8.魔法のぶつかり合い
中盤戦です。奇跡から、魔法に変えます。
「『泡沫の魔法』」
無から何かを生み出す魔法があるなら、何かを無に還す魔法もある。つまり、0を1にする。1を0にする。その違いである。決して魔法は万能ではない。何故か?魔法使い同士がぶつかり合った時、世界の特性によっては破壊されるからである。相殺し合う場合もあるが、時に残り続ける場合がある。そのため、魔法使い同士の対決には危険が伴う。世界が壊れる。
かつて、世界初めての魔法使いである、勇者レインはこう言った。『1を0に、0を1にするには、研鑽が必要なわけではない。その考えに脳がたどり着くまでが長いのである。才あるものは、頭にパッと浮かんだ考えで、魔法に目覚める。魔法とは、努力と才能の結晶なのである。』と。
勇者レインの仲間だった賢者セーラは、こうも言った。『魔法ほど、脳内に精通しているものはない。その人の脳の中がそのまま魔法になることもある。魔法の中では、術者が絶対なのだ。』と。
そして、模擬戦の会場内が、泡で敷き詰められる。
「これが、噂に聞く『泡沫の魔法』っすか。」
「ああ。この魔法を前に後出しは良くなかったね。」
「ふふっ、そっちこそ、これでウチが終わるとでも思ってるんすか?この魔法は、ウチが『絶対』すよ。」
そう言った瞬間、木々が、模擬戦会場から生え、泡をどんどん消していく。
「なっ。」
「ウチの『森林の魔法』はただ木を生やすだけの能力っす。でもね、この魔法は先手必勝なんっすよ!」
ミストが言った通り、『森林の魔法』は、先手必勝の魔法である。速度を重点的に置いた風の魔術と同じように、先に発動することによって、絶大な効果を発揮する。
対して、フローリアの『泡沫の魔法』は、後手に回ることによって、相手の魔術を消すことができる。魔法も同じである。
後手に回ることで強いフローリアと、先手に回ることで強いミスト。これは単純に魔法の相性の差と言える。
「魔法はウチの勝利っす!終わりっすよ、フローさん!」
「ははっ、ならこれでどうだい?」
フローリアの体が光り、泡が溢れ出す。
「正真正銘、泡沫の紋章の本領発揮だよ。」
泡沫の紋章は、消すことに特化した、攻撃性の紋章である。フローリアはそれを進化させた。自分の存在を泡に慣れさせる。そうすることによって、泡に触れたものを無に還す唯一無二の攻撃手段となった。
「木々が消えてくっす。」
「形勢逆転だね。」
「なら、ちょっとずるいかもしれないっすけど、使うっすよ!うちが『天風』の称号を貰ったことによる強化を見せてやるっすよ!」
「なら僕も、『蒼魔』の本領発揮と行こうじゃないか!」
こうして、最強格の激突は終盤戦に突入することになる。
蒼と翠。二つの色が。
「いやー、ミストの方が好きだな」って方は⭐︎5を。「いやー、フローリアの方が好きだな」って方は、ブクマを。よろしくお願いいたします!