襲う。
「これは怖いね。『蒼魔』。」
魔術系の称号を下賜された者は、その称号の名を冠した魔術を撃つことができる。それは、称号によって撃てるかは変わるが、大抵の称号は撃つことができる。それは、ただの魔術ではない。神が授けた魔術である。
「高密度の水流による、波状攻撃。それが『蒼魔』の真骨頂だよ。」
フローリアがそう言った瞬間、蒼色の水流が次々とミストに襲いかかる。
「まだまだっすよ!『刻め』」
風の斬撃が放たれる。
水が切り裂かれ、風が弾かれる。
お互いの魔術がぶつかり合い、霧散する。相殺の連続である。
「多用は出来ないっす!もう終わらせるっすよ!穿て!『風之神使イ(ラーファルエル)』!」
世界に歴史として伝わる、風を操る天使、ラーファルエルを模した、風の像ができる。魔力密度が高いため、具現化しているのだ。
「こちらもだ!『蒼魔之流銃』!」
蒼色の銃がフローリアの手元に具現化される。
「『発射』!」
「『刻め!』」
お互いの最強の一撃がぶつかり合い最後に立っていたのは、ミストだ。
「やったっす!危なかったっす。」
「いい戦いをありがとうございました。それでは治しますね。『回帰』。はい、これで治りましたね!」
リヴィウスが傷に手を当て、詠唱した瞬間、みるみる傷が治っていく。いや、なくなっていくという表現が正しいのだろうか。
「いや、しれっとすごいことしないで。」
やはりこの場にはツッコミ役がモブリンしかいない。
「フローリアさんも、治しますね。」
「ありがとう。」
手当てをされながら、フローリアが言う。
「さすがは『時の聖女』リヴィウスだね。回復力が桁違いだよ。」
「え?時の聖女?受付嬢が?」
「ああ、そうだよ、モブリン君。知らなかったのかい?」
「知らないに決まってるだろ!」
「あら、フローリアさん、国家機密ですよ?」
「いや、国家機密を軽々しく喋らないで!俺も命が惜しい!」
「それでは改めまして、このギルドの受付嬢兼、サブギルドマスターのリヴィウスです。ラティエルさん、よろしくお願いしますね!」
「ああ、よろしく!」
続きは2章で!
一章を最後まで読んでいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!