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同じく10才で恋心を自覚しましたが、何か?

「10才の子供が二人して絶対服従の礼でもって亡命を願うなんて、おじさん涙出るかと思ったよ」


 しばらくして、マグカップに入れられたホットミルクを持って戻ってきた皇王は、開口一番そう言った。


 僕たちは固唾を飲んで、次の言葉を待った。

 受け入れてもらえるのか?

 追い出されるのか?


「まず、姫のご両親には確認が取れたよ。それが姫の意思ならば、亡命者として受け入れて欲しいと」


 やっぱりバレていたのか。

 でも、大魔王と魔王は許可した。

 不思議だった。


「だけど、王子のご両親からはまだ返信がきていないから、今日は神の家ではなく普通の家に泊まってもらうよ」


 僕は頷いた。

 ミルも僕が頷くのを見て、頷いた。


 皇王は、僕たちがホットミルクを飲み終えるまで僕たちの冒険譚を聞きたがった。


 主に僕がどのような手段とルートを辿ってここにたどり着いたかを説明し、ミルは時折それに突っ込みを入れたり、茶化したりした。


 こんなミルは久しぶりで、本当に来てよかったと思った。


 それに、ミルは皇王の前では何も取り繕っていなかった。

 まだ出会ったばかりで皇王からミルに対する期待が形成されていなかったのもあるかもしれないが、普通にしているミルが何よりも貴重だった。


 ホットミルクを飲み終えると、皇王は再び僕たちをひょいっと抱え上げて、小さな家に転移した。

 僕たちは10才で、抱っこしてもらう年齢でもなくなっていたから、ビックリした。



「アン?」


 ミルはそこで待っていた女性を知っているようだった。


「普通の神聖国へようこそ! ミリー、元気だった? ジョンも大きくなったわね!」


 その女性は、僕のことを知っているようだった。僕が思い出そうとしているとミルが「先代聖女シエルよ」と耳元で囁いた。


 先代聖女はダジマット宮殿にきたことがあるってことか?

 ミルはそれを覚えている?


 僕が混乱していると、ミルは少し悲しそうな顔をした。

 僕は、過去に何かよくないことがあったのだと警戒した。


 ミルは僕の警戒顔を読み取って、「アンはいい人よ」と慌てて否定した。



「まぁ! 貴方たち、相変わらず双子みたいね? 目で会話してる~」


 先代聖女シエル、改めアンは、僕たちのコミュニケーションを知っているようだし、ほっこりしていたので、きっとダジマット宮殿に客人として呼ばれたことがあるのだろうと、とりあえず警戒を緩めることにした。


 それから、アンとアンのパートナーのエドワードが準備してくれた夕食を一緒に食べた。二人とも落ち着いた雰囲気の信頼できそうな大人だった。



 そして、その夜、初めてミルと同じベッドで一緒に眠った。

 僕たちは双子のように育ったけれど、同じベッドで眠るのは初めてだった。

 お昼寝すら一緒にしたことがない。


 ミルは、物凄く寝相が悪かった。


 僕たちが一緒に寝かしつけることがなかった理由も分かった。

 ミルは、寝相が悪い上に、たまに魔力が弾ける。


 むしろ、魔力が弾けるのが寝相が悪い原因になっているんだろうと思う。

 大きな爆発ではないけれど、地味に痛い。


 一緒に寝かしつけられた孤児たちは無事だっただろうか?


 今、思えば、10才というギリギリの年齢でミルとの共寝が許されたのは、ミルの寝相と魔力の小爆発を僕に教えるダジマット王家の意向だったのだろう。


 ミルを外に連れ出すなら、知っておかねばならないことだった。


 もしかしたら僕が知らないだけでミルは別室で寝かされたのかもしれないな。


 ミルでこれだから、大魔王はヤバそうだ、そんなことを思った。


 ミルの小爆発で夜中に何度も起こされた僕は、爆発した箇所を撫でてミルの無事を確認した。そうしたらミルの魔力が落ち着いたので、抱きしめて寝てみたら、凄く安らかになった。


 そんなミルがメチャメチャかわいくて、凄くキスしたくなった。

 でも、やめといた。

 いや、頬っぺたにはしたけど、口にはしなかった。


 ミルが起きているときに、と思ったから。


 ああ。どうしよう。

 ミルがかわいい。

 離れたくない。


 初めてそんな風に思った。


 僕は割といつもミルがどこに行ったか心配していた。

 僕は割といつもミルが何をしているか心配していた。


 だからミルが帰ってくると駆け寄ったし、出来るだけミルの傍にいた。

 ミルは僕が構っていれば、おとなしく傍で遊んでいたから。


 ミルが心配だったから、一緒にいた。


 でも、この時は、ミルが心配だったからじゃなくて、ミルがかわいいから一緒にいたいと思った。

 離れたくないという感情は初めてだった。


 いつも一緒にいたのに離れて暮らすことになる寂しさもあったと思うけど、それだけじゃなくて、いつも一緒にいても出来るだけ一緒にいたい感じ?


 僕はそう感じ始めるのが遅すぎたんだ。


 7年間離れ離れで暮らすことが決まった後だった。


 バカだよね?

 

 僕が自立してミルを養うのは、生まれた時からミルと結婚することが決まっていた僕にとって当たり前すぎて深く考えていなかった。

 けど、その時、僕の中で何かが変わった。

 眠っているミルを抱きしめながら、将来不自由なくミルと一緒に暮らせるように、神の家にいる間に出来るだけ高位の神官を目指すことを決意した。


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