37.女王との対話
「入って良い。」
部屋の中から凛とした声が響き、ラティエルたちは部屋の中へと入った。
「急に呼び立ててすまないな。先ほど、ガレンが急な訪問をしてきたお返しだと思ってくれ。」
申し訳なさそうにリンダは話した。
「大丈夫だ、女王サマ。そんで、用件は?」
「宰相、お前は下がっておけ。」
「はっ。」
宰相は部屋を出て行った。
「人払いも済ませたところで本題だ。ーーガレン、お前たちの目的はなんだ。」
「ーー目的?権力を持ちたいだけさ。」
少し冷や汗を掻きながらガレンはリンダの質問に答えた。
(バレ…てはねえな。おそらく向こうもまだ確信は持っていない。)
「良い、隠す必要はない。というか、私はお前たちの味方をしたいと考えている。ーーが、事と次第によっては、今すぐお前たちの首を刎ねなければいけなくなるかもな。」
そう、不敵な笑みを浮かべ、リンダは告げた。
「ーーなら、単刀直入に言おう。」
「俺はこの国を変えたい!階級制度も、極端な風の加護を持たない者への差別も…無くしたい。」
「なら、私も単刀直入に言おう。ーー不可能だ。」
ガレンの言葉をリンダは淡白に切り返した。
「……なぜだ?」
「階級制度による恩恵を受けている者は数知れず。お前もそのうちの1人だぞ?ガレン。」
「それでもだ。風は止まってる。あんたもわかってんだろ、女王サマ。」
「風はまた吹かせれば良い。お前という、風の愛し子がいれば、風は吹く。」
「ーーそうやって、人任せか?」
「何?」
聞き捨てならないというふうな表情を浮かべるリンダ。
「いつの時代もこの国はそうだ。
ーー1級の英雄に任せよう。上位階級の人間に任せよう。そうしてきた結果が現在だ。」
「力を持つ者は、力を持たない者を守る義務がある。ノブレスオブリージュ。お前にも、上位階級の人間にも、弱者を守る義務がある。」
「ーーあんた、変わったな。」
「何?」
「俺があんたと初めて会った5年前の時とは大違いだ。
ーーあんたはあん時、俺に人を守りたいって言ったよな?」
「……それがどうした。それは今も変わっていない。」
「そこだよ。あんたはこの国を自力で守りたかったんじゃねえのかよ。
俺に言ったよな?『私はこの国を守りたい。君はその手伝いをしてくれないか。』ってな。」
「……。」
「守りたかった。守ろうとした。けれど、守れなかった。あんたは俺と同じだよ。ーー俺も、フレミアを守ろうとした。けれど…守れなかった。」
リンダの瞳から、小さく、涙が溢れた。
「ガレン、私はお前とは違う。お前は、それをしようと努力をした。果てしない…努力を…。」
「けど、私は、諦めたんだ。お前はそのフレミアがいなくなっても、諦めずに努力をした。私はそれが眩しくて、お前を直視することができずに、公務に逃げた。」
「仕方ないと思う。」
ラティエルが小さいが、それでもその場にいた人間に聞こえるように呟いた。
「あんたも守ろうとした。それでも、女王っていう位置が、しがらみが邪魔をした。
その結果あんたは諦めただけで、今も必死に頑張ってるように、俺には見えた。」
「そう…か。なら、まだ報われるかもしれないな。」
リンダは涙を拭い、改めてガレンを見た。
「教えてくれ。いや、共に考えてくれるか?この国を変えるために必要なことを。」
「ーー女王サマ。」
「よろしくな。」
「ああ。」
こうして、ラティエル達はリンダの協力を得ることとなったのだ。




