第11話 自宅 その2
「昨日、ダンチューバーの女性を助けたとか言ってませんでしたか?」
「昨日? ああ・・・」
たしかに。
昨日はちょっとしたイレギュラーがあって。
「でも、それとこれとはぜんぜん関係ないと思うけど」
「徘徊種を倒されたとか、言ってましたよね?」
「うん。記憶域シヴァドラゴンだね」
「ひょっとすると、その女性の配信にお兄さまの姿が映っていたのかもしれません。それに気づいたリスナーが今回、お兄さまの配信を見に来られたとか」
「なるほど。たしかにそういう可能性はあるかも」
けど。
たまたま映り込んだくらいで、僕の配信をわざわざ見に来たりするもんなのかな?
「配信のスケジュールは、探索者クランの公式ホームページに毎日アップされてますから。そこでお兄さまのチャンネルを確認して、見に来られたのかもしれませんね。登録者数もグンと伸びてますよ」
「へぇ。そうなんだ」
「なんか嬉しそうじゃないですね? とてもすごいことだと思います」
「紫月もわかってると思うけど、僕は配信者として有名になりたいわけじゃないからさ」
「たしかそうなんですけど・・・」
紫月は少し納得できないって顔してる。
きっと僕がもっと喜ぶって思ってたんだろうな。
でも、今言った言葉は本心だった。
◇◇◇
「ふぅ、今日も美味しかった~。ごちそうさまでした」
手を合わせて立ち上がると、食器を台所へと運ぶ。
晩ごはんは紫月が作ってくれるから、後片付けは自分の仕事だ。
じゃーー。
2人分の食器を洗いながらふと思い出す。
「そうだ紫月。今日の配信はどうだった? なんかピンと来る風景はあったかな?」
「いえ。残念ですけど・・・。今回もこれといってなにか引っかかるものはありませんでした」
「そっか。また明日だね」
「毎日すみません」
「ううん。気にすることないよ。僕がやりたいんだから」
食器を拭きながら紫月に向き直る。
笑顔を見せて。
「今日もお片付けありがとうございました。お風呂沸かしてますので、ゆっくり入ってきてください」
「うん。ありがとう」