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第2話
ボーッと考え事をしながらだったので、自分で思ったよりも長い時間、築山くんの方を向いていたのだろう。
私の視線に気づいたらしく、築山くんがこちらを振り返った。ニコッと笑みを浮かべて、私たちの方に軽く手を振る。挨拶程度の「軽く」であり、すぐに男の子グループの方に向き直っていた。
「築山くん、こっちに手を振ってくれたね!」
わずかに頬を紅潮させて、真由ちゃんが嬉しそうに呟く。
再びそちらを向けば、彼女は満面の笑顔で、小さくバタバタと手を振り続けていた。築山くんに対して挨拶を返したつもりだろうが、もう彼はこちらを見ていないのだから、いつまでも振っていても無駄なのに。
「……まあ、そこが真由ちゃんの可愛いところだよね」
「えっ、何か言った?」
いくら私が小声だったとはいえ、真由ちゃんのすぐ隣なのだ。それでも耳に入らないのだから、それほど意識が築山くんの方に集中していた証だろう。
「ううん、何でもない。さあ、帰ろうね、真由ちゃん」