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6話

 今日の授業も終わり、澪は阿部との約束があるというのに机に突っ伏していた。

 帰りの夕礼も終わり、部活などに向かう生徒もチラホラいる中、澪と一花は席で駄弁っている。

 それは蓮華が校門に来るのを待つためでもある。

 

「阿部んち行くのめんどいー」


「今更でしょー。結局大馬鹿授業に復帰しなかったね」


「え、なになに?なんだかんだ心配してるのね?」


「まさか。でも澪ちゃんのことを卑怯者呼ばわりする奴らが出てるじゃない?本人がしっかり条件の受け入れてればそれも変わると思って」


 大場の制御失敗は紛れもなく澪が原因だった。

 しかしそれをしっかりと知る人間は現状一花のみ。

 そのため、澪は学年主席なのに卑怯だと陰口を今日だけで何度も言われたのだ。


「どうでもいいわよ。一花といれるなら周りの評価なんてそれでいいもの」


「私が良くないのー!」


 ムキーっと澪の為に怒ってくれるのはもう一花と蓮華だけ。

 家族は元から気にかけず、親しい間柄どころか知り合いとしても認識されてるかどうかわからない澪にとって一花と蓮華だけは何者にも代えがたいものだった。

 

「すごいね流石は学年主席。余裕かい?」


「誰!?」


 澪は振り向くがまるで気配がしなかった、そこに現れたかの様に。

 一花の後ろに現れたのは男のような髪型や服装をしていたがスカートを履いているため女子だとわかる。


「この人、澪ちゃんがいなければ学年主席になっていた・・・」


「次席だって言いたいのかい?」


「うっ」


 その視線にたじろぐ一花を背にかばい、女子の前に立つ澪。

 澪の背で視線が外れる事で、深く息を吐いた一花。

 一花は仮にも異形から街を守る組織の当主であり、それを視線で息を吐かせないレベルの威圧を放っていた彼女はただ者ではないことがわかる。

 しかし澪にそんなことは関係ない。

 一花を傷つけようとするなら、それが危険人物でも許しはしないのだ。


「すごい。君、レベル1って聞いてたのに僕の視線に怯みもしないんだ!レベル6の彼女は怯んでしまったのに」


「視線?さっきから一花を睨みつけて何様のつもり?」


「睨むとは失礼だなぁ」


「何が失礼よ!」


「あ、そうだ!確かに失礼なところは僕にもあったよ!」


 次の瞬間、澪の目の前から女子が消える。

 そして窓の淵に立ちながら両手を広げた。


「自己紹介がまだだったね。初めまして。僕の名前は八神清美。学園次席にして序列は9位」


「序列・・・9位!?」


 澪達は四月に入学したばかりで今はまだ5月。

 序列は学年を問わず順位付けされているため、上級生も入る。

 そんな中で序列一桁ナンバー。

 それは戦闘力が高いことを証明していた。

 

「八神さんはレベル7の瞬間移動(テレポート)の能力者。保険医の畑つぐみの姪御さんなんだけど、彼女素行が悪いの」


「素行が悪いとは人聞きが悪い。僕は露払いしただけさ」


「嘘ね。成績が上位に入りそうな人間を潰していたのは調べがついてるよ。ただ私の近くにいた澪ちゃんだけは手が出せなかった。違う?」


「へぇ、流石は春山家だ。だけど一つ訂正させてほしいね。それを実行しそうな人間を僕が粛清していただけだ。君ならわかるだろ?僕達の様に努力をしている人間がいるのに不正を許すこの学校。おかしいとは思わないかい?」


 清美は澪に手を伸ばすが、澪はその手を祓った。


「仮に貴女の言ってることが全て事実だとしても、私は貴女の手を取る気はないわ」


「君は不正を許さないタイプだと思ったけど、君の人生経験上わかるだろ?世間は冷たい。だから僕のような人間が必要だ」


「わからないわね。それに私の両親はノアの方舟に所属してる。成績が良いというある意味結果だけを見て主席かどうかを判断してる。随分公平だと思うけど?」


 そもそも超能力学校でレベル1が主席になっていることに何の問題も起こっていない。

 それはこの学校の秩序が乱れていない証拠でもある。


「一理ある。だけどそれは君がノアの方舟に縁がある人間だから下手な手出しができなかった。君もノアの方舟関係者だと疑わーーー」


 清美が最後まで言い切る前に顔面に手袋がぶつけられた。

 手袋をぶつけた本人は怒りの形相で清美を見ている。


「それ以上口を開くなオトコオンナ」


「これは驚いた。でも僕は彼女と話しているんだ。そこを退いてもらおう」


「口を開くなって言ってんだ!拾え。澪ちゃんを侮辱した罪、償ってもらおうか」


 誰よりも澪と共に育った一花は、澪が幼い時そう言った侮辱を受け、超能力者用語側から悪意のある言葉をかけられていたのを知っていた。

 超能力者である澪にはノアの方舟に居場所がないのに、超能力者にまで嫌われたらどこにも居場所がないと弱音を一花に零すこともあった。

 

「先ほどは怯んだというのに、互いが互いの足りないところを支えあっているんだね。いいだろう。僕はこの決闘を受けよう」


 そういうと一花がぶつけた手袋を持ち上げた。

 そして懐にしまい込むと笑って背を向ける。

 

「日程は後日伝える。僕はこれから用事があるから。闘技場の予約はこちらでしておくよ。じゃーね」


 そういうとそのまま瞬間移動(テレポート)で消えてしまった。


「一花、なにやってんのよ・・・」


「だってー!澪ちゃんが馬鹿にされるのは我慢ができなかったんだもん」


「ありがとう。でもちょっとは考えてほしかったわ」


 澪は仮に一花の悪口をいくら言われようと、決闘を挑む気はなかった。

 決闘で無理難題を吹っ掛けられても、教師の匙加減でそれがまかり通る決闘は澪にとって良いことではない。

 実際に大場が一花と関わるなという命令は承認されてしまったのだから。

 更に瞬間移動(テレポート)のレベル7相手に能力を隠しながら闘えば勝てるかどうかもわからない。

 

「カッとなってつい・・・」


「まぁそのことは阿倍の家に行く道で話そ?蓮華も校門に来たし」


「わかったわ」


 澪達が窓から外を見ると校門で蓮華がこちらを見ているのがわかった。

 二人は荷物をまとめて蓮華のいる校門へと向かった。

 校門にクマの異形がいるというのに、誰も反応がないのは蓮華の能力だったりする。

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